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財政難で報酬不足

全センターの支援員の割合

5割超、無給か最低賃金未満

 全国にある犯罪被害者支援センターの支援員の5割以上が、無給か各都道府県で定められる最低賃金未満の報酬で活動していることが各センターへの取材で分かった。被害者支援の重要性が増す一方、その中核を担うセンターの財政難は深刻で、専門家は「人材を育てる余裕もなく、支援が行き詰まる恐れがある」と指摘する。

 支援員は犯罪や交通事故などの被害者や遺族の相談に電話や面接で応じたり、警察署や裁判所に付き添ったりする。夜間に突然呼び出されたり、長時間の付き添いが必要になることもある。加害者の逮捕後の流れや裁判などについて相談されることも多く、専門知識もある程度必要だ。センターによっては支援員が毎日常駐するケースもある。

 公安委員会は支援実績のある民間のセンターの中から47都道府県に一つずつ「犯罪被害者等早期援助団体」を指定している。この47団体に取材したところ、41団体は2014年度の収入に占める公的支援の割合が4割未満だった。人件費を含む運営費の多くを寄付や会費などに頼らざるを得ず、今年7月現在、月に1度以上活動する支援員計1309人のうち、無給のボランティアが15%、最低賃金未満が38%だった。

 一方でセンターの役割は増している。「犯罪被害者等早期援助団体」の指定は02年に始まり、昨年6月の徳島県で全都道府県に広がった。指定されたセンターには、被害者の同意の下、警察から被害者の名前や住所、事件情報などが提供される。センター側から被害者にアプローチできるようにすることで、自ら声を上げられない被害者にも迅速な支援を可能にするのが狙いだ。公表していない4団体を除く43団体への警察からの情報提供数は、12年度の計1047件から15年度は2118件と倍増した。

 増える役割や責任に見合う報酬が払えないことで、各センターからは「普段仕事を持っている人が多く、被害者に同じ支援員が寄り添い続けるのが難しい」「専門的知識を持った人材を育てるのが困難」「夜間に呼び出すことにためらいがある」などの声が上がる。

 犯罪被害者支援に詳しい諸澤英道・常磐大元学長は「米国では国と州がセンターの運営費を全額負担するほか、犯罪加害者に課した罰金や追徴金を基にした数千億円の基金からも財政支援がある。日本の被害者支援は20年遅れていると言われるが、センターの人材が育たない限り、支援政策も改善されない」と指摘する。【尾垣和幸】

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