家庭教師のブラックバイト是正を弁護士が解説

7月25日、家庭教師の大学生を不当な契約で働かせているのは「ブラックバイト」にあたるとして、愛知県内の弁護士や大学教授らが、家庭教師派遣会社に対し、是正を求めたことがニュースとなりました。
今回は、この件について少し解説をいたします。
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▼事件の概要

家庭教師の大学生を不当な契約で働かせているのは「ブラックバイト」にあたるとして、愛知県内の弁護士や大学教授らが25日、名古屋市内で会見し、同市の家庭教師派遣会社に対し、是正を求めたことを明らかにした。労働基準監督署にも是正を申し入れるという。
出典:中日新聞
▼「雇用契約」か「業務委託契約」か?

今回の是正申入れの件を理解するには、まず、雇用契約と業務委託契約の違いについて理解することが必要です。その際、大きく2つの視点で整理するのが良いでしょう。
①「雇用契約」であれば労働基準法等の法律が適用される
「雇用契約」における使用者(会社をイメージ)と労働者(従業員をイメージ)の間には、支配従属の関係(ざっくりというと命令されたら従わなければならないという関係)があります。
そうした使用者と労働者の間の力の差を是正するため、この国には、労働者保護の目的で設けられた労働基準法をはじめとする種々の法制度があります。
個々の法制度の内容についての説明は省略しますが、「『雇用契約』であれば、労働者保護を内容とする労働基準法等の法律が適用される」という点だけは覚えていただくと良いかと思います。
一方、支配従属の関係はなく、契約当事者が対等な関係であることを前提として、一方当事者に一定の仕事を頼む契約類型として、「業務委託契約(民法上の準委任契約とされます)」という契約があります。「業務委託契約」の場合、当事者間に是正を必要とする力の差がないため、労働基準法等の労働者保護の法律の適用はありません。
②「雇用契約」「業務委託契約」のいずれにあたるかは、契約の中身・実態によって決まる
上記のとおり、実際の契約が「雇用契約」か「業務委託契約」かのいずれにあたるのかは、当事者間に【支配従属関係があるのか】という点で判断されます。
そして、支配従属関係の有無は、個別の契約の中身・実態に基づいて決められます。その際に着目すべきポイントは、業務に対する時間的場所的拘束性、報告義務の有無、給与額の算定方法など様々で総合的に考慮されます。
ここでのポイントは、いくら契約書に「業務委託契約書」といった業務委託契約であることを謳う文言があったとしても、必ずしも「業務委託契約」になるということではないというところです。契約書の題名が「業務委託契約書」となっていても、契約の中身や実態から、当該契約は、契約当事者間に支配従属関係のある「雇用契約」だと判断されることも十分にあるのです。
▼今回の是正申し入れについて

今回、弁護士らが名古屋市内の家庭教師派遣会社に対して行った是正申入れは、契約の中身・実態をみれば「雇用契約」にあたるにもかかわらず、「業務委託契約」として扱うことで労働基準法違反行為をしていることに関し是正を求めたというものです。
今回は、特定の家庭教師派遣会社への是正申入れのようですが、家庭教師業界全体として上記運営方法を採用していることが予想されますので、業界全体へ影響があるのでないでしょうか。
日本の将来を背負って立つ学生が搾取のターゲットにされてしまっている現状の社会構造は当然に是正されるべきですし、学生から弁護士に相談することのハードルの高さからなのか、これまでなかなか具体化されることのなかった問題意識が、今回、こうした形で社会全体に伝わったという点で、とても意義のある第一歩だったのではないでしょうか。

弁護士 加藤耕輔
愛知県生まれ
2009年 名古屋大学法学部卒業
2012年 愛知大学法科大学院修了、司法試験合格、司法研修所入所(第66期)
2013年 弁護士登録
弁護士法人 愛知総合法律事務所 津島事務所所属
所在地:愛知県津島市西柳原町3丁目2番地 スカイ友1階
連絡先:0567-23-2377
http://www.aichisogo.or.jp/profile/katokosuke/