蔡英文総統、先住民に謝罪
【台北・鈴木玲子】台湾の蔡英文総統は台湾の「先住民族の日」の1日、総統府に各先住民族の代表を招き、日本統治時代(1895〜1945年)を含め400年にわたって外来政権が続いた台湾で、「先住民族は苦痛や不公平な待遇を受けてきた。政府を代表して謝罪する」と述べた。総統が先住民族に公式に謝罪するのは台湾史上、初めて。
5月に発足した蔡政権は、過去の政権による人権侵害の真相究明の他、被害者の名誉回復や補償を行い、社会正義を実現していく「移行期の正義」の実現を掲げる。蔡氏は1日の演説で「歴史を正視し、真相を明らかにすべきだ。最も重要なのは、政府が過去について真摯(しんし)に反省しなければならないということだ」と強調。さらに「謝罪は全ての人々を和解に向かわせる始まり」と主張した。
台湾は14世紀ごろから漢族の移住が進み、17世紀以降はオランダやスペインに支配され、漢族の鄭成功、清朝が統治。蔡氏は、先住民族が400年来、武力制圧され、土地を収奪されるなどの「権利侵害」を受け、日本統治時代の同化政策や中国から台湾に渡った国民党政権の政策で言語が失われたことも指摘した。
初の台湾出身者だった国民党の李登輝政権が94年8月1日、憲法を修正し、差別的な意味合いを持つ「山地同胞」の呼称を「先住民」に改めた。民進党の陳水扁政権時代の2005年、この日を「先住民族の日」に制定。政府が認定した先住民族は16あり、約55万人で全人口の2%。
蔡氏は1日、先住民の地位向上や共存を目指す専門の委員会を総統府に設置させると表明。「先住民族自治法」など関連の法整備を図り、先住民族として認定されてこなかった「平埔族」の身分保障も進めるとしている。