オープニングナレーション
補給線を断たれ、窮地に陥った同盟軍を殲滅すべく、
帝国軍は一挙に反撃に転じた。
第15話のあらすじ
ラインハルトは焦土作戦によって食糧と物資が不足した同盟軍を、
完膚なきまでに叩き潰そうとする。
そして、配下の提督全員に出撃を命じるのであった。
総勢3000万という未曾有の大軍ならば、
労せずして帝国軍を撃破できるはすだと思っていた同盟軍だが、
逆に大兵力が災いして士気が著しく低下していた。
ヤンはイゼルローンへの撤退を画策するが、
帝国軍のケンプ艦隊と遭遇して戦いに突入する。
第13艦隊はヤンの統率の高さと、
明晰な策によって健闘するものの、
他の同盟軍の提督たちは次々に戦死していた。
病欠したアンドリュー・フォークに代わって、
参謀となったドワイト・グリーンヒルは、
総司令官のロボスに撤退を進言する。
だが、負け戦に意固地になったロボスは、
全軍を再編成してアムリッツァ星域で戦うと言った。
撤退できなくなったヤンは恒星アムリッツァに融合弾を投下し、
帝国軍に一矢報いることに成功する。
だが、局地戦に勝っても同盟軍の不利な状況は変わらず、
ついにキルヒアイスの艦隊によって窮地に追い込まれてしまう。
果たしてヤンは無事に生還できるのか-。
第15話の台詞(1)同盟にとっては不利な戦い
フレデリカ「閣下」
ヤン「いよいよ始まったな」
(中略)
コーネフ「この戦いはやばい。今は生きて帰ることを考えろ」
第15話の台詞(2)ヤンは逃げるが勝ちの策を練る
ヤン「うーん。さすがにフィッシャーの艦隊運動は名人芸だね」
パトリチェフ「あの様子ですと、
帝国側の防御ラインを削り取るのも時間の問題ですな」
ヤン「いや、敵は消耗戦の愚かさに気づくはずだ。
まもなく後退して陣形の再編を図る」
ムライ「それに乗じて攻勢に出ますか?提督」
ヤン「いや、ここであの艦隊に勝ったところで、
全体には帝国軍の優勢は動かない。
ここは敵が退いたところで出来るだけ遠くに逃げるのが得策だ」
ムライ「逃げる・・・のですか?!」
ヤン「この戦いは無意味だからね。生き延びるのが先決だ」
パトリチェフ「なるほど」
第15話の台詞(3)消耗戦を狙うキルヒアイス
キルヒアイス「こちらは敵の4倍です。
これを4隊に分け、2時間交代で1隊ずつが、
遠距離からの攻撃を加えます。
敵を殲滅する必要はありません。
あくまで敵の疲労と消耗を増大させ、
降伏にいたらしめるのが目的です」
ヤン「キルヒアイス中将か。ローエングラム伯の腹心と聞くが、
どうして見事な用兵だ。付け込む隙も逃げ出す隙もない」
ムライ「提督。感心してばかりもいられません。
このままでは数において劣る我々の敗北は必至です」
ヤン「フィッシャー少将にヒューベリオンまで来てもらってくれ」
第15話の台詞(5)ヤンは敵を挑発して撤退しようとするが
ヤン「敵の狙いは間断ない戦闘によって、
我々に疲労と消耗を強いることだ。
ただでさえ我々は食糧難に苦しみ、物資も窮乏している。
しかもすでにケンプ艦隊と一戦交えたあとだ。
このままでは、そう長くは持たないだろう。
フィッシャー少将、艦隊をU字型に再編してもらいたい」
フィッシャー「U字型?」
ヤン「そうだ。そこに敵を誘い込み、
三方向から一気に反撃し、
敵がひるんだ隙をついて休息反転離脱を図る」
パトリチェフ「なるほど」
ヤン「これしかない。
もっとも、敵が乗ってくればの話だが・・・」
第15話の台詞(5)同盟軍の総司令官は撤退に否定的
D・グリーンヒル「ロボス閣下。
すでに第3、第7、第12艦隊が通信途絶。
第9艦隊のアルサレム中将は重傷、
第10艦隊のウランフ中将は戦死。
両艦隊とも半数以上を失ったとの報告が入っております。
第5、第8艦隊は辛うじて敵の追撃を振り切った模様ですが、
やはり3割近い犠牲を出しております。
ヤン中将の第13艦隊は健在ですが、
ドヴェルグ星域で足止めを受けてすでに8時間が経ちました。
我々は敵の策に乗せられたのです。
いまは一刻も早くイゼルローン要塞に撤退させるべきです。
閣下、ご決断を!」
ロボス「兵力の再編成を行う。
全軍、アムリッツァ恒星系に集結させよ!」
D・グリーンヒル「閣下!」
ロボス「このまま退き下がるわけにはいかんのだ。
全軍、アムリッツァに集結!これは、命令である!」
ヤン「簡単に言ってくれるものだな」
ムライ「ああ・・・ですが、やらねば敵中に孤立することになります」
ヤン「ああ、そうだな・・・やむを得ないか」
(中略)
オーベルシュタイン「どうやら敵は、
アムリッツァ恒星系あたりに集結するようですな」
ラインハルト「ふふふ。笑止な。
いまになって兵力分散の愚かさに気づいたというわけか」
オーベルシュタイン「そのようですな」
ラインハルト「ふっ。よかろう。
奴らがアムリッツァを墓に選ぶというなら、
その希望を叶えてやろうではないか。
全軍をアムリッツァに向けさせろ!」
第15話の台詞(6)アムリッツァでの激戦
ヤン「全艦、砲撃開始!
館長、恒星アムリッツァに融合弾を投下してくれ。
ローエングラム伯にいつぞやのお返しをしてやろう。
多少、アレンジしてね」
帝国軍兵士「左舷損傷!」
ミッターマイヤー「ヤン・ウェンリーか。さすがに早い。
やむを得ん。いったん後退しろ。後退しつつ陣形を再編。
敵が退くタイミングを図って反撃しろ!」
ヤン「深追いをするな。敵は反撃してくるぞ。
それにしても、ローエングラム伯のもとには、
どれだけの人材がいるんだろう」
パトリチェフ「提督!新たな敵が二時方向に現れました!」
ヤン「はあ・・・そいつは一大事」
フレデリカ「閣下!」
ヤン「装甲の厚い戦艦を並べて防御壁を築き、
その隙間から小型艦の主砲で攻撃しろ」
ビッテンフェルト「ちっ、ヤン・ウェンリーめにはかわされたか。
まあ、いい。進め、進め!
勝利の女神はお前らに下着をちらつかせているぞ!」
(中略)
アップルトン「ここまでか・・・総員、退艦せよ!」
同盟軍兵士「閣下!」
アップルトン「私はいい」
同盟軍兵士「閣下・・・」
フレデリカ「第8艦隊クリシュラ撃沈。
アップルトン中将も戦死の模様です」
ムライ「第8艦隊は崩壊しつつあります。
このままでは、わが軍が分断されます!」
ヤン「しかし、援護は出来ない。こちらも手一杯だ」
ラインハルト「どうやら勝った」
ビッテンフェルト「ようし、全艦反転!
先ほどかわされた第13艦隊を背後から撃つぞ。
メックリンガー艦隊と挟み撃ちにする。
主砲を短距離砲に切り替え、ワルキューレを出撃させろ!」
ヤン「いまだ!全砲門、
背後の空域で快闘する黒い艦隊を撃て!」
ラインハルト「(悔しそうに)ビッテンフェルトは失敗した。
ワルキューレを出すのが早すぎたのだ!」
オーベルシュタイン「彼の手で勝利を決定づけたかったのでしょうな」
帝国軍伝令「ビッテンフェルト提督より、援軍の要請です」
ラインハルト「援軍?援軍だと?!
私が艦隊の湧き出す魔法の壷でも持っていると思うのか!
ビッテンフェルトに伝えよ。われに余剰戦力なし。
現有戦力を持って部署を死守し、武人としての職責を全うせよと!」
帝国軍伝令「はっ!」
ラインハルト「以後、ビッテンフェルトからの通信を切れ。
敵に傍受される。
・・・よくやっているじゃないか。どちらも。
それに、あの第13艦隊の働きは、さすがヤン・ウェンリーだ」
オーベルシュタイン「しかし、このままでは、
わが軍の被害も黙視できぬものになります」
ラインハルト「キルヒアイスはまだか」
オーベルシュタイン「ご心配ですか?」
ラインハルト「心配などしていない。確認しただけだ」
(中略)
同盟軍兵士「背後に新たな敵艦隊出現!数・・・およそ3万!」
パトリチェフ「3万隻?!」
ムライ「まさか?!機雷源はどうしたのだ?!」
同盟軍兵士「突破された模様!」
妙香の感想
銀河英雄伝説の導入部で最も面白い話です。
帝国軍に有能な人材がキラ星のごとくいるのに対して、
同盟軍は凡将ばかりで気の毒ですね。
ロボスにいたっては総司令官なのに、
戦いの大局を見ることができないんですから、
本当にお粗末です。
軍事行動を起こす場合にいちばん重要なのは、
食糧・物資が豊富にあることと、
戦いに『皆が納得できる大義名分』があるかなんですよね。
残念ですが、今回の同盟にはそのどちらもありませんでした。
その中にあってヤンは、
オーベルシュタインに「黙視できぬ被害」と言わせたんですから、
噂どおりの知将です。
彼がいなかったら、同盟軍は全滅していたかも知れません。
また、この話から初登場したキャラがいましたが、
同盟の空軍大尉オリビエ・ポプランと、
帝国のビッテンフェルト提督はユニークなキャラですね。
ポプランは女好きで出撃の前にナンパをしてますし、
ビッテンフェルトは調子に乗りすぎて迷言を叫んでいます。
彼は勇み足からヤンに手痛い反撃を受けて、
ラインハルトを激昂させてしまいました。
猪突猛進で戦闘力の高い将校は、
だいたいそういうミスをするんですよね。
でも、ラインハルトの勝利が100%でないというころが、
架空戦記なのにリアリティを感じるんですよ。
それにしても、同盟の敗戦後が気になります。
もともとは評議会議長の保身と、
アンドリュー・フォークの野心からはじまった戦いですが、
大損害を出した責任はとらなければいけませんよね。
3000万という大兵力で負けたんですから、
同盟はかなり弱体化したような気がします。
心ある政治家なら帝国との和平に動くんでしょうが、
野心家のトリューニヒトあたりが政権を握ると、
そうもいかないんでしょうね。
次回はそのへんの政治劇が展開するようですよ。