田舎や離島など、へき地と呼ばれる場所では医師や看護師、
薬剤師の人材不足が昔から問題になっています。
へき地で働くメリットって何なのでしょうか?
今回は沖縄の小さな島へ移住した、あぐに薬局の女性薬剤師に
「島でのプライベート事情」や「お金の話」など、いろいろ聞いてきました!
こんにちは、株式会社バーグハンバーグバーグの柿次郎と申します。
今年で34歳。運動不足、週5で外食。不規則な生活がたたって決して健康ではありません。そこでお世話になっているのが病院であり、そこでもらった処方箋に応じて薬を用意してくれるのが「薬局(=薬剤師)」の存在です。
みなさんは薬剤師の仕事ってどんなものを想像しますか?
僕のイメージは「白衣とメガネ」「時給が高くて羨ましい」「店舗の奥でゴソゴソとしてる」です。
日常的に接点のある職業ではあるものの、具体的な仕事内容やどういった経緯で薬剤師を志すのか全然知りません。にも関わらず、今回「離島薬剤師の現場を取材してきてほしい」と依頼が…!
まだ、薬剤師の「や」の字も分かっていないのに「離島薬剤師」という聞き慣れない言葉が…!
なんとなく漫画「Dr.コトー診療所」みたいに孤軍奮闘しながら、少しずつ島民に愛される姿を想像するのですが、実際はどうなのでしょうか。聞けば好きこのんで離島に移り住みたい人は少なく、その分「待遇がめっちゃ良い」なんて話も耳にしました。高収入、家賃無料、車も提供…そんなおいしい話が本当にあるの??
【募集】「離島の薬局」に興味がある、薬剤師を目指す学生(薬科大生)を募集しています! 詳細についてはDMにてお送りしますので、興味のある方は(@bhb_official)にご連絡ください!よろしくお願いします。
— 株式会社バーグハンバーグバーグ (@BHB_official) 2016年6月13日
取材にあたって「薬剤師に縁のないおじさんだけでは心細い…」という理由で、現役の薬学部学生を募って参加してもらうことにしました。これから薬剤師を目指す学生の忌憚のない意見が大事!
募集後、真っ先に応募してきてくれたのが千葉大学薬学部1年生の寺田さんです。
「寺田です。よろしくお願いします!」
「寺田さんはTwitterの募集ツイートをみて応募してくれたんですよね」
「はい。応募をみた瞬間、反射的に応募しました。普段あまり薬学部って注目される事が無いんですけど、ピンポイントで募集していたので、自分が呼ばれてる気がしたんです」
「行動力ありますね。ちなみに離島で薬剤師として働くってどんなイメージあります?」
「あまり想像つかないのですが、なんとなく設備がきちんと整ってなさそうとか、忙しそうとかそんなイメージですね。地元じゃなかったら島の人とのコミュニケーションに慣れるの大変そうな気がします。でもお金は稼げそう!」
「確かに待遇は良さそう。ギラギラな服とアクセサリー身につけて高級車とか乗り回してたらどうしよう」
というわけで、東京から飛行機とフェリーを乗継ぎ5時間超かけてやってきました。
ここは沖縄本島から西におよそ60kmのところにある粟国(あぐに)島です。
粟国島は美しい海に囲まれた人口700人の小さな島で、映画「ナヴィの恋」の舞台にもなったそう。
沖縄本島との位置関係はこんな感じ。
車で島を走っていると、道の端で飼育されているヤギをみかけました。排泄姿がかわいいですね。
粟国島の観光スポット「洞寺鍾乳洞公園」という地下鍾乳洞に行ってみました。
ここは、とある僧侶が「水面を歩けるかどうかの賭け」に負けてこの島に流され、死ぬまでこの鍾乳洞で読経をして過ごしたという伝説の場所だそうです。
なんなんだ、その賭けは。
ここからが本題!
昨年の2015年8月にオープンしたばかり…粟国島唯一の調剤薬局「あぐに薬局」。
ここで働いている薬剤師の岡野紘子(ひろこ)さんに気になる質問をぶつけようと思います!
「はじめまして、よろしくお願いします」
「東京からわざわざありがとうございます。よろしくお願いします!」
「私はいま薬学部の1年生で、離島で働くってどうなんだろうと知りたくて来ました。今回いろいろ質問させて頂きたいのですが項目はざっとこんな感じです」
「早速質問なのですが……、離島ってAmazonは届くんですか?」
「いきなり、そこ!? えーっと、もちろん届きますよ。生活用品含めて、手に入らないものはあまりないですね。Amazonだと注文してから3~4日くらいで届く事が多いかな」
「わー、そうなんですね。良かった…」
「そこが一番気になってたんだ。都会にいると『商品を注文した翌日に自宅に届く』というのが当たり前になるもんなぁ」
「楽天でもYahoo! ショッピングでも大体は注文できます。ただ、海の状態が悪くてフェリーが止まってしまうと、届くまでに1週間以上かかることはよくありますね」
「最初から分かっていれば、ぜんぜん大丈夫そうです!」
「この島についてお聞きしたいのですが、岡野さんが思う粟国島のいいところってどんなところですか?」
「人間の手が加わっていないような、自然のままの海は本当に綺麗ですね」
「たしかに島に着いても、とても静かで、自然の音しかしませんでした。すごく癒されました」
「島に来たばかりの頃は、自宅から薬局まで歩いて『空が青いなぁ、海が綺麗だなぁ、夕日が美しいなぁ』と毎日感動してました」
「でもしばらくしたら『今日は暑いから車で行こう』ってなっちゃって(笑)」
「同じ風景みてたらそうなっちゃいますよね」
「先日、たまたま用事があって夜10時頃に外に出たんですね。ふと空を見上げたら星がとっても綺麗だったんです。こんなところで生活できて、本当に幸せだなぁ……と心から感動しました」
「でも交通の便はあまり良くないですよね。台風とかが近づいてたらフェリーの運航がない時もあるらしいじゃないですか」
「…そうなんですよね。柿次郎さん達がくる3日前も1週間フェリーが運航してませんでした。でもそんな時に代替の交通手段が使える場合があります。『ヘリタクシー』です!」
「ヘリのタクシー!?むちゃくちゃ贅沢じゃないですか。石油王が乗るんですか?」
「石油王じゃなくても乗れます」
最大5名まで搭乗可能で、1フライトの料金は通常108,000円(税込)が、沖縄県の補助によりなんと80%オフの21,600円!
沖縄本島↔︎粟国島がフェリーで片道2時間かかるところ、ヘリだとたった30分で移動できるとか。
割り勘すれば安いし、グループで移動するならヘリがいいですね。
ヘリコプターから見た沖縄の海の景色が絶景!こんなにテンションが上がる移動手段は他にはない!
「ところで岡野さんは粟国島にきて、どのくらい経ちますか?友達とかできましたか?」
「薬局がオープンした直後に来たので、この島に来てからちょうど1年経ちました。友達は島人(しまんちゅ。島で生まれ育った人)以外にも、製糖工場(砂糖を作る工場)で働くために外から移住してきた方や、地域おこし協力隊という活動をしている人たちなど、島にいながら色んな方と友達になることができましたよ」
「この島に初めて来た時は、知っている人が誰もいなかったんですよね」
「私は岡山県出身で沖縄での生活もそれほど長くはないので、よそ者が受け入れられるのかな?という不安は正直ありました」
「実際は…?」
「来てみたらそんなことは全然ありませんでした!どこでも気軽に話しかけてくれますし、家に帰ったら玄関に果物や野菜とかが置いてあったりもして。この前は岡山の両親から送られてきた桃を近所の人におすそ分けしたら、桃がメロンになって返ってきました」
「島のおすそ分けコミュニケーションは超大事ですよね。とはいえ、コミュニティが狭い分、噂とかもすぐ広まりそう。仕事で離島の取材をすることがあるんですけど、若い子に話を聞くと、恋愛問題に悩んでいることが結構あるんですよね。みんな知り合いだから浮いた話があるとすぐ広まっちゃうので、好きな人がいても一歩踏み込めないとか」
「たしかに噂は良いことも悪いこともすぐ広まりますね。話にいっぱい尾ひれがつくことも…(笑)。人と人との距離がとても近いので、プライベートをしっかり確保したい人は、ちょっと大変かもしれないです」
「なるほど! ちなみに粟国島には娯楽施設みたいなのはありませんよね。休日は何をして過ごしてますか?」
「私は海が大好きなんです。夏の休日はスキューバダイビングとシュノーケリングをして過ごしていますね!」
「最近までは『ギンガメアジのトルネード』というのが凄い時期で、毎週これを見るために潜ってました。ダイバーには有名なスポットで、これ目的に来島する観光客の方も沢山いました」
「スキューバダイビング好きには最高の島なんですね」
「他にはどんな過ごし方がありますか?」
「島の人が魚捕りに連れて行ってくれたりするので、モリとか網とか追い込み漁させてもらったりしてます」
「自然と共に生きてますね。いいなぁ。沖縄の島の人ってずーっとお酒飲んでるイメージでしたけど」
「お酒飲んでいる人も多いですね(笑)。この島では魚も捕れるし、野菜もくれるし、食材は基本的に何も買わなくて大丈夫。ただ、こっちは豚や牛などの生肉が売っていないんですよね。ヤギ肉を食べる文化はあるんですが、私は独特の臭いが苦手で……」
「この島に来る前に沖縄本島でヤギ刺し食べました!味は……まぁ美味しかったら日本全国で食べられているよね、という感想でした」
沖縄本島の居酒屋で食べたヤギ刺し
「こちらだとヤギの脳みそも食べるんですけど、あれはお酒に溶いて飲むと片頭痛に効くと聞きました。あと昔の人は猫肉を食べて喘息を治したというのも聞いたことあります。なんで猫なのかな?と思って調べたけど何にも出てきませんでした」
「薬剤師としては一応調べますよね。でも根拠なさそう」
「それで治ったよっていう人もいましたよ。アヒルも喘息に効くとか聞きました。流石に今は食べてないでしょうし、どこまでが本当か分かりませんが、おじいちゃんおばあちゃんの話はとても興味深いですね」
「もし猫肉とかアヒル肉をすすめてくる薬剤師がいたらイヤだな…」
「ところで薬剤師になると、ドラッグストアとか薬局で働くことになるんですよね?」
「いえ、 『薬剤師=薬局』みたいなイメージありますけど、他にもいろいろありますよ」
「以前大学で、薬学部を卒業した人の就職先リストみたいなのを見せてもらったんですが、その中に『マトリ』がありました」
「マトリ??」
「麻薬取締官のことです。麻薬Gメンとも言いますね。その他の就職先でいうと、科学捜査官とかもありました。薬を扱う職業は全部なれると思います」
「すごい!『科捜研の女』にもなれるんですね」
「あとは化粧品の会社で開発とかも出来ますよね。化粧品って結局のところ化合物なので、肌に浸透させるにはどの薬品をどう組み合わせればいいのかを研究しますし」
「ほぉー!薬剤師の就職先って意外と幅広いんだな…」