ミカン食べた雌はイヤ 交尾せず雄逃走
農研機構中央農業研究センターの研究チームが発表
果樹などの枝を食べて枯らす害虫「ゴマダラカミキリ」の雄は、ミカンの枝を食べた雌に対しては、交尾せずに逃げてしまうことが分かったと、農研機構中央農業研究センター(茨城県つくば市)の研究チームが発表した。雄がミカンの樹皮のにおいを嫌がるためで、チームは「ミカン以外の果樹園にミカンを植えて、カップルができないようにするなど防除法の開発につながる」としている。
ゴマダラカミキリは日本全国に分布する害虫で、果樹や街路樹など100種以上の植物の被害が報告されている。幹の中にいる幼虫には殺虫剤が届きにくく、成虫は広範囲を移動するため殺虫剤を使いにくいという。
チームによると、雌が特にミカンの枝を好むのに対し、雄は植物の種類による好き嫌いはない。チームは、黒いガラス玉を雌に見立て、餌を変えた雌の体表成分を塗って、雄の反応を観察した。
ヤナギを食べた雌の体表成分を塗ったガラス玉に対しては7割の雄が交尾行動をしたが、ミカン食の雌の体表成分を使ったら8割が逃げた。ミカン樹皮中のにおい物質「β−エレメン」をヤナギ食の雌の体表成分に混ぜてガラス玉に塗っても同じように逃げた。雌がミカンの枝を食べた際にβ−エレメンが体に付着し、このにおいを雄が嫌うと考えられるという。
同センターの辻井直主任研究員は「昆虫の中で、餌が違うだけで雄が雌を避ける例はきいたことがない」と話す。【大場あい】