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襲撃被害者が損賠提訴検討…使用者責任問う

 特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)が関与したとされる一連の一般人襲撃事件で、被害者の一部が同会トップの野村悟被告(69)=組織犯罪処罰法違反などで起訴=ら幹部を相手取り、暴力団対策法に基づく損害賠償請求訴訟の提起を検討していることが関係者への取材で分かった。福岡県弁護士会の民事介入暴力対策委員会(民暴委)が提訴の可能性を研究するプロジェクトチーム(PT)を設置し、被害者の一部と協議を続けている。実現すれば多額の賠償金を求められるため、最高幹部らの逮捕が相次ぐ工藤会に新たな打撃を与えそうだ。

 福岡県警が一連の襲撃事件で工藤会トップらを逮捕した「頂上作戦」から11日で2年を迎えるが、工藤会トップの使用者責任を問う動きが明らかになるのは初めて。2008年施行の改正暴力団対策法は、傘下の組員が「暴力団の威力を利用した資金獲得行為」で他人の生命や財産を侵害した場合、暴力団トップも賠償責任を負うと規定。末端組員による犯罪被害者が指定暴力団トップらを相手取った訴訟は全国で相次いでいるが、工藤会に関しては被害者が報復を恐れるなどして提訴されていなかった。

 関係者によると、民暴委に所属する一部の弁護士が頂上作戦の開始後にPTを設置。暴力団トップの使用者責任を問う全国の損賠訴訟の事例を研究し、襲撃事件の被害者による工藤会トップを相手取った提訴が可能かどうか検討を続けている。しかし、野村被告ら幹部の公判は開始の見通しが立っておらず、判決で襲撃事件への関与が確定するまでに賠償請求権の時効(3年)を迎える可能性もある。このため、関与を認める組員について被害者参加制度に基づき捜査機関に証拠開示を求め、襲撃事件への関与を明らかにした上で提訴に持ち込みたい考えだ。

解説…原告の保護徹底を

 末端組員の犯罪に対する暴力団トップの「使用者責任」については、最高裁が2004年、京都府警の警察官誤射殺事件で民法の規定に基づき初めて認めた。08年施行の改正暴力団対策法では、民法に基づく訴訟で必要だった組員とトップの使用関係の立証などが不要となり、責任追及のハードルが下がった。現在では組員の違法行為でトップが多額の賠償責任を負わされるケースが増え、暴対法に基づく訴訟が暴力団の資金獲得活動を封じ込める有効な手段となっている。

 こうした全国的な流れがありながら、工藤会が関与したとされる事件ではこれまで提訴に至らなかった。工藤会は意に沿わない一般人に容赦なく牙をむいてきただけに、被害者が報復を恐れ訴訟に踏み切れなかったとみられる。それが2年前からの県警の頂上作戦以降、組織の弱体化もあって責任追及の動きが出てきたことは一歩前進と言える。

 しかし、使用者責任を問う訴訟が実現すれば、原告となった被害者が標的にされる恐れもある。県警には提訴を検討する被害者の徹底した保護対策が求められる。

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