映画界の「新時代」を担う監督・新海誠。
2016年夏、この才能に日本中が恋をする。
「君の名は。」製作発表記者会見
2015年12月10日
「君の名は。」製作発表記者会見
<左から、川口典孝プロデューサー、上白石萌音さん、新海誠監督、神木隆之介さん、川村元気プロデューサー>
「言の葉の庭」「秒速5センチメートル」などの作品で、美しい風景の中ですれ違う少年少女の姿を緻密かつ繊細に描いてきた気鋭のアニメーション監督、新海誠監督の最新作「君の名は。」が、2016年夏に公開されることが決定いたしました。
これに伴い、12月10日、東京・日比谷の東宝本社にて製作発表記者会見が行われ、新海誠監督、川村元気プロデューサー、川口典孝プロデューサー、そして、声の出演をすることになった神木隆之介さん、上白石萌音さんが登壇いたしました。
国内外で高い評価を受けながら、これまで小規模での作品作りをしてきた新海監督。今回初めて、スタジオジブリ作品などが担ってきた夏休みの大規模興行に挑むことになった経緯と、それに対する心境、本作の着想の源などを丁寧に語りました。「最高傑作」「集大成」との言葉も飛び出した記者会見の模様をお届けいたします。
川村元気プロデューサー | |
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新海誠監督は約14年前にほぼ一人で作られた「ほしのこえ」という作品でデビューされました。それから14年間、東宝としてラブコールをし続けまして、ようやく今回、配給することになりました。2年前に「言の葉の庭」という作品をODSでやらせてもらいましたが、今回は長編映画を東宝でということになります。プロモーション映像を観てもらうとわかると思いますが、美しい世界ですれ違う男女の極上のラブストーリーを描き続けてきた新海監督の集大成になっております。それを東宝が夏のど真ん中で上映させてもらえるということで興奮しております。 |
川口典孝プロデューサー | |
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僕らはインディーズっぽく地味に一つ一つやってきましたが、前作「言の葉の庭」が世界中で皆さんに受け入れられて、「さあ、新海誠のこの才能を次のステージに」と思ったときに、東宝さんから話がありまして大舞台を用意することができました。「いきなり大きすぎるだろう」と僕もビビっておりますが(笑)、感無量です。もうすでに絵コンテが上がっているんですが、たぶん新海誠の最高傑作になります。これから頑張って作りますので、皆さんどうか期待してお待ちください。 |
新海誠監督 | |
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僕は10数年前に自主製作としてアニメーションを作り始めました。それから川口さんと巡り会って、こじんまりと一人で始めたところから徐々に仲間が集まって、作りたいものを作ってきました。ですが、数年前に作った「言の葉の庭」という作品を東宝さんで上映してもらったところ、それが大変楽しい経験になりました。今まで出会ったことのない観客や業界の方々、役者さんに巡り会うことができて、映画興行というのがこれほど楽しいことならば、もっと大きなところでやってみたいという気持ちが強くなりました。そして今回、新作を東宝さんでやらせてもらうことが実現しました。僕にとっても夢のような出来事です。とても楽しく誇れる映画になっていますので、どうか皆さん楽しみにしていてください。 |
神木隆之介さん(立花瀧役) | |
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僕自身、新海監督の作品が大好きです。そんな新海監督の作品に携わることができて、本当に幸せだなと思っております。大好きだからこそ、自分の中でプレッシャーも大きくあるので、一生懸命頑張りたいなと思っております。 |
上白石萌音さん(宮水三葉役) | |
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私は以前、少しだけ声優のお仕事をしたことがあります。それからずっと「もう一度、声優のお仕事をしてみたい」と願っていたので、今回このような素晴らしい監督、スタッフの皆さん、そしてキャストの皆さんの下で願いを叶えてもらって、本当に幸せです。少し気が早いですが、公開が待ち遠しいです。 |
MC:2013年に公開された「言の葉の庭」は東宝映像事業部から配給され、小規模公開ながら大きな話題となりました。今回は全国一斉公開で夏休み興行を飾ることになりますが、川村プロデューサーのこの作品にかける意気込みをお聞かせくださいますか?
川村プロデューサー:
東宝の夏のアニメーション映画といったら、宮崎駿監督をはじめ名だたる巨匠が務めてきた場所です。そこで新海誠監督という新しい才能を、東宝として最大規模で押し出していきたいなと思っております。新海誠監督といえば、今までは自主製作の流れに沿ってやってこられていましたが、今回は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の田中将賀さんがキャラクターデザイン、「千と千尋の神隠し」はじめ数々のジブリ作品を手掛けてきた安藤雅司さんが作画監督を務めるなど、超一流のスタッフが集まって作っております。ですから、新海監督のビジュアルセンスと、日本のアニメーションの技術のすべてが融合された作品になるのではないかと思っております。
MC:先ほど「最高傑作になる」というお話もありましたが、現在、制作現場はどのような状況ですか?
川口プロデューサー:
スターアニメーターたちがたくさん参加していますので、自分の会社なんですが、スタジオに行くのにすごく緊張します(笑)。
新海監督:
川口さんは、休日に時々来てコーヒーの注文をとって、アニメーターにコーヒーを置いて帰っています(笑)。それ以外は、話しかけないですよね。
川口プロデューサー:
僕は絵が描けないので、制作に入ってしまうとすることがないんです。だから、僕ができることは、コーヒーを置いていくとか、最近はマッサージ師を呼ぶとかしかないんです(笑)。コンテは上々なんですが、作画の方もたまに見るとすごいことになっています。今までとは違う新海作品になりそうだなと思って見ています。
MC:監督もツイッターでは、スタッフの皆さんが頑張っている様子を報告されていますね。
新海監督:
そうなんですよ...。今まで憧れていた方々とご一緒できて...たとえば作画監督の安藤雅司さんは「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「思い出のマーニー」など、僕も大好きな、みんなも大好きな劇場アニメーションで作画監督を務めてきた方なんですよ。その方が僕の隣の席にいる。そこにいるだけで、もう辛くて、早く終わらないかなと思ってしまいます(笑)。ありがたいことなんですが、そんな人がものすごく力を込めて、夜を徹して、絵を描いてくれている。その姿、鉛筆の音、紙をめくる音を聴くだけで泣けてきてしまうんですね...。ジブリで10年、20年と積み上げてきた人たちが、そこで受け継いできたものをこの作品に定着させてくださっているんだというのが、鉛筆の音、紙の音を通して自分の身に染みてきて、本当に幸せな現場だなと思うと同時にプレッシャーにも感じる状況です。
MC:今回のストーリーは、夢で見た少年と少女が経験する恋と奇跡の物語とのことですが、着想はどういったところから得たのでしょうか?
新海監督:
着想を得たところはいくつかあるんですが、一つは古今和歌集にある小野小町の「夢と知りせば覚めざらましを」という有名な和歌にあります。内容は「あなたのことを夢で見た。これが夢だと知っていれば、覚めずにずっと夢の世界にいただろう」というものなんですが、そういう気持ちってなんとなくわかりますよね。上白石さんは好きな人の夢を見たことがありますか?
上白石さん:
まだないです(会場笑)。
新海監督:
まだないですか(笑)。神木さんは?
神木さん:
僕ですか(笑)。僕は新海さんが大好きですから(会場笑)。
新海監督:
ありがとうございます(笑)。夢でせっかく会えたけれども、夢だとわかっているなら覚めたくないってちょっと切ないですよね。そういう夢と現実のギャップが、物語のテーマになるんじゃないかと思いました。最初はその夢と現実のギャップをどうやってアニメーション映画にもっていこうかなと思ったんですが、夢と現実だけではなくて、男の子と女の子のギャップ、心と体のギャップ、東京と地方のギャップなどもアニメーションの画面にあれば、とても魅力的に、他ではできないようなやり方で描けるのではないかと思いました。そしてそのギャップを推進力にして映画を作りたい、というようにだんだん気持ちが固まって物語ができていきました。スタートは小野小町の一つの和歌にありましたが、とてもスケールの大きな映画になっていると思います。
MC:監督は約1年前の大晦日に、本作について「今まで自分が作ってきたどの作品よりも、楽しく、美しく、遠くの方にまで届く作品にしたい。」とコメントされていましたが、改めて今、どんな方々に届けたいですか?
新海監督:
今回の作品は本当に力のある方々にご協力いただくことができて、脚本についても川村さんを中心とした東宝の方々と10カ月ずっと練り上げてきました。そして瀧の声を憧れの神木さん、三葉の声をオーディションで出会ったときに「この人しかいない」「何百人会ったとしてもきっと彼女だっただろう」と思った上白石さんにやってもらうことになって、本当に理想的な環境でものづくりができています。僕は今まで、「本当に好きな人たちに観てもらえればいい」という気持ちもどこかにありつつアニメーションを作ってきましたが、今回は、子どもから大人、お年寄りまで、もしくは日本人じゃなくても、本当に多くの方に楽しんでもらえる作品になるんじゃないかという確信があります。一言で言ってしまえば、映画館に一人でも多くの方に観に行ってほしい、そういう作品です。
MC:神木さんは新海作品の大ファンだということですが、ずばりその魅力はどんなところにありますか?
神木さん:
空の色がすごく美しいです。普通の青空じゃなくて、緑とかが入っているんですよね。別の世界に入りこませてくれるような色使いなんです。ナレーションについても、触るとはかなく崩れちゃいそうなんだけれど、芯はすごくしっかりしているという、人間の絶妙な心の動きを大事にされている方なんだなというのを、映画を観ていて思います。
新海監督:
お話をしていても、神木さんは僕の過去作の「あの作品のこのセリフが好きです」とか「こう言って、こう返す、あの言葉にどんな意味があるんでしょうか?」という話が出てきて、本当にマニアなんだなと思いました(笑)。
神木さん:
光栄です(笑)。
川村プロデューサー:
神木くんの有名な話で、「言の葉の庭」を観てから(舞台になった)新宿御苑に通い詰めていたという...(会場笑)。
新海監督:
聖地巡礼を...(笑)。
神木さん:
はい、しました(笑)。
新海監督:
(神木さんの)ファンの方とは会わなかったですか?
神木さん:
同じ(新海作品)ファンの方もいらっしゃいましたよ。大学生の男の子に話しかけてもらいました(笑)。「言の葉の庭」について、そこでずっと語っていました。
新海監督:
いやあ、嬉しいです。
MC:監督、神木さんの大好きな空は今回も期待していいでしょうか?
新海監督:
そうですね。特報のビジュアルでも、いろいろな時間帯がミックスされたような空を描いていますけれども...。今回は「まだ会ったことのない君を、探している」というコピーがついていて、高校生の男女が主役で、まだ見ていない未知のものに憧れるというお話なんです。それがもしかしたら、自分の運命の何かなのかもしれないという話です。そういう何かに憧れている人がまず目を向けるものって空であったり、星であったり、雲であったりすると思うんです。自分の手の届かない、でも巨大なもの。ですから、心情に寄り添った風景をアニメーションで描こうとすると、どうしても空を描きたくなりますし、カットの中にどうやって新鮮な空を入れていこうかといつも考えます。(だから大事なのは)その色合いなんです。
MC:神木さんが演じる瀧は夢の中で女子高生になりますが、演じるにあたって今から意識していることはありますか?
神木さん:
女子高生を演じるというのは未知数なので、具体的にどうしようかというのはまだ考えていないです。上白石さんを参考にさせてもらいながら、そこは監督とじっくり何回もできればと思っています。監督に納得してもらえるように、僕はもう頑張るしかないと思っています(笑)。
新海監督:
男の子の声で女の子のセリフをしゃべるシーンがたくさん出てくるんですが、そこで「この役者さんが女言葉を使っている」という絵が頭に思い浮かんできたときに、「神木さんの顔だったら嬉しいんじゃないか」ということを、脚本開発のときに川村さんが強く主張していました(会場笑)。
川村プロデューサー:
男の人が女言葉を使うと気持ち悪くなってしまいますが、神木くんがしゃべると嬉しい人が結構いるんじゃないかなと、「バクマン。」で思ったんですよね(笑)。
新海監督:
僕も思いました(笑)。
MC:上白石さんはオーディションで三葉役を射止めましたが、三葉役に決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
上白石さん:
信じられなかったですね。電話でマネージャーさんから言われたときに、自然とほっぺたをつねっていて、こんなことって現実にあるんだと思ってびっくりしました(笑)。オーディションの前に仮の台本を読ませてもらったんですが、一瞬でこの作品が大好きになって、三葉役ができたらどんなに幸せだろうと思いました。もし受からなくても、絶対にこの作品は劇場に観に行こうと心に決めていたので、(受かって)本当に幸せで今でもまだ夢みたいです。
MC:かなりのセリフ量があり、感情の変化もたくさんある難しい役だと思いますが、挑戦する意気込みはいかがですか?
上白石さん:
いつも新しいことが始まるときって、期待と不安がごちゃ混ぜになってよく眠れないことがあるんですが、今回は特に私の中で経験の少ないアニメーションなので、一層ドキドキが大きいです。でも、監督やスタッフの皆さんにご指導いただきながら、そして何度もアニメーションを経験されている神木さんにいろいろ教えてもらって学びながら、自分自身も楽しんで頑張ろうと思います。
MC:監督は「三葉は上白石さんしかいない」と思われたんですよね?
新海監督:
そうです。上白石さん、なんの心配もいらないですよ(笑)。やっぱり抜群にうまいんですよね。声が素敵だというのもありますが、とにかくうまくてそれに驚きました。年齢を聞いたら娘と同じぐらいで、それにも驚きましたが(笑)。そのうまさは周防正行監督の作品に主演されていたりとか、積み上げてきたものがあってこそなんでしょうが、最初に声を聴いたときに驚きました。なんのズレもなくはまっていました。
上白石さん:
嬉しいです。
新海監督:
勝手に僕がキャラクターと同一視しちゃっているんですよね。上白石さんのご出身は...。
上白石さん:
鹿児島です。
新海監督:
三葉は東京に憧れている女の子なんですよね。(周防正行監督の)「舞妓はレディ」もそういった要素がありましたが(笑)。ですから、(上白石さんと出会ったときに)「あ、三葉がいる」と思いました。もしかしたら東京に憧れがあるかもしれないし、ないかもしれませんが(笑)、今まで馴染みのなかった風景をある日突然夢で見たらどんな感じの声が出るのか、そういうところも上白石さんだったら「彼女が本当にこう思っているんだろうな」という声をちゃんと表現してもらえると思うんですよね。上白石さんは、本当に三葉ですね。
【マスコミによる質疑応答】
Q:神木さんは、宮崎駿監督、細田守監督、そして新海誠監督とお仕事をされて、それぞれの監督の作品や、監督のイメージをどう捉えていますか?
神木さん:
それぞれ作風は違いますが、宮崎監督も細田監督も新海監督も、本当に皆さん優しい方で、すごく丁寧に一つ一つのセリフのニュアンスを伝えてくださるところは同じだなと思います。新海監督の作品と出会ったときに、宮崎さん、細田さんの映画を観たときと同じような大きな衝撃を受けました。「なんて素敵な作品なんだ! この作品に出会えて本当に幸せだな」とすごく感じました。なので、(新海監督とお仕事できて)とても幸せ者だなと思います(笑)。今でもこの作品に携われていることが信じられないぐらい、すごく嬉しいです。
Q:新海監督の印象はいかがですか?
神木さん:
いろいろなことを頭の中で考えている方なのかなと思います。空もきれいですし、絵もきれいなので、どういう目線でこの世界を見ているんだろうというのは、すごく気になります。
MC:宮崎監督と細田監督のお名前が出ましたが、お二人の存在を意識することはありますか?
新海監督:
そういう風に同じ話題に出してもらえるだけで光栄です。本当に雲の上の方々ですから何を思うもないです。川村さんにその辺は...。
川村プロデューサー:
やはり宮崎監督は東宝の夏のアニメをずっと支えてくださって、アニメーション映画というものを日本の観客に広めた大監督だと思います。細田監督も(宮崎監督と)同じ東映アニメーション出身で、メジャーでオリジナルの劇場アニメを作ってきたという意味で(宮崎監督の)後継者だと思います。ですが、(宮崎監督、細田監督と同じく)新海監督も原作なくご自身のオリジナルで長編の夏のアニメに挑戦しますので、そこに並ぶべく勝負を挑むということになると思っています。そのポテンシャルは十分にあると感じています。
Q:これまでの新海監督の作品は、なかなか男女の恋が成就しませんでしたが、今回はどうなるのでしょうか。
新海監督:
結ばれるか結ばれないかはネタバレですので何も言えませんが...(笑)。ただ劇場を出た後に、本当に幸せな気持ちになったり、さわやかな気持ちで帰ってもらえる作品であるとは思っています。それは若い方であっても、ご年配の方であっても、子どもであっても、「ああ、こういう感情は生きていて味わったことがあるな」あるいは、「これから僕は味わうんだろうな」という気持ちを持ち帰ってもらえると思います。
Q:同年代の恋をどう思いますか?
神木さん:
今回の作品は「まだ会ったことのない君を、探している」というすごく素敵なキャッチコピーがついていて、それがキーワードにもなっているんですが、夢の中で少女と少年が出会うので心と体の距離も関係してきますし、すごく素敵な男女の恋が描かれているなと思います。僕はすごく甘酸っぱいなと思います。
上白石さん:
私は今、高校生で、そういう甘酸っぱい恋がたくさんあるのかなと思って高校に入ったんですが、私の学校ではそんなになくて、映画やドラマを観てそういう恋愛に憧れます(笑)。恋に恋するじゃないですが、憧れがすごく強いんじゃないかなと思います。
■最後に新海監督からメッセージが送られました!
新海監督:
分不相応な大きな舞台を用意してもらって、プレッシャーもありますが、それにかなうだけの自信...胸を張って「これが2010年代の日本を代表するアニメーションになるんだ」と自分たちが確信を持って作っています。公開は来年の夏ですが、楽しみにしていただいて、ぜひご協力いただければと思っております。本日は本当にどうもありがとうございました。