輝き人
2016.08.03
【トレジャーデータ】才能=ギフトを生かして世の中に還元するのが仕事だと思う。~輝き人 第29回~
トレジャーデータ株式会社 マーケティング担当ディレクター 堀内 健后 さん
プロフィール
1976年、東京生まれ。2001年、東京大学大学院工学系研究科修了後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント株式会社(現 日本アイ・ビー・エム株式会社)へ入社し、経営コンサルタント業に携わる。2006年、マネックス証券の親会社であるマネックスビーンズホールディングス(現 マネックスグループ株式会社)へ転職。2013年2月にトレジャーデータ株式会社へ入社し、ジェネラルマネージャーに就任。2014年7月、日本事業の拡大に伴い、マーケティングディレクターとなる。
事業内容
2011年、米国シリコンバレーにて創業。データの収集・分析・連携を目的とするクラウド型プライベートDMP“TREASURE DMP”の開発および販売、ならびに導入に関するコンサルティングを行う。
よその会社に首を突っ込んでわかったのは、どの会社にも良い面と悪い面があるということ。
●大学院を修了されたあと、研究職に進まず経営コンサルタント会社へ入社されたのはなぜですか?
半導体の研究をしていたので、当初はメーカーの研究職などの進路を希望していました。しかし、就職を前に「この先ずっと半導体の分野に興味をもち続けられるのだろうか」と自問した結果、違うかも、という結論に。……じゃあ、ほかの分野の研究職はどうかな?とも考えましたが、未経験分野で採用してくれる企業はないんですよ。そのとき思ったのが、研究職ってキャリアパスを自由に描けない世界だな、ということ。道が決められてしまっているのは面白くない、そのようなことを「変えていける」仕事ってなんだろう、と考えて思い浮かんだのが、コンサルティング会社でした。
●経営コンサルティング会社での仕事を通して、どのようなことを学びましたか?
プロジェクトを通してさまざまな会社の姿を見ることができたので、「企業」や「ビジネス」を包括的に理解することができました。これは、今思うと、すごく大きな収穫でした。
僕は、キャリア形成を考える上で“視野を広くもつ”ということが、すごく重要だと思っています。世の中にどのような仕事があって、どのように利益を生み出しているのかがわからないまま、「キャリア」を考えるのは難しいですよね。でも、そうは言っても普通は自分が働いている会社しか知ることができなくて、よその会社のことは“働いてみないと実際のところはわかんないよね”というのが現実です。その点、コンサルの仕事は、よその会社の裏側まで覗けるのがメリット。おかげで、ずいぶん視野を広げてもらえました。多くの会社を見てわかったことは、どこの会社にも良い面と悪い面があるということ。一長一短なので、「隣の芝生は青い」みたいな幻想を抱かなくて済むようになりました。
●その後、マネックス証券へ移られたきっかけは?
経営コンサルタントは、お客様の課題を解決して、これから上昇していくぞ、というタイミングでお別れする仕事です。ビジネスの中で一番楽しいはずの「成功する」という局面を見ることができません。それを見てみたい、と思ったのが事業会社への転職を考えたきっかけです。
●20代のキャリアを振り返って、失敗したな、と思うことはありますか?
本当は海外勤務をしたかったんです。そういう意味では、最初に入った会社が外資系だったのは失敗。外資系企業は海外から日本へ攻めてきている側なので、自分が海外へ出るチャンスはほぼありません。若いうちに海外で仕事の経験を積んだ方が絶対いいですよ。海外には30~40代でバリバリに会社を経営する“経営のプロ”みたいな人がたくさんいるけど、日本ではまだ経営者といえば60~70代がメイン。その年齢になって「グローバルで戦え」といわれても体力も気力も追いつかないと思うんですよね。
もうひとつの失敗は、転職せずにそれぞれの会社でもう少し頑張ってみてもよかったかな、ということ。近年特に世の中の動きが早いので、辞めた後に情勢の変化が訪れ、あれ?今なら海外に行けたのかも!?…なんてことが起きています。
唯一のトップである必要はない。複数のスキルを掛け合わせて勝負する方法がある。
●トレジャーデータ日本支社の立上げに参画することとなった経緯についてお聞かせください。
マネックス時代に、トレジャーデータのユーザーだった縁から、日本支社立上げの話を聞き、「僕、どうですか?」と手を挙げました。世界的に有名な企業がいくつも生まれている、あのシリコンバレーで、自分より若い日本人が創業したなんて面白い会社に違いないと思ったのです。お客様に提案する立場と、提案を受けたものを採用して使う立場の両方を経験済みだったので、自分ならITのベンダーとして役に立てるかもしれない、と思いました。
現在は、マーケティングディレクターとして、見込み客を探す業務を担っています。ウェブサイトや広告、展示会、セミナーなどを通して製品をPRし、反応があったところを吸い上げ、「見込み客」と呼べる段階まで育てた上で、営業へ渡すのが仕事です。
●これまでの社会人人生で壁に当たったことはありますか?
たくさんありますよ。そもそも大学院時代に大きな壁に当たりました。指導教官と1年先輩に天賦の才能の持ち主がいたのです。研究の世界で、ゼロから1を生み出せるタイプの人たちでした。その人たちを見ていると、どう考えても、自分はその人たちとは違うな、と悟らざるを得なかった。だったら、違う土俵へ行くほうがいいだろう、と感じたのが、研究職に進まなかった一因でもあります。
僕は、1を10にしたり、10を100にしたりすることならできるタイプ。「発明」はできないけれど「変革」ならできます。一方、当社の創業者たちは、大学院で壁となった人たちと同様、ゼロから1を生み出せるタイプ。でも、世の中はうまくできていて、そのタイプの人たちだけでビジネスが成立するかというと、そうではありません。製品を正しく表現して広告をつくる、正しく説明して売る、といった“生み出したものを世の中に広めて利益を上げるまでの過程”の中に、僕が果たせる「役割」があるのです。
●そう思えるようになったのは、なぜですか?
知人の助言がきっかけです。「唯一のトップである必要はない。たとえば、一番仕事ができる会計士じゃなかったとしても、○○ができる会計士、○○も△△もできる会計士、という勝負の仕方がある」と聞いて、なるほど、と。自分のキャリア構築における大きなヒントとなりました。だから今、「ビジネスとテクノロジーを結び付ける仕事」に就くことができているのだと思います。
やりたいこと・やれること・やってほしいこと。3つの折り合いの付け方を重視する。
●仕事や会社選びに迷いが生じている20代転職希望者へのメッセージをお願いします。
やりたいこと・やれること・やってもらいたいこと。この3つが全部揃う仕事を見つけられる人は、まれです。会社から見れば、後者の2つの一致度合いが重要。そこに1つめも合致する確率は残念ながらとても低い。それを知った上で、3つのバランスを自分なりに調えていく意識をもてば、少しは良い状態へもっていけるのではないでしょうか。
若いうちは取り返しがききやすいから、迷うんだったら転職してもよいような気がします。ただし、同業他社への転職はすすめません。それなら、すでに人脈があり、仕事の進め方もわかる今の会社でやるほうがいいと思いますよ。
●仕事をする上で心がけていることやモットーがあれば教えてください。
意識しているのは「今までやったことのないことをやる」ということ。出世や昇進をねらう場合は、再現性や習熟度の方が重要なのでおすすめしませんが、僕の場合は「給料が2倍になりますよ」と言われても、一度やったことと同様のことはやりたくありません。
僕が今、現在の仕事で描いているビジョンは、シンガポールなどへ行って、アジア展開をすること。そのような「新しく広げていくこと」のほうが好きなのです。
前へ進んでいくために心がけているのは「決めること」。仕事をしていると、常に大小問わずさまざまな選択を迫られます。中には、決められない、もしくは決めにくいこともありますが、保留にせず、決めるには何が必要?誰と話せばヒントをもらえそう?と「決めるための行動」をするよう意識しています。
●堀内さんにとって「仕事」とは何ですか?
「自分の価値を発揮するところ」ですね。才能=ギフトを生かして世の中に還元する場所だと思っています。自分の才能に自信があるとかないとかじゃなく「ギフトを得たのだから、それを次の世代に渡す責任がある」ということ。人は皆ギフトを持っているので、まず自分のギフトは何であるかを探す意識が必要です。ネイティブ・アメリカンの教えで「土地は先祖からの授かりものではなく、子供たちからの預かりもの」と、よく聞きますよね。次の世代から預かっているものだから、きれいな形で渡しましょう。その感覚に近いですね。
一見、高尚なことを言っているように聞こえてしまうかもしれませんが、要するに「自分を生かせる場所は必ずあります」という意味です。仕事はバラエティに富んでいるので、100m走で勝負しましょう、9秒台で走らないと勝者になれません、みたいな話とは違いますよね。誰もがギフトを生かせるステージが「仕事」なのだと思っています。
著者情報
- 生駒 奈穂子
- 新潟大学卒業後、電子部品メーカーの営業部門、化粧品通信販売会社の販売企画部門、フリーランスのパーソナルコーチを経て、ライター業へ。美容・健康・カルチャー・ファッション・インタビューなど多分野の記事を執筆。現在は、企業や大学の各PR媒体を中心に活動中。好きなものは猫、お笑い、ラーメン、ビール。