電子計算機使用詐欺容疑で元副支店長が逮捕された三井住友銀行大森支店=東京都大田区で2016年10月12日午後、北山夏帆撮影
三井住友銀行での巨額詐欺事件で、電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された同行大森支店(東京都大田区)の元副支店長、南橋浩容疑者(54)が、詐取する際に偽の伝票を作成していたことが、同行関係者への取材で分かった。だまし取った総額は約11億円とみられ、警視庁捜査2課は不正発覚を免れるための隠蔽(いんぺい)工作とみている。
同課などによると南橋容疑者は成城支店(世田谷区)の課長だった2007年、架空の建設会社名義で同支店に普通預金と外貨預金の2種類の口座を開設。口座を使ってドルを購入する際、外貨取引のオンラインシステムに水増しした金額を入力し、増額したドルで円を買い戻す不正を繰り返した。
同行関係者によるとこのシステムでドルを購入した場合、金額を記録した伝票が印刷される。南橋容疑者は一度はシステムに正規の金額を入力して偽の伝票を入手。その後、システムに水増しした金額を再入力してデータを上書きし、不正な取引をしていた。水増しした取引が記録された伝票は破棄していたという。
同行は社内の定期検査では伝票を確認しているが、記載された取引金額が正しかったため不正を見抜けなかったという。同行関係者は「南橋容疑者は支店の幹部で部下の業務をチェックする立場だったため、社内の検査態勢の抜け穴を知っていた」と指摘する。
南橋容疑者は昨年11月〜今年6月、外貨取引のオンラインシステムを不正に操作し、十数回にわたって約166万米ドル(約1億9000万円)を詐取したとして12日、警視庁に逮捕された。【宮崎隆、黒川晋史】