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マニア垂ぜん…希少種、譲渡先で受難

財政難で休館中の大阪市水道記念館=大阪市東淀川区で、加古信志撮影

「橋下行革」で休館 飼育失敗や天敵に食べられたり…

 財政難で2012年から休館中の大阪市水道記念館(同市東淀川区)から、小学校などに譲渡された魚類が相次いで死んでいる。同館は橋下徹・前市長時代の予算削減で、展示施設で飼っていた淡水魚の繁殖事業を中止。譲り渡した中には絶滅が危惧される希少種も含まれ、飼育が難しかったとみられる。専門家は「希少種は環境の変化に弱い。譲渡後も助言などが必要だ」と注文する。

     同館は市水道局が管理し、水道の仕組みや淀川水系の自然環境を学ぶ施設として1995年に開館した。国天然記念物のイタセンパラなど最大で約200種、約1万匹を展示し、業務委託先の財団法人が飼育を担当した。累計入場者は約113万人。しかし、維持管理費が年間8000万円かかることを橋下前市長が問題視し、12年4月に休館した。

     その後、日本動物園水族館協会(東京都)などを通じて譲渡先を探したが、「既に飼育していて必要ない」などの理由から難航。文化財保護法で移動には文化庁長官の許可が必要な天然記念物を除く魚類を、市内の小学校や公共施設など42カ所に譲り渡してきた。

     しかし、飼育の失敗例が頻発している。市立長池小(阿倍野区)は13年12月、国の絶滅危惧種で琵琶湖・淀川水系の固有種であるワタカ3匹を含む9種約30匹を引き取った。ワタカは校庭の池で飼っていたが、今春、サギなどの野鳥に食べられてしまった。校長は「児童が生き物に触れる機会を増やしたいと譲り受けたが……」と残念がる。

     市立中津小(北区)は、14年7月に国絶滅危惧種のミナミメダカ150匹を譲り受け、中庭の池に放ったが、一緒に入れた金魚などに食べられ今年7月までに全滅した。城東区役所では職員が約70匹を水槽で育てたが、大阪府レッドリストで絶滅危惧種のムギツクやドジョウなどが死んだ。区の担当者は「飼育方法を丁寧に教えてもらったが、本来の業務をこなしながら飼うのは難しかった」と話す。

     市水道局の担当者は「譲渡先の飼育環境を見極め、餌やりや水温管理などもアドバイスした上で渡した。その後の生息状況は把握していないが、一生懸命飼育してもらったと思っている」と言う。現在も記念館には47種約1150匹の魚が残り、委託先だった財団で飼育法を学んだ職員が世話をしている。

     生物学者らと共同で、淡水魚の展示継続を要望してきた長田芳和・大阪教育大名誉教授(動物生態学)は「環境の変化に弱く数が減っているから希少種に指定されており、素人には飼育が難しい。本来なら大阪市が最後まで責任を持って飼育すべきだが、やむを得ず譲渡するならきちんとフォローしてほしい」と求めている。【大沢瑞季】

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