配偶者控除 「女性の活躍」どうなる
こんなことで働き方改革などできるのだろうか。
政府・与党は配偶者控除の見直しを断念する方針に転換した。2017年度税制改正の焦点となっていたが、年明けの衆院解散が取りざたされる中、増税となる専業主婦世帯の反発を招くことを恐れたためだ。
「夫が働き、妻は家庭を守る」という高度成長期の家族モデルを前提に専業主婦世帯を優遇するために導入されたのが配偶者控除だ。夫婦共働き世帯の方が多くなった時代にはそぐわないとして、何度も廃止が模索されたが、強い反対にあって存続してきた。
異論の多い政策は強い政権基盤がないとできない。現在の安倍政権は十分に安定している。選挙に配慮して今やらないというのなら、何のために選挙に勝つつもりなのか問いたくなる。「女性が輝く社会」「待機児童ゼロ」などは人気取りのための方便に過ぎなかったのだろうか。
「(家族のあり方の)価値観の話が入り、簡単ではない」(麻生太郎財務相)というが、「価値観」などと言い出したら女性の就労促進も、待機児童の解消も難しくなる。安倍政権の「1億総活躍社会」の理念を根底から覆すことにならないか。
配偶者控除を廃止した後の代替制度として「夫婦控除」を持ち出したことにも問題がある。税制は国民が納得できる合理的な根拠が必要だ。控除がなくなることへの反発を懐柔するため、付け焼き刃の代替案を出してもうまくいくはずがない。
政府は今後、配偶者控除の対象拡大を検討するという。たとえばパートの妻の年収上限を150万円くらいにまで上げて、より長い時間働く意欲を後押しするという。しかし、それでは税収が減るだけでなく、新たな150万円という「壁」をつくることになる。税の減収を防ぐために高収入層には控除を適用しない案もあるが、線引きをめぐって紛糾することは避けられないだろう。
いずれも専業主婦やパートタイムの人のためであり、フルタイムで働く女性の不公平は解消されない。
専業主婦世帯というだけで税制優遇される制度が時代に合わなくなったのは明らかだ。その原点に立ち戻って考えないといけない。配偶者控除は一律廃止か減額し、子育てや介護のために就労できない人、生活困窮世帯の子供の支援策などの財源に回すべきである。
参院選前、安倍政権は消費税の引き上げ延期を決めた。そのために現在、介護や医療は大幅な予算の切り詰めを迫られている。せめて時代遅れとなった制度を見直し、現に必要な政策へ財源を回さないと社会保障は立ち行かなくなる。