元医院経営者の知人「現職の刑事を接待」
大阪市浪速区の歯科医院(閉鎖)を巡る診療報酬の不正受給事件で、詐欺容疑で再逮捕された元医院経営の賀川幸一郎容疑者(45)の知人の男(40)=同容疑で逮捕後に釈放=が、事件化されないようにするため「現職の刑事を接待した」と大阪府警に供述していたことが1日、捜査関係者への取材で分かった。男の自宅から刑事の名刺が押収されたほか、賀川容疑者も取り調べで接待費を男に渡したことを認めており、府警は事実確認を急いでいる。
賀川容疑者が運営していた賀川歯科医院難波診療室は、数年前から経営難に陥った。その後、詐欺事件の指示役とみられる府警OBの元巡査部長、今野作治容疑者(56)=詐欺容疑で逮捕=の知人で、整骨院経営の平井雄大容疑者(34)=同=が不正請求に使う健康保険証を持ち込むようになった。しかし、保険証の扱いを巡って賀川容疑者と今野容疑者側がトラブルになり、府警捜査1課のOBで元警部補の小川光正容疑者(68)=同=が代表を務めるNPO法人「警愛会」が仲裁に入った。
この警愛会のメンバーでもある知人の男によると、同じメンバーの宮崎等容疑者(67)=同=がトラブルの解決金を賀川容疑者に要求。事件にならないよう警察に働きかけたり、不正受給が報道機関に発覚しないよう対処したりする対策費も求めた。
賀川容疑者によると、自分のクレジットカードを知人の男に預けると、宮崎容疑者と男らは大阪ミナミの高級クラブやキャバクラ、すし店などでカードを利用。1日で50万円以上を使った日もあったが、宮崎容疑者と男が大半を個人的に使ったという。賀川容疑者は毎日新聞の取材に「警察やマスコミの対策費として1900万円ほど(男に)支払ったが、ほとんど対策はとられなかった」と証言した。
ただ、男は小川容疑者や現職の刑事2人とも会食したことがあると取材で明かし、「食事代や2次会のスナックなどの代金は理事長(賀川容疑者)のお金で負担した」とも話した。
一方、賀川容疑者はこうした対策費とは別に、患者の紹介料など不正受給に関わる「経費」を今野容疑者側に男を通じて支払っていたという。男の口座には対策費も含めて少なくとも現金計約3800万円が振り込まれていた。カードの利用分も含めて数千万円が提供されており、府警はこうした資金の使途についても調べる。
宮崎容疑者は「警察官やマスコミと飲んだことはあるが、(賀川容疑者に)対策費を要求したことはない」と取材に話した。小川容疑者は「知らない間に警愛会の代表にされていた。(宮崎容疑者や男らと)一緒に飲んだことはあるが、彼らが何をしていたのかは知らない」と語った。【山田毅、宮本翔平】