おっさんに売らない!…若者向け限定酒「J23」
新潟の「菊水酒造」 「20〜45歳」の年齢制限付き
「菊水酒造」(新潟県新発田市)は9月1日から、購入できる条件に「20〜45歳」の年齢制限を設けた純米大吟醸の日本酒「J23 KIKUSUI」を数量限定で販売する。原料の酒米を4分の3以上削り込むぜいたくな造りで、将来消費者となる若者層に、日本酒のおいしさを知ってもらうのが狙いだ。同社の高沢大介社長は「J23を通じて、日本酒を楽しみながら飲んでくれる若者が増えればうれしい」と期待を寄せている。【堀祐馬】
同社が若者向け限定酒を発売する背景には、日本酒離れの深刻さがある。国税庁のまとめによると、2013年の国内の清酒の消費量は約58万キロリットルと、1970年代のピーク時と比べ、3分の1程度にまで落ち込んでいる。嗜好(しこう)の多様化などが主な要因とみられ、同社は定期的に飲み比べ会などを開いて若者や女性の意見を聞き、日本酒愛好家の裾野を広げようと努めてきた。
そうした取り組みの一環で今回、「若者を日本酒で感動させたい」と開発されたのがJ23だ。「23」は、酒米の米粒をどの程度削ったかを示す「精米歩合」を表す数字。高級酒である大吟醸酒でも50%以下だが、J23は77%を削り、より雑味のないクリアな味わいになる中心部の23%のみを使用した。酒米は削れば削るほど水を吸って味が変わるため、水に漬ける時間には秒単位でこだわった。またフルーツ系の香りがする酵母を使い、飲みやすい甘口に仕上げた。
さらに、従来とは異なる新たな顧客層に直接思いを届けて関心を持ってもらおうと、インターネット上で不特定多数の人に出資を募る「クラウドファンディング」を活用。J23の割引などの特典付きで、全国の約650人から約450万円が集まった。
価格は500ミリリットル入り4800円(税、送料込み)と日本酒としては高額だが、企画を手がけた同社の伊藤淳さんは「これでも原料費や手間を考えれば割安な価格設定。アルコールの匂いが強いという日本酒のイメージを払拭(ふっしょく)したい」と意気込んでいる。
27日午後、新発田市島潟の本社で開かれたJ23の発売記念パーティーには、コンセプトに賛同し、インターネットを通じて出資した若者ら約30人も駆け付けた。名古屋市の大学院生、吉田京平さん(23)は「すっきりしておいしい」と商品の出来を喜びつつ、価格には「若者向けならもう少し安い方がいい」としっかり注文も付けていた。
販売本数は2500本で、店頭販売はしない。申し込みは、電話(0120・07・7796)かファクス(0120・23・5254)、インターネット(http://www.kikusui-sake.com/jijun/)で。