米アップルの新型スマートフォン「iPhone(アイフォーン)7」は、総務省や公正取引委員会など規制当局が同社の販売手法に厳しい目を向ける中で、あえて日本市場に照準を合わせてきた。世界の主要国で唯一アイフォーンの販売が伸び続けているためで、アップルは日本だけで普及している電子マネー規格「フェリカ」に対応。日本でモバイル決済端末としての揺るぎない地位の確立を狙っている。
総務省と公取委はNTTドコモなど携帯電話大手3社にアイフォーン偏重の取引慣行の是正を求めている。それは、アップルと3社の“不平等契約”の見直しといえるものだ。公取委は8月に取引上の問題点是正のガイドラインを発表した。取引実態の改善が進まなければ、独占禁止法に基づく立件に踏み切る可能性も残る。優良市場へのさらなる食い込みを狙うアップルと当局、それにシェア維持のためにアップルの意のままにアイフォーンを売り続ける携帯3社の攻防は年末商戦を大きく左右することになりそうだ。
アップルが9月16日に発売したアイフォーン7は他社よりも遅れていた防水機能と暗い場所でも鮮明な写真が撮れる撮影機能を備えた。だが、最も話題になったのはフェリカへの対応だ。
フェリカはソニーが開発した通信方式を使う非接触型ICチップ技術で、国際標準規格の1つ。とはいえ、実際には日本でしか普及していない“ガラパゴス規格”というのが実態だ。
JR東日本の「スイカ」に採用されているほか、大型チェーン店などに約200万台の決済端末が設置されており、モバイル決済端末としては国内で最も普及している。もちろん、携帯各社の「おさいふケータイ」もフェリカ規格だ。
アップルがあえて日本仕様のアイフォーン7を投入した背景には、賭けに打って出ざるを得ない同社の焦りがうかがえる。
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