就学支援金不正受給 逮捕の元監査役 高卒者の経歴隠し申請か

就学支援金不正受給 逮捕の元監査役 高卒者の経歴隠し申請か
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三重県伊賀市にある「ウィッツ青山学園高校」をめぐる国の就学支援金の不正受給事件で逮捕された高校の運営会社の元監査役が、受給資格のない高校の既卒者について、過去の在学期間を支援金の申請書に記載していなかったことが関係者への取材でわかりました。東京地検特捜部は、元監査役が高卒者の経歴を隠して不正受給を繰り返していたと見て調べています。
「ウィッツ青山学園高校」の運営会社の元監査役馬場正彦容疑者(56)は、受給資格がなかったり、就学の実態がない生徒など13人の就学支援金を三重県に申請し、240万円余りをだまし取ったとして、14日、東京地検特捜部に逮捕されました。
就学支援金は高校の既卒者に受給資格がなく、中退者についても受給期間が短くなる場合があるため、申請書に過去の在学期間などを記入し、県に提出する必要があります。
関係者によりますと、馬場元監査役は受給資格のない高校の既卒者について、過去の在学期間を申請書に記載していなかったということです。
馬場元監査役は「高卒者でも支援金を受給できる」などと言って生徒を勧誘していたということで、特捜部は多額の支援金を得るため高卒者の経歴を隠して不正受給を繰り返していたと見て調べています。
馬場元監査役は逮捕前のNHKの取材に対し、「高卒者に受給資格がないことは知らなかった。不正をした認識はない」などと話していました。

就学支援金とは

就学支援金は高校の授業料を国が生徒に代わって学校に支給する制度で、民主党政権時代の高校授業料の実質無償化に代わって去年4月から導入されました。
対象となるのは世帯の年収がおよそ910万円未満の生徒で、年収に応じて生徒1人当たり最大で、年間およそ30万円が学校に支給されます。
すでに別の高校を卒業している人や在学期間が全日制で通算3年、通信制や定時制で通算4年を超える人は受給することができないと定められていて、不正に支給させた場合の罰則規定も設けられています。
支援金の申請には、高校などに在籍した期間などを記入する申請書や課税証明書を都道府県に提出する必要があります。
文部科学省によりますと、「ウィッツ青山学園高校」の広域通信制の課程では、生徒1人当たり最大で年間23万7600円が支給され、平成26年度の支給総額はおよそ1億5700万円に上ったということです。

元監査役「制度を熟知せず だますつもりなかった」

馬場元監査役は逮捕前のNHKの取材に対し、「高卒者に就学支援金の受給資格がないことは全く知らなかった。制度を熟知しないまま結果的に支援金を不正に支給させてしまったことは申し訳ないが、だますつもりはなく、犯罪であるとわかっていれば支援金の申請はしていなかった」と話していました。
また、就学実態がない生徒に支援金が支給されていたことについて「生徒を勧誘する際に『レポートはやれるところだけやればいいですよ』とは言ったが、『何もしなくていい』と言った覚えはない。高卒資格がないと仕事が見つかりにくいため、勉強の負担を軽くして卒業させてあげることはいいことだと思っていた」と説明していました。

生徒の男性「教科書などは届いていない」

ウィッツ青山学園高校の広域通信制の課程に通っている10代の男性は「『全く勉強をしなくても高卒資格が取れる』と紹介されて入学したので、教科書などの教材は一切届いていない。年に2回、伊賀市の本校に通う『スクーリング』にだけ参加するよう言われたが、写真撮影をして帰るだけでほとんど遊びのような状態だった。一切勉強せずに高卒資格が取れるなんて簡単だなと思った」と話していました。

一方、「ウィッツ青山学園高校」の広域通信制の課程に通っていた関東地方に住む会社経営の男性は、すでに別の高校を卒業して受給資格がなかったにもかかわらず、学校側が就学支援金を申請していたということです。
男性は「高校を1度卒業しているので入学する理由はなかったが、『大学に何回も入学できるように高校にも何度でも入学できる』と知人から誘われた。
就学支援金制度については、学校側から全く説明がなく、申請されていたことはあとで知った」と話していました。

ウィッツ青山学園高校めぐる問題

「ウィッツ青山学園高校」は、国の構造改革特区として三重県伊賀市が誘致した株式会社が運営する高校で、平成17年に設立されました。
平成26年度には、広域通信制の課程に1100人余りの生徒が在籍し、およそ1億5700万円の就学支援金が支給されました。
しかし、事件を受けて学校側が調査したところ、東京・千代田区にあった通信制のサポート校「四谷LETSキャンパス」に在籍していた生徒151人のうち、生徒102人については就学の実態がなかったということです。
また、テーマパークに生徒たちを連れて行き「土産物などのお釣りの計算をした」ことを理由に「数学」の授業の履修としたり、教員の数が足りなかったりするなど、不適切な学校運営の実態も明らかになり、ことし3月、学校側は広域通信制課程の新入生の募集を停止しました。
こうした実態を受けて伊賀市はことし5月、学校側に適切な指導が行えるよう改善を求める命令を出しましたが、国はその後も改善が見られないとして、伊賀市長に対して法律に基づく「措置要求」を行いました。
今月30日までに改善が見られない場合には、伊賀市の特区の認定が取り消されます。

文科省の対応は

この問題を受けて文部科学省は、全国102の広域通信制の高校の就学支援金の支給状況を調査しました。
その結果、石川県や兵庫県などにある8つの高校で、限度額を超えて支援金が支給されたり、受給資格がない生徒に支給されたりしていたケースが119件見つかりました。
また、12の高校では、生徒募集のパンフレットに「授業の中で運転免許取得を」などと記載してPRするなど、不適切な生徒募集をしていたということです。
文部科学省は再発防止策として、申請書類を見直し、高校を卒業した人などは支援金を申請できないことを明記したほか、今後、通信制高校での指導の在り方などを定めたガイドラインを作成し、各都道府県には高校の経理状況について定期的に実地検査するよう求めることにしています。