熱中症で没収試合続く高校野球 高野連は「自助努力」、中止基準決めた競技も

防ぎようはないのか。

1. 全国で熱戦が続く夏の高校野球、地方大会。7月14〜17日にかけて、選手の熱中症による「没収試合」が相次いだ。

昨年、高校野球の試合で満席となった阪神甲子園球場=時事通信

没収試合は野球ルールのひとつ。試合に出られる選手が9人未満になった場合、「9-0」で負けるというものだ。「公認野球規則」で決められている。

2. 没収試合があったのは、千葉と佐賀、和歌山大会の3試合。いずれも元から選手が9人しかいないチームで、一人でも倒れた時点で試合が終わってしまうケースだった。

・14日 千葉県大会
翔凜-行徳の試合では2回、守備についていた行徳の選手が倒れ、けいれんを起こしたため、病院に救急搬送。

・15日 佐賀県大会
鹿島実-太良の試合では、4回、太良の1年生選手が熱中症となり、病院に搬送。

・17日 和歌山県大会
統廃合のため今年度で閉校となる伊都と耐久の試合では、5回、伊都の3年生遊撃手が熱中症で倒れ、治療。

3. これだけ続く熱中症、防ぎようはないのか。BuzzFeed Newsは、日本高校野球連盟に取材した。

ーーこれだけ熱中症による没収試合が続くことはあるんですか?
「今年の場合、梅雨時に雨が降って急に暑くなったことに原因があるのかなと思います。(熱中症による没収試合は)毎年いくつかありますが、このように続くと心配です」

ーー何か対策は取っていたんですか?
「いずれの試合も選手が9人でした。一人でも欠けて没収試合にならないよう、各県の本部も試合前から気にして、水分補給など熱中症の防止策について、各校の部長、監督に指示をしたと聞いています」

4. 根本的な対策はあるのか。担当者は「地方大会では自助努力するしかない」とも言う。

全国大会の開かれる阪神甲子園球場では、ベンチにドリンクが備え付けられ、エアコンやスポットクーラーなどの空冷設備もある。ベンチ上の庇も前に出し、影をつくる工夫もしているという。

しかし、地方大会はどうか。

「なかなか球場の施設が整わないのが現状です。理学療法士を常駐させ、小まめな水分補給の声かけをし、何かあったときにすぐ対処するしか対策がない」

たとえば気温の上限を設けるなど、酷暑の中でやらないという選択肢はないのか。それを問うと、担当者はこう答えた。

「それではこの時期の高校スポーツはできなくなってしまう。高校総体(インターハイ)なども同じです。この中でやる以上、できるだけ熱中症がないよう、予防を考えていくくらいしか、なかなか手はありません」

5. たしかに、高校野球だけではない。暑い夏、スポーツ大会は各地で実施されている。

昨年のインターハイ開会式=時事通信

サッカーや陸上、自転車などの屋外競技が多いインターハイはどうだろう。

主催する全国高体連の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に「開催基準要項でこの時期に開くことが決まっているため、熱中症が予想されるという前提で対策を取っています」と答えた。

高体連からは、熱中症の症状や対策を記したパンフレットなどを配布し、実際の対応は各地の実行委員会が取る。それぞれの競技団体の指導も受け、小まめな水分補給の実施、体を冷やすためにミストシャワーを使うなどの対策をしているという。

担当者は「気温が高い近年、大きな事故になったことはない。対策が取られているためだと考えています」と語った。

6. 一方で、熱中症対策のため、明確な中止基準を設けた組織もある。

JFA / Via jfa.jp

高校生年代向けのサッカーリーグ「プレミアリーグ」を主催する日本サッカー協会(JFA)では、今年3月に「熱中症ガイドライン」を設けた。

ガイドラインは、熱中症の危険性がある場合、試合を中止するようにとまで踏み込んだ内容になっている。

環境省が公表している「暑さ指数(WBGT)」がその判断基準。湿度や気温をもとに熱中症のなりやすさを示す値で、31℃以上は「運動は原則中止」、28℃以上は「激しい運動は中止」とされている。

この過去値を基準にスケジュールを組むように促し、当日や試合中も、危険とされる値が出た場合は中止または延期するように指示している。場合によっては水分摂取や着替え、氷で体を冷やすための「Cooling Break」を設けるなど、内容は事細か。FAQもつくる徹底ぶりだ。

JFAはガイドライン設置の理由について、「年々夏季の暑さが厳しくなっている昨今の状況を考慮し、選手や審判が安心して安全にプレーできる環境を整えるために定めた」としている。

主催する大会の場合、「高校生であるかどうかに関わらず、ガイドラインに準じる」(担当者)といい、この夏もすでに、試合時間や会場の変更措置が取られている。

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