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改革議論、2段階で 生前退位を優先 政府方針

皇位継承問題や皇族減少問題は先送り

 政府は皇室制度の議論について、天皇陛下の生前退位の実現を優先させ、将来の皇位継承問題は先送りする方針を固めた。退位を実現する法的措置では今回に限る特例として特別法の制定を先行させ、皇室典範の抜本改正には踏み込まない。これまで緊急の課題とされてきた皇位継承資格者や皇族の減少問題はその後に「2段階」で取り組むことになり、検討はさらに遅れそうだ。

 首相は8日、訪問先のラオスで同行記者団に、「陛下が国民に向けてご発言されたことを我々は重く受け止めている。それに対して国民から、この問題に対応すべきだという意見が多数ある中で、我々も検討したい」と語った。

 皇室典範改正を巡って、政府は過去に男系男子に限る皇位継承資格者や皇族の減少への対策として、女系・女性天皇の容認や女性宮家の創設を検討した経緯がある。しかし「皇位継承など他の問題を含めると議論が拡散する。陛下の高齢を考えると、何年も時間をかけられない」(官邸関係者)として、今回は退位の実現を優先させたい考えだ。

 首相は父方の血統が天皇につながらない「女系天皇」に反対の立場だ。首相周辺によると、結婚後に皇室を離れる女性皇族の身分など皇族の減少問題に加え、戦後に皇籍離脱した旧宮家の男系男子の子孫を皇籍復帰させる案も含めて、7月の参院選後に皇室制度の見直しの検討に着手する方針だったという。退位の議論を優先することとなり、皇位継承や皇族減少問題への対応は先送りとなる。

 また退位を巡っては、退位の条件をどう明確に規定するかが課題で、議論に時間がかかる可能性がある。さらに制度化により将来の天皇にも退位を認めることになれば、「国民の総意に基づく」と憲法で定める象徴天皇の地位が不安定になるとの見方も出ている。このため必要最小限の対応で済むよう、特別立法での対応を検討する。

 首相は今後の議論の進め方については、「どういう形で進めるかも含めてよく考えたい。多数の方々から意見をいただきたい」として、有識者などから意見聴取に取り組む考えを示した。政府は秋に有識者から意見聴取を始めて議論を本格化させ、早ければ来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。【野口武則、影山哲也】

皇室典範

 皇位継承、皇族の範囲など皇室に関する事項を定めた法律。大日本帝国憲法下の旧皇室典範の廃止にともない、1947年に施行された。4条は「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」と定め、天皇が亡くなった時にだけ皇位継承があるとして、退位の規定はない。一般法と同じく衆参両院の多数により改正できるが、これまで抜本的な改正はされていない。

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