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サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

こち亀の両津も僕らも、結局は「40年経って大人になった」というだけの話である

こんにちは。

 

先日から「こち亀」について幾つか記事を書いていて

僕がこの漫画を面白くないなと思うようになったのは

主人公「両津勘吉」が落ち着いてしまって破天荒な

性格じゃなくなった、いってみりゃ「大人になっていた」ことに

なんとなく気づいていたからだろうと結論づけました。

 

両津は永遠の35歳。本来だったらコレ以上

大人になることはありません。だけども現在の行動や

言動には明らかに「老い」を感じさせるものがあります。

どうして物語の世界で年齢が固定化された両津が

「老いていく」のか。おそらくその理由は両津の漫画の世界が

僕らのいる現実世界と「モノ」を通じてリンクしているからでしょう。

 

漫画の世界っていうのは僕らのいる現実世界と異なり

時間という概念が曖昧のため、物語の登場人物たちは物語の都合により

歳をとったりとらなかったり様々です。ドラゴンボールの悟空のように

年齢を重ねていったり、ジョジョの奇妙な冒険のように

長い年月を経て主人公が代替わりをしていくという作品もあれば

漫画のサザエさんコボちゃんみたく物語の登場人物が原則的に

永遠に歳をとらないっていう作品もあります。こち亀という漫画は

全編通じた「物語」ではなく、その日その日の出来事を

つづっていく短編のため、原則的にはサザエさんに近い作品です。

 

この「歳をとらない」という特徴は、キャラが漫画内において

永遠に老いる事も尽きる事もない永遠の肉体・生命を持っている。と

いうことでもあるのです。だから両津は何があっても不死身でいられる。

高層ビルから落っこちてきても、トラックにぶつかっても、

ロケットランチャーの爆発に巻き込まれても「いてて・・・」だけで済み、

次の場面にはそれらで生じたケガもすっかり治って元気に走り回れる。

いってみれば両津は「不老不死」なのです。

 

だけど。

確かに両津は固定化された35歳であって、上述したように不老不死なんだけど

両津の周囲の時間は僕らの時間軸に近い速度で動いている。

30年前には勤務中にファミコンソフト「ファミスタ」や「チョロQ」「ゾイド

特撮「電脳警察サイバーコップ」のおもちゃ「サンダーアーム」で遊び、

その10年後はファミコンからプレステに変化。周囲にはパソコンや

携帯電話が並び、ソレに合わせて両津の趣味もアナログからデジタルに

移行していくことになります。さらに両津の知人がいるような商店街は

大手のショッピングモールなどに押されていてどこも経営難。冬の名物だった

両津のボーナス争奪戦で激しく争っていた元気なプラモ屋のおやじの居場所は

もう漫画にも現実にもありません。また、現在も35歳の両津が昭和30年代に

生まれているはずもないので「お化け煙突」や「勝鬨橋」など少年時代の

大事な思い出たちとも切り離されることになる。それは思い出として

両津の中にあるはずのものだけど、両津の年齢の整合性を考えると

捨てざるを得ない。

つまり連載が続けば続くほど、両津は肉体と記憶が

釣り合わなくなっていくという宿命を背負っているキャラであるといえます。

人間っていうのは周囲の環境に合わせて内面も変化して老いていくもの。

現実の人間であれば肉体もそれに合わせて老いていきますが

漫画の世界の住人である「両津」は肉体が35歳のまま

内面を変化させていき、そして老いていくことになるのです。

そう考えた時、ふと思ったのが両津の又従姉妹にあたる女性キャラの「纏」、

その妹「檸檬」という幼稚園児のキャラでした。僕はこの姉妹の出現こそが

「両津のキャラをワケ分からなくさせ、漫画をつまらなくした原因のひとつ」だと

思っていましたけど、この3人が出た時の物語をあらためて思い出すと

両津=普段だらしないけど、やる時はやる父、纏=しっかり者の母、

檸檬=だらしなさに呆れながらも父の優しさ、男らしさを尊敬している娘。

 

こういった構図が見えてきます。

 

これは作者である秋本治さんが意図していたかどうか

わかりませんが、破天荒さが抜けて老いを見せはじめた両津の内面と

老いることのない肉体のバランスを保つために用意した

「家族」だったんじゃないか?と、思うのです。

 

つまり、この「纏」「檸檬」の登場をターニングポイントに

「こちら葛飾区亀有公園前発出所」はメチャクチャなギャグ漫画ではなく

ほのぼのとした「人情コメディー」に移行したんではないか?

それは逆に言うと老い始めていた両津では昔みたいなギャグ物語を

いつまでも続けるという事が厳しくなっていたという事なのかもしれません。

あくまでも僕の仮説ですけど。

 

その仮説を踏まえて、まだ話をつづけます。

できたらもう少しだけお付き合いを。

 

 

 

 

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