笑いで政敵を倒す。米大統領が残した歴史的&超1級品ジョーク集
アメリカの大統領といえば、政治の手腕だけでなく、ときにジョークのセンスにも注目が集まることがあります。そんなアメリカの歴代大統領たちが放った珠玉のジョークをいくつか紹介していきましょう。
元俳優の大統領は、暗殺未遂事件も笑いに変える!
第40代大統領のロナルド・レーガンは、元ハリウッド俳優なこともあり、ジョークで場の雰囲気をコントロールするのに優れた人物でした。
1981年、ワシントンD.C.。そこで起こった大統領暗殺未遂事件により、レーガン大統領は銃弾を受け倒れます。
命に別状はないものの病院に運ばれ、銃弾摘出手術を行うことに。手術前、「大統領から銃弾を摘出する」という大役を任された医師たちの緊張をほぐすため、気を利かせたレーガン大統領はこう言いました。
「君たちが、共和党員ならいいのだが…」
これに対し、実は全員ライバルの民主党員だった医師たちも、「今日だけは、我々全員共和党員です」とジョークで応戦。大統領のジョークをきっかけに、手術室の張り詰めた空気は和らいだのです。
そして手術後、お見舞いに来た奥さんに対しては、こう言いました。
「ハニー。僕は(弾を)避けるのを忘れてしまったよ…」
このフレーズは、ボクサーのジャック・デンプシーが敗戦した際、「何が起こったの?」と尋ねた彼の妻に対して言った有名な一節を引用している一言。ジョークで返答する余裕を見せ、奥さんの不安を解消しました。
さらに、退院後に行われた演説では、運悪く大統領の脇にあった風船が破裂。「悪夢の再来か!?」と会場の空気が凍りつくと…
「ヤツめ! また、しくじったな」
と、先の暗殺未遂事件を自らジョークにして笑いを誘い、会場を支配していたイヤなムードを吹き飛ばしました。
自虐ジョークで形勢逆転!
「奴隷解放の父」として知られ、「人民の人民による人民のための政治」という歴史の教科書に載るほどの名言でも有名な16代大統領、エイブラハム・リンカーン。
前述の名言などのイメージからとても真面目そうな印象のあるリンカーン大統領も、実はジョークが得意だったようです。
当時、大統領の座を争っていたライバルのスティーブン・ダグラスと行われた公開討論会。そこで「ふたつの顔を持つ二重人格者め!」と非難されたリンカーンは、この発言に対して次のように切り返します。
「私がふたつの顔を持っていたら、いまの顔を選んでいると思うのかい?」
負ければ大統領への座が遠のく大一番で迎えたピンチ。そこでリンカーンは、決してハンサムとは言い難い自身のルックスを自虐的なジョークにして反論したのです。
これには、聴衆も大爆笑。この機転を利かせたジョークにより難局を乗り切ったリンカーンは、その後大統領に就任します。
自らネタにしていた“ハンサムではない顔”は、いまや5ドル札に印刷され、アメリカのみならず世界中の人の知る顔となりました。
ジョークで批判を返り討ちに!
最後に紹介するのは、現職のオバマ大統領。2011年、ドナルド・トランプ氏に放ったジョークです。
度重なる過激な発言に注目が集まるトランプ氏は、「オバマの出生地はケニア。だから彼はアメリカの大統領になるにはふさわしくない」という、オバマ大統領の出生地を揶揄する言いがかりをつけたことで話題となりました。
これに対しオバマ陣営が、ハワイ生まれであることを証明する出生証明を公開するなど異例の措置をとる事態に発展。
そして、この騒動後に行われたトランプ氏も出席する記者晩餐会のスピーチにて、オバマ大統領はこの件に関してお得意のジョークで反撃します。
まず、「すでに皆さんはご存知だと思いますが、ハワイ州が私の出生証明書を公開してくれました」と切り出すオバマ大統領。
続けて、「これで疑いが晴れるといいのですが…。まだこの問題が続くかもしれないので、今日はさらなる証拠を用意しました」という前置きを挟み、「では、私の出生時のビデオを用意したので見てもらいましょう」と言います。
この言葉の後に会場に映し出されたのは、なんとアフリカが舞台の映画、『ライオンキング』!
生まれたてのライオンのシンバが天に高く掲げられる有名なワンシーンを、出生時のビデオとして流す。そんな超ド級のジョークによる反撃に、会場に詰めかけた人たちは大爆笑。
※オバマ大統領の記者晩餐会のスピーチ
他の客たちが大笑いしているなか、トランプ氏だけがどこか居心地の悪そうな表情で黙り込んでいますね…。こうしてトランプ氏に赤っ恥をかかせることに成功し、この勝負はオバマ大統領に軍配が上がりゲームセットとなりました。
言いがかりに対してストレートにただ言い返すのではなく、軽妙なジョークでひらりとかわす。オバマ大統領のスマートさに脱帽ですね。
さすがエンタメ大国アメリカのリーダーたち、といったところでしょうか。
(文/米野国好)
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