特集

インタビュー

真田昌幸を演じきった草刈正雄さん。
強烈な個性を振りまいた役柄を振り返ります!

 

信玄公への思い

歴史に詳しい方であれば、真田昌幸に対してはおそらく、戦国時代屈指の智将というような印象をお持ちだと思います。けれども、僕はそのようなイメージを持たずに役を演じさせていただきました。役者としては少し情けないかもしれませんが、ああしよう、こうしようとは深く考えず、脚本のままに楽しく暴れさせていただきました。

昌幸は最期を迎える前に「御屋形様」と口にします。初めの主君である武田信玄公のことをすごく敬愛し、ずっと引きずっていたのでしょうね。僕は緻密に計算をするのではなく、ざっくり演じるタイプなので当初は意識していなかったのですが、役を演じていて、昌幸の信玄公への思いに気付きました。上杉に付いたり、北条に付いたり、徳川に付いたりと、有力な戦国大名のもとを渡り歩き、まるで「義」がないかのような描かれ方もされていた昌幸ですが、それはあくまでも戦国時代という荒波を乗り越え、真田家を守り抜くための選択です。昌幸にも「義」はあります。脚本に素直に演じたことで、第1回「船出」から第38回「昌幸」まで信玄公への思いをつなげ、昌幸の「義」をうまく表現することができたのではないかと思っています。

唯一、こだわらせていただいたのは、第1回「船出」で昌幸が勝頼を「岩櫃(いわびつ)へおいでください」と説得するシーンです。これで昌幸の人物像が決まると確信していたので、カメラアングルに関しても「絶対に寄って(アップで撮影して)ください」と演出の木村さんにお願いしました。木村さんも十分に分かっていらっしゃったと思うのですが、ここが決めどころだと信じていたので、本当にしつこくお願いしてしまいました。演出に口を挟んだのはこれきり、最初で最後です。おかげで昌幸像が確定し、以降、ブレずに演じられたと思っています。

昌幸は最期を迎える前に「御屋形様」と口にします。初めの主君である武田信玄公のことをすごく敬愛し、ずっと引きずっていたのでしょうね。僕は緻密に計算をするのではなく、ざっくり演じるタイプなので当初は意識していなかったのですが、役を演じていて、昌幸の信玄公への思いに気付きました。上杉に付いたり、北条に付いたり、徳川に付いたりと、有力な戦国大名のもとを渡り歩き、まるで「義」がないかのような描かれ方もされていた昌幸ですが、それはあくまでも戦国時代という荒波を乗り越え、真田家を守り抜くための選択です。昌幸にも「義」はあります。脚本に素直に演じたことで、第1回「船出」から第38回「昌幸」まで信玄公への思いをつなげ、昌幸の「義」をうまく表現することができたのではないかと思っています。

父親を超えていく息子たち

第35回「犬伏(いぬぶし)」で描かれた「犬伏の別れ」のシーンは、三谷さんに完全に裏切られましたね(笑)。これまでのように、昌幸が息子たちを言いくるめる脚本が来るものだとばかり思っていたのですが、真逆の展開で、昌幸が息子たちに「こうしろ」と言われてしょんぼりすることになるとは、思ってもみませんでした。なるほど、こういう手もあるのかと。
スケジュール上、「犬伏の別れ」が堺(雅人)くんと(大泉)洋ちゃんと僕の3人が集まって撮影する最後のシーンになったのですが、撮影に入る前は気持ちが高揚しました。

普段であれば、洋ちゃんが結構、場を盛り上げてくれたりするのですが、この日はそういうことはなく、シーンとしていました。待ち時間も控え室には戻らず、スタジオ前に3人で集まっていましたね。
第2回「決断」で武田家が滅亡し、行く先を悩んだ末に昌幸が「わしは決めた!」と息子たちに言って決断を告げるシーンがありましたが、第35回「犬伏」では同じような状況の中で、信幸が「私は決めた!」と言って決意を述べます。

以前言ったセリフを今度は息子の口から語られることになり、じんときました。息子たちに受け継がれて、そして、親を超えていくことは、とても感慨深いものがあります。あのシーンには、寂しさもありますが、世代交代の面白さがあったかもしれません。
ただし、昌幸は死ぬまで諦めることなく、なんとかしようとするイケイケな親父です。とらわれず自分の道を貫き、周りを巻き込んでいく豪快さを失うことはありませんでした。戦国武将は自分だけで物事を受け止める人が多いような印象がありますが、昌幸は息子たちにしがみつきますし、泣いたり笑ったり、喜怒哀楽も激しい。そこが人間らしくて、昌幸の魅力のひとつなのだと思います。きっと思い切り、人生を生き抜いたのではないでしょうか。

以前言ったセリフを今度は息子の口から語られることになり、じんときました。息子たちに受け継がれて、そして、親を超えていくことは、とても感慨深いものがあります。あのシーンには、寂しさもありますが、世代交代の面白さがあったかもしれません。
ただし、昌幸は死ぬまで諦めることなく、なんとかしようとするイケイケな親父です。とらわれず自分の道を貫き、周りを巻き込んでいく豪快さを失うことはありませんでした。戦国武将は自分だけで物事を受け止める人が多いような印象がありますが、昌幸は息子たちにしがみつきますし、泣いたり笑ったり、喜怒哀楽も激しい。そこが人間らしくて、昌幸の魅力のひとつなのだと思います。きっと思い切り、人生を生き抜いたのではないでしょうか。

最終回まで思い切り楽しんで

『真田丸』の放送期間中にブログを始めたのですが、視聴者のみなさんからさまざまな意見をいただけて、とても励みになりました。「昌幸さんと草刈さん、どちらかよく分からなくなりました」という声は、特に嬉しかったですね。

昌幸を演じているとき、『真田太平記』(1985年)で昌幸役を演じられた丹波哲郎さんがどんどん僕の中に出てきてくださいました。ぼけーっとするところも、丹波さんの昌幸からですから(笑)。丹波さんも相当おちゃめな人でした。もしかしたらスタジオのどこかにいらっしゃって、時々僕の中に入り込んでいたのかもしれません。考えなくても丹波さんの昌幸になっていることが、ありましたから(笑)。ちゃんと演じ切れたのは、きっと丹波さんが助けてくださったからだと思います。

終わるのは寂しいのですが、演じるのもそろそろ限界でした(笑)。最初の頃はセリフの量がものすごく多く、セットの関係で2日間ほとんどしゃべりっぱなしというようなこともありましたが、いい思い出です。役者人生で初めて、というくらいのセリフ量でしたが、やればできるんだなと思いました(笑)。

昌幸はいなくなりますが、堺くんも洋ちゃんも、最終回まで思い切り楽しんでもらいたいですね。もちろんこんなことを言わなくても、二人とも分かっているとは思いますけれども(笑)。

インタビュー一覧へ戻る

特集一覧へ戻る