通常うつ病になると生命保険に入れなくなります。うつ病になると死亡率が高くなる、つまり自殺する人が多いからなんですが、これってうつ病患者側からしてみると金銭的にも、うつ病的にも、ものすごいリスクなんです。
「うつ病が悪化して入院」なんてことになった時にお金がなくて満足な治療を受けられない。それが原因でうつ病が慢性化したり悪化したり、なんてことになる可能性が充分あります。
お金もない、働くこともできない、はっきり言って恐怖です。そんなリスクをできるだけなくしましょう。
冒頭に「うつ病になると、生命保険に入れなくなる」と書きましたが、最近は一定の条件を満たして、少し高い保険料を払えばうつ病でも入れる生命保険(医療保険も)があるんです。
生命保険(医療保険)に入っていない方はこの機会に是非入って欲しいです。すでに加入済みの方も、本当にその保険がうつ病患者に適切なものなのか?是非見直しをして欲しいと思います。
今回はそんな思いで、うつ病でも加入できる生命保険・医療保険について書いてみたいと思います。
Contents
生命保険の仕組み
まずは生命保険の仕組みをきちんと知りましょう。仕組みを理解しないから
「面倒臭い」 → 後回し → うつ病が悪化した時に後悔
ってことになるんです。後回しにすればするほど、腰が重くなりリスクが高まります。しまっていきましょう。
保険は「死亡率」で月々払うお金が決まる
例えばある保険会社に、加入者(保険に入っている人)が100人いたとします。すると保険会社は、その加入者100人のうち、1年間で何人(何パーセント)死亡するかを予測し、死亡した際に支払う保険金を計算します。
例えば1人あたり100万円の保険金、1年間で死亡するのは3%(3人)であれば、
100万円 × 3人 = 300万円
1年間で合計300万円用意しておく必要があります。そのためこの300万円を加入者100人からそれぞれ徴収するわけですね。この徴収料が月々の「保険料」になります。
もしも加入者のうち誰かが死亡した時はその300万円の中から、保険金100万円(1人分)を支払うことになります。最高で3人まで。もしも死亡率の予測を誤って4人死亡してしまった場合は、保険会社は100万円の損失を被ることになります。そのため保険会社は、死亡率の予測が外れないよう、ありとあらゆる手段をとります。
一番重要なのが、新規加入者の審査です。入念な健康診断、告知(病歴を聞かれる)、職業(危険度の高い仕事でないか)等で新規加入希望者の死亡率を徹底的に計測します。ここで死亡率が高いと判断すると、加入をさせません。そうすることで加入者の厳正な死亡率を保っているわけです。
うつ病患者を加入させると「保険の仕組みが崩れる」
さて、ここからがうつ病と生命保険の話になります。
生命保険業界ではうつ病の死亡率は非常に高いとされています。この死亡率が高いうつ病患者を自社の生命保険に加入してしまうと、厳正な死亡率を保つことができなくなります。予想した死亡率の人数よりも多くの加入者が死亡することとなり、その予想オーバー死亡人数分の保険金が赤字としてのしかかってくるわけです。
これは生命保険会社の経営の問題だけではありません。赤字が続けばやがては支払うべき元手がなくなり、一般の加入者に保険金を支払うことができなくなる、という事態にまで発展するわけです。
このように、うつ病患者を保険に加入させるということは、「保険の仕組みを根本から崩してしまう」ということになります。そのため、うつ病患者は生命保険に入ることができないのです。
保険料を高く設定した保険が「うつ病でも入れる保険」
「そうは言っても、このままうつ病患者を切り捨て続けていいのか?彼ら、彼女らは自らの過ちでうつ病になったわけではない。むしろ一生懸命がんばったからうつ病になってしまっただけだ。そんな人たちにも保険に入る権利はあるのではないか?」
うつ病・人権・保険、全ての分野の先進国であるアメリカ合衆国で、そのような意見がさかんに交わされるようになります。そして同時にうつ病患者が保険に入れる方法が検討されました。うつ病患者を保険に入れる解決法、難しいようですが実はいたって単純なんです。
「死亡率が高い人たち専用の保険を作ればいい」
具体的には、一般の予想死亡率を使用するのではなく、うつ病(ほか疾病含む)患者専用の予想死亡率を作る。そしてその専用予想死亡率に応じた「割高」な保険料を徴収すれば、赤字になることもない。保険制度の根幹がゆらぐこともありません。
ただ、この方法はアメリカであるから確立できたといえます。うつ病の研究が進んでいないと、うつ病患者専用の「精度の高い」予想死亡率を作ることができません。そのため、これから紹介する「うつ病でも入れる保険」を取り扱っている保険会社のほとんどが「外資系」の保険会社になります。外資系の保険会社というのは日本人にとって少し敷居が高い感があります。そのため、さまざまな保険会社にチャネルを持つ、保険の国家資格を持ったプロ、ファイナンシャル・プランナーに仲介してもらうのが一般的です。基本的に日本の保険会社の窓口に行ってもうつ病患者は保険に加入できません。保険を選ぶ際に持っておいたほうが良い基礎知識の一つです。
うつ病でも入れる保険は3種類
こうしてうつ病でも加入できる保険ができまました。大きく3種類の保険があります。
- 引受基準緩和型保険
- 無選択型医療保険
- 指定疾病不担保制度
この3種類がうつでも入れる保険です。
簡単に説明すると下記のようになります。
「引受基準緩和型保険」
加入の際の審査基準を下げた保険です。その分死亡率が上がりますから、保険料も割高になります。
「無選択型医療保険」
加入の際に健康状態を保険会社に知らせる(「告知」といいます)ことをしないで入れる保険です。健康状態が分からないということは死亡率が分からないということですから、「引受基準緩和型保険」よりさらに高い保険料が必要な保険です。
「指定疾病不担保制度」
これはうつ病(含む持病)の場合は保険金を払わない、という保険です。死亡率が高い部分を保険対象外とすることで、死亡率を通常の保険と同じにする仕組みです。うつ病の人がうつ病で入院した場合はお金は支払われません。うつ病の人がガンで入院した場合はお金が支払われます。
冒頭でも書いたとおり、うつ病で保険に加入できないリスクは、「うつ病が悪化してお金がなく、満足な治療が受けられず、働けなくなる」ということです。
「無選択型医療保険」に加入できるほどお金があれば、このリスクは避けられますし、「指定疾病負担保制度」ではこのリスクは避けられません。そのため、今回は「引受基準緩和型保険」に焦点を絞って説明をしていきます。
※そのほかに「団体定期保険(Bグループ)」や、住宅ローンを組む際に入る「団体信用生命保険(団信)」については、下記の記事をご参照ください。
引受基準緩和型保険とは
引受基準緩和型保険とは「加入の際の審査基準を下げた保険」と書きましたが、「審査基準がさがる」とはどういうことか?ちょっとイメージがわかないと思います。なので、実際にある引受緩和型保険の審査基準を抜粋してみました。下記をクリアしていれば、うつ病でも保険に入ることができます。
- 最近3ヶ月以内に受けた医師による検査または診察で、
入院または手術をすすめられたことはありますか?- 過去1年以内に、病気やケガで入院したこと、
または手術をうけたことがありますか?- 過去5年以内に、ガン(悪性新生物および上皮新生物)または
肝硬変で、入院したこと、または手術をうけたことがありますか?(メットライフ生命 終身保険(引受基準緩和型)より引用)
この3つにさえ引っかからなければ、うつ病でも生命保険に入ることができるんです。皆さん、うつ病でも健康体は維持しましょうね(笑)
引受基準緩和型保険(死亡保障)
加入の際の審査基準は分かりました。あとはいくらくらい高くなるのか?ですね。
これは実際に実験台がいれば一番分かりやすいです。そのため私自信が保険の相談窓口へ行って、自分が保険に加入した場合の保険料ををファイナンシャル・プランナーに試算してもらいました。
まず死亡した時に保険金が支払われる死亡保険、死んだ時に200万円の保険金がもらえるもので試算してもらいました。
- うつ病の場合:月々8,206円
- 普通の人の場合:月々7,744円
確かに割高ではありますが、うつ病で加入できることを考えれば、充分許容範囲内だと思います。実際にはもう少しこまごました制約があるので、参考までに記載しておきます。
まず今回試算の対象にした保険の詳細です。
種類:終身保険(引受基準緩和型)
保険期間:終身
払込期間:60歳
保険金:200万円
保険料:8,206円/月
簡単に説明します。
死んだら保険金がもらえる生命保険です。死んだら200万円もらえます。保険料は60歳ですべて払い終わる契約にしました。払い終わっても保証(死んだら200万円)は一生続きます。そして保険料は月々8,206円です。
先に健康は人が同じ条件で加入した場合は月々7,744円と書きましたが、さらにいろいろな保障が上乗せされるそうです。
あと、「引受基準緩和型」で気をつけなければならないことがいくつかあるので挙げておきます。
生命保険に加入して1年間の間は、もらえる保険金が半分になります。先の私の試算を例にすると、加入後1年以内に死亡した場合は、100万円の保険金しかもらえない、2年以上経つと契約通りの200万円がもらえる、という感じです。
また、生命保険では「高度障害」というものがあります。例えば両目失明や、両腕切断等の超重度の障害のことです。生命保険ではこの「高度障害」は通常「死亡」と同等の状態とみなされ、死亡した時にもらえる保険金をもらうことができます。ところが「引受基準緩和型」では残念ながら「高度障害」になっても保険金は支払われないことになっています。
あとは、貯蓄率ですね。
保険には大きく2種類あります。
「貯蓄型」と「掛け捨て型」
「貯蓄型」は月々保険料を支払っていくと、その一部が文字通り貯蓄されていきます。なので、例えば途中で解約した場合、お金が戻ってくる、なんてことがあります。一方の「掛け捨て型」は貯蓄されることはありません。支払った保険料は全て保険金の保証に充当されます。
で、今回例に挙げた保険は「貯蓄型」の保険です。ただうつ病というリスクがあるため、通常の保険に比べると、貯蓄率、つまり溜まっていくお金が結構少ないです。
ほかにも細々した注意はあると思いますが、大体こんなところをクリア・納得すれば、うつ病でも生命保険に入ることができます。
引受基準緩和型保険(医療保障)
先の保険は「死亡保障」と言って、死んだ時に保険金がもらえる保険を例に説明をしました。
次は、「医療保険」について、少し詳しい説明をしていきたいと思います。医療保険とはその名の通り、病気やケガで入院・手術をした時に保険金がもらえる保険です。こちらも基本は「死亡保障」と同じ条件(割高な保険料・一定の健康基準)で加入することができます。
で、肝心な保険料ですが、入院・手術した時(含むうつ病)に日5,000円もらえるプランで試算してもらいました。
- うつ病の場合:月々9,481円
- 普通の人の場合:月々8,172円
こちらも充分許容範囲内ですね。なんといっても「うつ病で入院」した場合でもお金が支払われるんですから。実際にはもう少しこまごました制約があるので、参考までに記載しておきます。
まず今回試算の対象にした保険の詳細です。若干簡略化しております。
医療保険基本:保険金5,000円/日
手術特約:保険金5,000円/日
がん特約:保険金:50万円(一時金)
先進医療特約:保険金:所定の金額
保険料:9,481円/月
ちょっとややこしいですね。
まず入院すると1日5,000円保険金がもらえます。手術をするとさらに1日5,000円もらえます。がんになった場合、一時金で50万円もらえます。そのほか、保険証を持っていっても3割負担が適応されないような先進医療の治療を受けたときに、所定の保険金がもらえます。そして月々の保険料は9,481円です。
ちなみに、まったく同じ条件で健康な人が入る保険というのがないそうなので、先の「健康な人:月々8,172円」は条件が近いプランで計算してもらったものです。
こちらの医療保険の「引受基準緩和型」も、先の死亡保障同様、保険料以外にいくつか制限がありますので、挙げておきます。
まず、加入後1年間は、もらえる保険金が半分になります。これは先の死亡保障と同様です。
次に「保険料払込免除」がきかない、ということです。「保険料払込免除」とは、例えばがん保険に入っている人が、がんにかかった場合、それ以降のがん保険の保険料は払わなくてよい、という制度です。一般の医療保険であれば、保険料払込免除がついているのですが、うつ病で医療保険に入った場合は、この「保険料払込免除」がききません。
そうそう、先ほどうつ病の入院でもお金が支払われるといいましたが、2回3回と再発した場合も、一定の要件を満たせば(何ヶ月か間隔が空く必要あり)問題なく支給されるそうです。
その他のうつ病でも入れる保険(個人年金)
さて、このようにさまざまな条件・制約をクリアすればうつ病でも保険に入れますが、特にこのような条件をクリアしなくても入れる保険というものもあります。
「個人年金保険」というものですね。
すごーく簡単に言ってしまえば、銀行の定期預金のもっと預ける期間が長くて、利率がもう少しよいバージョンの貯金のようなものです。名前は一応「保険」となっておりますが、実情は「貯金」ですので、健康かうつ病かは関係ありません。
貯蓄できる余裕のある人であれば誰でも入れますし、健康でもお金に余裕がなければ普通は入らないと思います。
一応このような保険もあるということだけ、ご紹介しておきます。
ファイナンシャル・プランナー(FP)
さて、ここまでの説明を読んでいかがでしたでしょうか?
「有用なのは分かったけど、うつ病で保険に入るってすごく面倒だ」
そうなんです、保険ってとても面倒なんです。実は私、大手保険会社のグループ会社に勤めていたため、うつ病で入れる保険についてもある程度ご説明ができるんです。正直面倒で後回しにしたくなる気持ちはとてもよく分かります。ただ、ある程度保険に関わったことがある経験から一つ言えることがあります。それは、
保険を後回しにした人が、その後保険に入ることは絶対にない
「分かったから検討しておくよ」そう言って保険を保留にした人が、その後保険に入るために行動を起こすことはまずありません。
そしてもう一つ言えることがあります。
うつ病でも加入できる保険がずっとあるとは限らない
保険商品というものは「売れなければなくなるもの」です。景気の動向によってなくなったり、うつ病の場合の保険料がものすごく高くなることは可能性として充分ありえます。
保険の大原則として「加入した時の条件は変わらない」というものがあります。いくら不景気になっても加入した時の保険料が安ければ、その保険料が値上がりすることはありません。また景気の動向によって、加入していた保険から追い出されるということもありません。
つまり、入っておける時に入っておけば安心。逆に入っておける時に入っておかないと、のちのち入れなくなる、もしくは入るために多額の保険料が必要になったり、すごく厳しい審査をクリアしなければならないということが実際に起こりうるんです。。
大事なことだからもう一度言います。
保険を後回しにした人が、その後保険に入ることは絶対にない
うつ病というリスクをすでに背負っているのであれば、なおさら後回しにしないでくささいい。「お金もない、働くこともできない」そんな致命的な状況になってから後悔しないでください。
うつ病でも加入できる保険はあります。ただ、必ず加入できるものではありません。うつ病というリスクを背負った時点で、私たちは、「保険会社から選ばれる立場」にあるんです。決して「保険を選ぶ立場ではありません」
そんな立場の人たちを無料で助けてくれる保険のプロがいます。「ファイナンシャル・プランナー(FP)」と呼ばれる人たちです。全てのFPがうつ病の保険加入を助けてくれるかどうかは分かりません。「相談を断られる場合」もあります。
以下にできるだけ多くのFP紹介窓口を記載しておきます。まずはそこから「うつ病の保険加入を助けてくれるFP」を探してください。無料の相談申し込みフォームがありますので、その備考欄に
「うつ病で加入できる引受基準緩和型保険の相談をしたい」
と必ず書いてください。申し込みフォームを送信すること自体は無料、複数のFP紹介窓口に同様の内容を送信することも、まったく問題ありません。まずは自分の味方になってくれるFPを探してください。そうすれば面倒な手続きもなくなります。保険の検討を後回しにして、将来致命的なリスクを背負うこともなくなります。もちろん相談をしたあと、保険は不要だと判断すれば当然断ってよいですし、その後無理な勧誘を受けることもありません。FPとはそれら全てを承知で仕事をする国家資格を持ったプロです。
重ねて言います。うつ病で保険に加入していないということは、致命的なリスクになりえます。一方FP紹介窓口に相談を申し込むことのリスクは何もありません。できるだけ多くのFPをできるだけ早く味方につけておくことをお勧めします。
FP紹介(保険見直し)窓口
FPが自宅やcafeに無料できてくれます。女性の相談者の支持率がとても高いFP紹介窓口です。ファミリー・女性向けの窓口です。エリアは首都圏近郊のみ、独身男性の方はサービスを受けられない場合があります。
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まとめ
生命保険・医療保険というと、義理や人情で断りきれずに加入する。そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。一昔前の「保険勧誘のおばちゃん」ですね。今はそのような勧誘をする保険会社はありません。義理や人情できちんとした説明もせずに加入させたため、多くの保険トラブルが起こりました。
その後、登場したのがより専門的な知識を持ち、多くの保険会社とチャネルを持つ、中立的な立場の専門家、FPです。せっかくそのような専門家がいる時代なんです。うつ病で保険に加入するという複雑かつ専門的なことは信頼できるFPに任せましょう。
うつ病なのに保険の加入を後回しにすること、何度も言いますがそれが一番危険です。早い相談で損をすることは何もないことを忘れないでください。
追記1.ところで、一度うつ病になった人が治った場合、普通の保険には入れるのか?
5年間、病院にも行かず、薬も飲まず、経過観察もない。
以上の状態で、はじめて普通の保険に入れるようになるそうです。
追記2.うつ病ニなる前に入っていた保険は、うつ病になったら無効になるの?
そんなことはありません。保険とは加入時点での健康状態で契約が締結されます。その後うつ病になったからといって、無効になることはありません。
逆に言うと、必要な保険には健康なうちから入っておくべきだ、ということですね。
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