名誉毀損で発行元に賠償命令
2014年に死去した歌手でタレントのやしきたかじん(本名・家鋪隆仁)さんを描いた書籍で名誉を傷つけられたとして、長女が発行元の幻冬舎に1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、同社に330万円の支払いを命じた。松村徹裁判長は一部記述について「真実と認められない内容を、長女に取材したり承諾を得たりせずに公表した」と指摘、名誉毀損(きそん)とプライバシー侵害を認めた。
松村裁判長は販売中止の請求は退けたものの、「同じ状態で(新たに)発行、販売することが不法行為と判断される可能性を否定するものではない」として、幻冬舎に内容変更を促すとも受け取れる異例の指摘をした。
書籍は作家の百田尚樹氏の「殉愛」で、計30万部が発行された。判決は、長女の追悼会での振る舞いや、父とのメールのやり取りの記述について「真実と認められず、長女の社会的評価を低下させる」と認定した。
長女の弁護士は「幻冬舎は自主的に発行をやめ、回収するよう強く求める」。幻冬舎は「多くの点で主張を認められたが、一部認められず遺憾」とコメントした。【伊藤直孝】