世間とオタクが庵野秀明からの刺客、シン・ゴジラで揺れる中、夏の話題アニメ映画として2016年8月26日に「君の名は。」が公開された。
長編アニメ映画監督として脚光を浴びる新海誠監督の前作「言の葉の庭」から約3年ぶりとなる新作だ。
新海監督が世に出て、作品を重ねるごとに確かな評価を獲得し、今やオタク業界だけでなく一般視聴者からも支持を得ていると言っても問題ない位有名になったと思う。
もちろん私も見ようと思っていた。しかしちょっと乗り気ではない部分もあった。 シン・ゴジラもなんとなく見る機会を逸していた。
そんな見ようかなどうしようかな、という気持ちはまさに私の新海作品への現在の評価といってもいいものだったと思う。
そもそも長い付き合いなのだ、新海監督とは。
日本ファルコム時代から
日本ファルコムというゲーム会社をご存じだろうか?
今はPS VITAやPS3等で「軌跡」シリーズ等をリリースし、貴重な正統派JRPGを作り続けているゲームメーカーです。
「軌跡」シリーズの元となった「英雄伝説」シリーズやアクションRPGの原点ともなった「イース」シリーズ等ヒット作も数多く輩出し、激動のゲーム業界でしぶとく生き残っている古参のゲームメーカー。
私は昔からこの「英雄伝説」シリーズ、特にⅢ、Ⅳ、Ⅴが好きでした。
この英雄伝説、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの三作は時間軸上繋がりがある事から、その舞台である世界名を取って「カガーブトリロジー」と呼ばれ、当時は珍しくパソコンで出たRPGでした。
この三作を筆頭に、英雄伝説シリーズはPSPに移植され、英雄伝説Ⅵの「空の軌跡」シリーズのヒットによって、広く名を知らしめました。
というかPSP移植が成功していなければ、ファルコムの経営は中々厳しかったのではないかと思います。
この「カガーブトリロジー」や「イースⅡエターナル」など、PC時代のファルコム作品のOPムービーのいくつかを新海監督が手掛けており、その特徴的な光の使い方や景描写の緻密さ、美しさは当時から際立っていました。
その後もminoriという所謂エロゲーメーカーのOPムービーも手掛け、エロゲー全盛期の有名メーカーであったため、私も何度も目にする機会がありました、
当時からその映像の美しさは郡を抜いていたため、名前は知らなかったのですが、目には焼きついていました。
「ほしのこえ」と「雲の向こう、約束の場所」
新海監督の名前が、大きく知れ渡ったのは2002年に公開した『ほしのこえ』だと思います。
監督・脚本・演出・作画・美術・編集などほとんどの作業を一人で行った約25分のフルデジタルアニメーションで、そのクオリティの高さから注目を集め、多数の賞を受賞しました。
そして2004年、初の劇場長編作品となる『雲のむこう、約束の場所』が公開。
「ほしのこえ」を超える作画のクオリティーと巧みな演出、素晴らしい音楽が評価され、この作品で第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞を、宮崎駿監督の『ハウルの動く城』などを抑え受賞。
私が新海監督のアニメ作品を見たのはこれが初めてなのですが、一発でファンになりました。
新海監督の作品の中で一番好きな作品です。
今思えば青臭い、思春期の厨二病全開のアニメ映画なのですが、美麗な映像と相まってとても心を揺さぶられました。 特に男性の初恋をクサさ最高潮に描いた内容に共感したのものです。
そして次の連続短編アニメーション「秒速5センチメートル」の公開が決まった時、私は必ず劇場に見に行こう、と心に決めました。
そして抉られた
上映館が少なく、確か渋谷に見にいったと思います。
平日にゆっくり見に行きたかったのですが、その時はまだ今の会社ではなかったので有給が取りにくく、調整に苦労したのを憶えています。
気合いを入れて早めに行ったのですが、丁度前の上映回が終わった後で、映画館からはその回を見たであろうお客さんが丁度出てくる所でした。
何故か異様な雰囲気で、そのお客の顔も皆一様に首を傾げるような、見た映画に納得していないような、疑問をもっているような感じでした。
ひと組のカップルが映画の内容について言い争いをしていたのを記憶しています。
そして1人でこの映画を見ました。
客席に人はまばらだったので丁度見やすい真ん中あたりに陣取って鑑賞しました。
内容はぜひ見てもらいたいので多くは語りませんが、山崎まさよしさんのOne more time, One more chanceが流れたラストを見終わった後は私は席で1人放心していました。
「ああこれ知ってるぞ、痛いやつだ。」
「男性特有の、痛い奴だ。」
なんとか立ちあがって、帰ろうと後ろを向いたら、私の真後ろで鑑賞していただろう、20代のOLさん風の女性が声を殺して手の平で顔を覆いながら泣いていました。
「わかる、なんかわかるぞ…」
そう思いながら私は映画館を後にしました。
私がスクリーンを出る直前まで、その女性は席で泣いていました。
この映画の評価は、見る人によって両論賛否なのではと思います。 少なくとも、見終わった後、気持ちよく、心の晴れる映画ではないと思います。
ですが男の恋愛観というか匂い立つような青臭さを描いたこの映画を私は嫌いにはなれませんでした。 山崎まさよしさんのOne more time, One more chanceをウォークマンに入れて、繰り返す聞く日々でした。
その後も長編劇場作品の公開が続いている監督ですが、その作品を見るとまだまだ試行錯誤中なのかな、と思います。
「秒速5センチメートル」を見た時のあのもやもやは未だに心にあります。
「星を追う子ども」と「言の葉の庭」
秒速から4年、待望の長編「星を追う子ども」が公開。しかしこの作品、公開されてからというもの酷評の嵐。
とにかくダメダメという評価ばかりなので、さすがの私もしり込み、未だにこの作品名は見ていません。 ファン失格だよなぁ、と思っているうちに2013年に「言の葉の庭」が公開。
当時オタク力を日に日に増す会社の後輩と、なんとか舞台挨拶のチケットを取って見に行きました。
この舞台あいさつの内容が中々に豪華で新海監督と主演声優の入野自由、花澤香菜さんとのトークショウ。 初めて生で見た声優となった花澤さんが思っていたより数段可愛かった事が印象に残っています。
そして「言の葉の庭」も将来靴職人になりたいと悩む高校生と、彼の高校の女性教諭との恋愛物語でした。 これがまた美しくも悲しい物語。
大きな満足感を得ると共に少しすっきりしない後味。
そのすっきりしない後味、というか新海監督の作品にはハッピーエンドが欠けています。 それが監督の持ち味であり、悲しくも美しい作風が魅力でもあります。
そんなこんなで仕事が多忙というのもありすっかり8月26日が最新作「君の名は。」の公開日というのを忘れていました。
しかし公開日ながら聞こえてくる絶賛の声。
妻は抜け駆けして26日に見ようとしていたみたいですがなんだかんだで封切2日目に突撃!
まさに集大成、そしてブレない新海節
まず新海映画で一番の特徴といえばその美麗な映像。
「君の名は。」でも存分に美しい風景を見せつけてくれます。 舞台は岐阜県の田舎町と東京。
その正反対の田舎と都会を違った角度から美しく見せてくれます。 田舎の山々と都会のビル群を同じように美しく見せてくれるんですよね。
特に新海監督は東京も好きなんでしょう。新宿や渋谷といった都心をアニメという違った角度から見せてくれます。 音楽もRADWIMPSが手掛ける楽曲が上手くマッチしており、4曲ある主題歌と劇中歌もここぞというタイミングで聞かせてくれました。
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さて、肝心のストーリーはというとまたまた得意のボーイミーツガール。 新海監督が表現し続けてきた恋愛は、障害や困難が立ちはだかる、一筋縄ではいかない恋愛でした。
しかし今回は夢の中で人格が入れ替り、七転八倒しながらその状況に対応していく、というコミカルな出だしでスタート。 結局は大きな壁に立ち向かっていくことになるのですが、今まで通り、主人公達は果敢に立ち向かっていきます。
そしてネタバレを避けて言うと、今までとは少し違ったラストが待ち受けていました。 私が新海映画を通して感じていた「大きな満足感を得ると共に少しすっきりしない後味」。
それを覆すかのような、新しい終わり方はそれはもう衝撃的に感じました。 そうか、この終わり方かぁ。
まぁ、最高でしたよ。今までの新海節を最初から最後まで漂わせつつもエンタメとして完成された作品。
新海監督が作りたかったものの集大成が「君の名は。」なんだと、私は感じました。
一般にも広く進められる「君の名は。」ですが、興行収入の滑り出しも上々なようなので、普段はアニメを見ないという方にも広くお勧めできる作品だと思います。
一方で細かい設定や突込みどころもあるので、細かいところで気になる人は気になることがあるかもしれません。
そこはもう突っ込むのは野暮だと私は思うのですが、とにかく見てくれ、というのが私の感想です。
正直ここまでやりきってしまったら、次はどうするんだろうと余計な心配をしてしまいます。 新たな境地を切り開くのか、それとも今のままさらに先に進むのか。
この「君の名は。」で一躍日本の長編アニメ界の最前線に躍り出たと言ってもいい新海監督の今後から目が離せません。
夏の終わりに公開されたまさに極上エンタメ「君の名は。」。 さぁ今すぐ映画館で堪能してみてください。
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