• サイエンスウィンドウのウェブコンテンツ
  • 宙(そら)と粒との出会いの物語
  • 科学と技術のおもしろさを伝える 子ども科学技術白書
  • 理科ねっとわーく 一般公開版
  • サイエンスアゴラ
  • 東日本大震災緊急座談会
  • 増刊号スペシャルコンテンツ 水を知る旅に出よう

2007年 12月号

この号の目次へ戻る

磁石の星に生きる

なぜ地球は電磁石になるのか?
コアの鉄の対流が発電機に

地球に棒磁石があるかのような磁場が存在することが知られるようになったのは、大航海時代のころだった。
だが、なぜ地球に磁場があるのだろうか。
その仕組みが、コンピューターを活用した研究で少しずつ明らかにされようとしている。

     ■重力     重い鉄は重力によって地球の中心部に集まり、コアを形成した。     対流 内核 外核 マントル 電流 磁力     ■熱     地球の内部には膨大な熱エネルギーが存在し、その温度は数千度にも達する。この熱が外核やマントルの対流を引き起こし、その結果、徐々に放熱されている。     ■電気を通す流体     外核を構成している主な物質が電気を通す鉄の流体であり、それが対流することによって、電流や磁力を発生させる可能性が生まれる。     地球の周りにできる磁場     ■自転     地球が24時間という早い速度で自転している影響は、流体である外核にも及び、その対流を変化させている。この自転の影響とは、「コリオリの力」と呼ばれるもので、北半球で台風の渦が反時計回りに回転しているのも、この力の影響だ。

提唱されるダイナモ説

地球上で方位磁石を見ると、常にN極は北を、S極は南を指している。これは、地球が1本の棒磁石のように磁場を生み出しているから起きる現象だ。

では、なぜ地球は磁石になっているのだろうか。かつて考えられていたのは、地球の深部に存在するコア(核)が永久磁石だからという説だった。上図に示すように、地球は内部に鉄を主成分とするコアが存在する。このコアが磁石だと考えられていたのだが、磁石は高温になると磁力を失う性質がある。コアの温度は数千度に達するため、当然、磁力は失われてしまう。

そこで、提唱されているのがダイナモ説だ。「ダイナモ」とは英語で「発電機」を意味する。磁場の中でコイルのような電気を通す物質を動かすと、そこに電流が生じる。これが発電機の原理だ。コアは、固体の内核と液体の外核で構成されている。より高温の内核近くで熱せられた流体は上昇し、その後、外核を覆うマントル付近で冷やされると降下に転じる。外核では常にこうした対流が起きている。地球内部に、何らかの原因で初めに小さな磁場が存在すれば、外核の鉄の対流によって、そこに電流が生じる。その電流が磁場をさらに強化する。これを繰り返すことによって、巨大な磁場が形成されたという考え方だ。つまり、地球は電磁石の仕組みで磁場を生み出し続けているというのがダイナモ説だ。

スーパーコンピューターによる研究

スーパーコンピューターによる研究

内核の熱で熱せられた外核の鉄は上昇し、マントル付近で冷やされ再び下降する。こうした外核の対流により電流が発生し、磁場が生み出される。この「ダイナモ説」を物理的に説明する磁気流体力学の方程式を、海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を用いて解くことにより、外核の対流構造を再現した。その渦状の対流は、南北に伸びる円柱のような構造を形成することが明らかになった。円柱は「セル」と呼ばれ、緑のセルでは自転と同じ方向にらせん回転しながら上昇し、黄色のセルで自転と逆方向にらせん回転しながら下降する。このような複雑な対流が一定方向の電流の流れを生み、地球にN極とS極を持った双極子磁場を発生させる。上図では、一定の渦対流の領域だけを示しており、緑のセルで上昇した鉄は黄色のセルに移り下降していく。

画像提供/(独)海洋研究開発機構地球シミュレータセンター


コンピューターで再現

しかし、深さ数千?にある外核で起きている現象を直接確かめることはできない。そのため、最近ではコンピューターを活用して、シミュレーション(モデル計算)により磁場発生の仕組みを探る取り組みが進んでいる。(独)海洋研究開発機構地球シミュレータセンター固体地球シミュレーション研究グループのグループリーダー・陰山聡さんも、その一人だ。

「温度差によって外核の鉄が対流しているなら、内核付近からマントルに向けて対流が起きているはずです。しかし、地球は自転しており、外核の対流もこの影響を受けます。こうした影響なども加味して計算した結果、SとNの2つの極がつくるきれいな磁場(双極子磁場)の発生を再現できました」

陰山さんは、自転の影響をはじめ、地球内部の物理現象を加えて、外核の対流をモデル化し、その動きをコンピューター上で再現した。すると、南北方向の円柱状の対流構造がいくつも形成されることが明らかになった。円柱の内部では、らせん状に回転する対流が発生。これによって数十億アンペアもの電流が発生し、磁場を生み出すというのである。

地球磁場逆転の歴史

地球磁場逆転の歴史

海洋プレートの地質サンプルを調べることにより、過去に何度も磁場の逆転が繰り返されてきたことが明らかになっている。逆転の周期は一定ではないが、最近2000万年間の平均周期は約20万年。最も新しい逆転は、約78万年前に起きている。 図表作成/陰山聡グループリーダー (独)海洋研究開発機構地球シミュレータセンター


謎が残る磁場の逆転

今日、ダイナモ説は多くの研究者に受け入れられている。だがその一方で、磁場について、もう1つ大きな謎がある。それは磁場の逆転だ。

海底に広がる海洋プレートに残された磁気を調べることにより、磁極のNとSの入れ替わりが、これまで地球の歴史のなかで何度も繰り返されてきたことが確認されている。陰山さんが行ったダイナモ説のモデル計算でも、自然に磁場の逆転が起きたという。どうやら、地球の内部でのちょっとした物理現象の変動によって渦構造に変化が生じ、磁場の逆転が起きているようだ。逆転の周期は一定しておらず、数万年で逆転することもあれば、数百万年変わらないこともある。

そもそも、なぜ地球に磁場があるのか。なぜ逆転が起こるのか。その確かなメカニズムは十分に解明されていない。今後、さらに地球内部の探査が進み、深部で何が起きているのかが解明されれば、地球磁場の発生や逆転の仕組みが明らかにされるかもしれない。

地磁気北極(青)と磁北極(緑)の変動

地磁気北極(青)と磁北極(緑)の変動

(1900?2005年、2010年は予測値)

地磁気を地球の中心に置いた1つの棒磁石で表したとき、その仮想の棒磁石の軸と地表が交わる点を地磁気極という。また、地磁気は、緯度が高くなるに従って垂直方向の角度を持つ。この角度が大きくなり、磁石の針が垂直に立つ地点を磁極という。いずれも地理的な極点とは一致していない。また、その位置は一定ではなく、特に磁極はこの100年間で大きく移動している。図表提供/京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター

この号の目次へ戻る

バックナンバー一覧へ