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インタビュー

“犬伏の別れ”や、改名を命じられた時の心境、
父や弟に対する思いなどを大泉洋さんに聞きました!

 

グッとくる“犬伏の別れ”

真田家にとって、すごく大きなエピソードである“犬伏の別れ”。放送を楽しみにしていた方が、たくさんいらっしゃったと思います。親子が敵味方に分かれて戦わなければならないというのは悲劇です。三谷さんが“犬伏の別れ”をどのように描かれるのか、僕も楽しみにしていました。
脚本を読んだ時は、「きた! 信幸、頑張っている!」とグッときましたね。それまでの信幸は、ずっと父上に振り回されっぱなしで、大事な局面では蚊帳の外に置かれていました。

お堂でのシーンは1日で撮影したのですが、やはりどこか寂しさがありました。少し前から「もうそんなに一緒に撮影するシーンはないんだよね」というような話はしていましたが、“犬伏の別れ”が信繁役の堺さん、昌幸役の草刈さんと3人で撮影する最後のシーンになるなんて…。3人で酒を酌み交わしながら和気あいあいと話すラストシーンは非常に良くて、演じていてとても楽しかったです。

けれども“犬伏の別れ”のシーンでは、父上に対して真っ向から意見をぶつけます。信幸の成長を感じましたし、「我らは決して敵味方に分かれるのではない」というセリフには、胸が熱くなりました。ばば様が亡くなる前に言われた「例え、離ればなれになっても、真田はひとつ」(第26回「瓜売(うりうり)」)という言葉が、また効いていましたね。その後に弟と二人になり、「ばば様の言葉を思い出すな」と語りかけるシーンは、演じていて本当に切なかったです。三谷さんらしい愛情あふれた家族の姿が描かれていて、さすがだなと思いました。

お堂でのシーンは1日で撮影したのですが、やはりどこか寂しさがありました。少し前から「もうそんなに一緒に撮影するシーンはないんだよね」というような話はしていましたが、“犬伏の別れ”が信繁役の堺さん、昌幸役の草刈さんと3人で撮影する最後のシーンになるなんて…。3人で酒を酌み交わしながら和気あいあいと話すラストシーンは非常に良くて、演じていてとても楽しかったです。

家康への助命嘆願、改名の屈辱

信幸が家康に父上と弟の助命を嘆願するシーンは当初から思い入れがありましたが、“犬伏の別れ”での信幸のセリフがすばらしくて。「源次郎、我らは決して敵味方に分かれるのではない。豊臣が勝った時は、お前は、あらゆる手を使って、俺を助けよ。そして、もし徳川が勝ったならば、俺はどんな手を使っても、お前と父上を助けてみせる」。このセリフで彼らを助けるんだという思いがさらに強くなり、家康に二人の命乞いをするシーンは、すごく気持ちが入りましたね。

家康に「父親と縁を切れ」と言われますが、それは「当たり前」だと予想をしていたでしょう。信幸には、どんな手を使ってでも父と弟が生き残ることができればそれでいい、という思いがありましたから。しかし、名前を変えさせられるとは思っていなかっただろうと、演じていて感じました。父上からいただき、大事にしていた『幸』の字を捨てろと命じられるのは、非常に屈辱的だったでしょう。さぞかし悔しかっただろうと思います。ただ、信幸には「真田を守る」という揺るがぬ決意がありました。家康への助命嘆願は、信幸にとって無念極まるものがあったような気がします。

家康に対しては、最初の頃は“非常に食えない人”という印象がありました。威圧的かと思えば、優しさを見せる。そこには下心が見え隠れし、信幸としては「どんな手を使ってくるかわからないぞ」という思いで対峙していましたね。ところが、家康の養女として、本多忠勝の娘・稲をもらうことになってから、その関係が微妙に変わっていきます。昔は敵という思いが強かったけれども、稲をもらったことで義理の父でもあるという思いも出てくる。家康の威光が高まるのを近くで感じ、徳川を敵に回したら生きてはいけないという意識も生じていたと思います。時を重ねるにつれ、信幸は家康に対して、憎むべき人ではあるけれどもこの人のおかげで生きている、という複雑な思いを抱いていたと思いますね。

家康に対しては、最初の頃は“非常に食えない人”という印象がありました。威圧的かと思えば、優しさを見せる。そこには下心が見え隠れし、信幸としては「どんな手を使ってくるかわからないぞ」という思いで対峙していましたね。ところが、家康の養女として、本多忠勝の娘・稲をもらうことになってから、その関係が微妙に変わっていきます。昔は敵という思いが強かったけれども、稲をもらったことで義理の父でもあるという思いも出てくる。家康の威光が高まるのを近くで感じ、徳川を敵に回したら生きてはいけないという意識も生じていたと思います。時を重ねるにつれ、信幸は家康に対して、憎むべき人ではあるけれどもこの人のおかげで生きている、という複雑な思いを抱いていたと思いますね。

草刈さんのお芝居で、腹立ち倍増

とにかく父上が卑怯なことばかりする人なので(笑)、良くも悪くも、信幸は父上を反面教師にしていたのではないでしょうか。あまり強引なことをしない人です。

例えば、秀吉の病状が悪化していた時、信繁は信幸にそのことを隠そうとしますが、信幸は信繁に対して「一番大事なのは“真田家”ということだけは間違えないでくれ」という思いを伝えるだけで、過度に問い詰めたりはしませんでした。

犬伏では、涙を流す信繁を見て、信幸も思わず涙を浮かべます。演じていない幼年期にも、同じようなことがあったのではないかと想像してしまいました。きっと父上とは、違った生き方をしてきた人なんでしょうね。
第27回「不信」で、信幸は信繁と一緒に官位を授与されますが、真相を知り、怒って部屋を出ていくという出来事がありました。ところがこの時、父上は「怒ってたなあ」と信繁に楽しげに話すだけで、信幸に対して優しい言葉をかけてくれません。

本来なら父上の言葉はその場にいないから耳にすることはないのですけど、脚本を読んで知っていますし、収録もチェックしているわけですから、聞いてしまうわけです。……腹が立ちましたね(笑)。信幸としては、もっと重く受け止めてほしいわけですよ。その場にはいなくても、信幸は父上に「あいつの気持ちもわかってやれ」とか、そういったことを信繁に言ってほしかったと思うんです。父上の心に響いてほしい。そう思って退出したんです。それを楽しそうに「怒ってたなあ」って! また草刈さんのお芝居が腹立つんですよ(笑)。信幸としてはかなり怒りましたね(笑)。

昨年は出演させていただいた連続テレビ小説『まれ』でダメ親父を演じたせいか、「しっかりしろ」とよく声をかけられました(笑)。ところが今は、「かわいそうなお兄ちゃん」とよく言われ、ずいぶん同情していただいています(笑)。この先もさまざまな要因で板挟み状態になるので、「今後もっとひどくなります」と言い続けてきましたが、『真田丸』の信幸はドラマ史上最も親しみやすい信幸、改め、信之さんなんじゃないでしょうか。そういう自負があります(笑)。「信濃の獅子」と言われた格好良さを期待されていた方には、「申し訳ない」という思いがありますけれど…。

昨年は出演させていただいた連続テレビ小説『まれ』でダメ親父を演じたせいか、「しっかりしろ」とよく声をかけられました(笑)。ところが今は、「かわいそうなお兄ちゃん」とよく言われ、ずいぶん同情していただいています(笑)。この先もさまざまな要因で板挟み状態になるので、「今後もっとひどくなります」と言い続けてきましたが、『真田丸』の信幸はドラマ史上最も親しみやすい信幸、改め、信之さんなんじゃないでしょうか。そういう自負があります(笑)。「信濃の獅子」と言われた格好良さを期待されていた方には、「申し訳ない」という思いがありますけれど…。

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