子どもの発達過程で生じるあらゆる問題に対応する「西宮市立こども未来センター」(兵庫県西宮市高畑町)が、開所から丸1年を迎えた。近年、発達障害への関心が高まっていることもあり、開所当初から診察予約が殺到。初診までは約4・3カ月待ちの“パンク状態”に陥っている。(前川茂之)
同センターは昨年9月1日、障害の有無や種類にかかわらず、子どもを支援する施設としてオープン。小児科医や理学療法士、言語聴覚士ら13分野の専門スタッフが常駐し、横断的なサポートが受けられる。
当初から保護者の相談や診察依頼が殺到。待合室は連日、多くの親子連れであふれている状態で、同市発達支援課の小田晃課長は「大人と違って子どもの診察には時間がかかる」と混雑の理由を説明する。
センターで1カ月に診察できるのはおよそ40~50件。約7割が発達障害に関係する相談で、1件当たりの診察時間が1時間近くに及ぶことも少なくない。小田課長は「何より親が子どもの障害をどう受けとめるか。そのためには、時間をかけて理解してもらうことが必要なんです」と強調する。
2005年の発達障害者支援法施行以降、センターのように、発達障害児らを小児科医や心理士などがチームで支援する施設は全国的に増加。県内では、09年に加古川市で「こども療育センター」が設置され、12年7月には「県立こども発達支援センター」が明石市に、さらに伊丹や丹波、篠山、三木市などでも建設が続いた。
県障害福祉課は「発達障害は早期発見が重要。適切な療育指導のためには、さまざまな専門家が横断的に協力する必要がある」と解説する。
ただ、多くの施設が西宮市と同様、長期の診察待ちが現状で、発達障害児の親の会「ゆうきっこクラブ」の野草美千代代表(49)=西宮市=は「診察を待っている間に子どもの症状が悪化することもある。緊急性も考慮しながら柔軟に対応してほしい」と話している。
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発達や身体障害などが原因で、支援が必要な児童は市民全体の11%と言われる。人口48万人の西宮市では約5万3千人の支援が必要とされるが、「こども未来センター」のスタッフはわずか74人。事業の柱と位置づけていた専門スタッフの地域派遣ができないなど、人出不足は深刻な状況だ。
センターが開所前に想定していた必要職員数は86人。しかし、子どもの発達障害を専門的に診られる専門医は全国的に少なく、スタッフの確保に難航、初年度は約6割の57人でスタートした。その後、増員したものの、目標には遠く及ばず、日々スタッフが来庁者の対応に追われる。
センターは当初、日常からの支援体制を整えるため、専門スタッフを地域や学校園などに派遣する「アウトリーチ事業」を展開する予定だったが、当面は手が回りそうになく、「早急に人員獲得のための予算を確保したい」としている。