日銀の金融緩和策 「金利」重視に 暮らしへの影響は

日銀の金融緩和策 「金利」重視に 暮らしへの影響は
日銀は、21日まで開いた金融政策決定会合でこれまでの金融緩和策を総括的に検証し、政策の枠組みを修正しました。新たな枠組みの特徴は、金融政策の目標を「量」や「質」から「金利」に明確に移したことです。
日銀がこれまで進めてきた金融緩和策は、「量的緩和」と「質的緩和」、それに「金利」の大きく3つの柱で成り立っていました。

このうち「量的緩和」は、日銀が市場に供給しているお金の量を示す「マネタリーベース」を年間およそ80兆円増やすというものです。
「質的緩和」は、お金を市場に供給するために長期国債を保有残高が年間およそ80兆円ペースで増えるように買い入れるほか、「ETF」と呼ばれる上場投資信託や、不動産投資信託といった金融商品を買い入れているものです。

そして「金利」は、ことし2月に導入した「マイナス金利政策」です。
金融機関が日銀に預けている当座預金の一部について、金利をマイナスにする、つまり金融機関からいわば手数料をとる形にすることで、金融機関に企業や個人への貸し出しを促す政策です。

しかし異例の規模の金融緩和を続けても、2%の物価目標が達成できていないほか、マイナス金利政策の影響で金利全般が想定以上に低下し、金融機関の収益や個人の資産運用への悪影響が懸念される事態となりました。

さらに国債を現在のペースで買い続ける政策は、近いうちに限界があるという指摘もあり、日銀はこうした課題に対応するため、これまでの政策の枠組みを修正した形です。
新たな枠組みの特徴はまず、政策の目標を「金利」に明確に移したことです。今回の措置では、マイナス金利政策を維持するとともに、新たに長期金利の水準を目標として設定しました。

具体的には、償還期間が10年の国債の利回りが0%程度の水準で推移するよう国債の買い入れを行うとしています。一方、日銀が買い入れる国債の「量」については、現在の年間80兆円を目安にしつつも、増減する可能性があるとしています。
このように金融政策の目標を「量」や「質」から「金利」に移したことが今回の変更の大きな特徴で、日銀は従来よりも柔軟で、持続性のある金融緩和を続けることができるとしています。

暮らしへの影響は

今回の日銀の決定は、私たちの暮らしに身近な部分にも影響が広がる可能性があります。
たとえば生命保険会社は、マイナス金利政策による金利の大幅な低下で資金の運用が難しくなり、一部の保険商品の販売をとりやめたり、契約者に約束する利回りを引き下げたりする動きが広がっています。
今回の日銀の決定で長い期間の金利が高くなれば、資金の運用がしやすくなり、こうした動きがおさまることも予想されます。

また、企業が従業員に退職金や年金を支払うための積立金も、国債などで資金を運用していることから運用成績が上向くことが期待されます。
一方、金利の低下を受けて借り換えを中心に利用が増えている住宅ローンは、契約の内容によっては銀行などへの支払いが増える可能性もあります。