この8月の北海道はひと月に3つの台風が上陸し、1つが接近するという前代未聞の事態となった。特に豪雨の被害は甚大であり、現時点でJR北海道の多くの線区に不通区間が出ている。特に深刻なのは、石北本線の上川―白滝間の路盤流出であり、また根室本線の富良野―芽室間では複数の路盤流出、橋梁流失が発生している。
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このうち、石北本線に関しては緊急工事を実施しており、10月中旬には運転が再開できるという告知がされているが、根室本線に関しては余りにも甚大な被害のため、復旧については「早くても12月」という告知がされただけだ。バス代行輸送についてはようやく発表されたが、一日3往復という最小限の輸送力に留まっている。
■「持続可能性」議論のさなかに…
一方、JR北海道は7月29日、『持続可能な交通体系について』という文書を発表した。鉄道事業者が発表する資料としては異例な内容で、一言で言えばJR北海道管内における多くの線区では「持続可能性」が疑問だという指摘がされている。
結論から言えば、「秋口まで」に「当社単独で維持可能な線区」と「当社単独では維持することが困難な線区」を「示す」ので、「地域の皆様へのご相談」をしたいという。この資料では明確な区分けはしていないが、資料の中では鉄道輸送密度が500人以下の線区については「持続不可能」だということが強く示唆されている。その線区とは、具体的には下記の通りだ。
留萌本線の深川―増毛間(このうち留萌―増毛は12月上旬廃止が決定)
根室本線の滝川―新得間(正確には上落合信号所まで)
宗谷本線の名寄―稚内間
日高本線の苫小牧―様似間
根室本線の東釧路―根室間
札沼線の北海道医療大学―新十津川間
石勝線(支線)の新夕張―夕張間(地元が積極的に廃止を提言し廃止が決定)
こうした中で起きた台風による被害は、運休による減収や復旧費用などを含めて「数十億円規模」のコストになると報道されている。「持続可能な交通体系について」の文書の通り、ただでさえ収支状況の厳しいJR北海道にとって、これは危機的な事態である。
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週刊東洋経済 |
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