2016年7月9日,10日に京都で行われたインディーゲームの祭典「BitSummit 4th」。海外からも多数クリエイターがやってくる盛り上がりぶりから、いまインディーゲームのシーンで何が起こっているのか、そしてどういう理由でいま注目されているのかを調査してきました。
こんにちは、山口です。前回の立命館大学に引き続き、また京都に来ております。いったい何が目的なのかと言うと……。
これ!みやこめっせで行われる日本最大のインディーゲームの祭典「BitSummit 4th」に参加するためです!
なんでも、海外からも多数のクリエイターが参加するという事で、世界からも注目されているとのこと……このオクトピでゲーム系の記事ばっかりやっているぼくとしては、無視できないイベントだったというわけです。
ゲームアーカイブ・プロジェクトのメンバーであり、バーグハンバーグバーグのインターンである神田(こうだ)くんも一緒です。彼がこのイベントの存在を教えてくれました。ぼくより詳しい。
これがインディーゲームの「現在」だ!
- 山口むつお
- うおおおお……。
- 神田
- おおおお……。
- 山口むつお
- めちゃめちゃ人おるな!!!
- 神田
- 盛り上がってますね……!
会場ではデジタルのライブペイントや……
ゲームに関するTシャツなどの物販もあったり、
ファミコン元気玉でお馴染みのサカモト教授によるライブイベントも!
- 山口むつお
- 神田くん、あそこ見て!任天堂のブース出とるやんけ!
- 神田
- そうなんですよ。今回とうとう任天堂が出展するということで話題になったんです。
- 山口むつお
- あの大御所が……。なんかでっかい時代の動きを感じるな……。
- 山口むつお
- お、VRだ!最近ゲームに関する話題って、しょっちゅうVRに関するもののような気がする。
- 神田
- 今年はPlayStation®VRの発売も決まって、とうとう家庭でVRが体験できる時代になりましたもんね。
ちなみにこちらのQ-GAMESさんが作ったVRゲーム「Dead Hungry」ですが、ハンバーガーを効率よく作って店に近づいてくるゾンビに投げまくるというゲームです。
- 山口むつお
- フフフ……。
- 神田
- 設定が斬新すぎる。
- 山口むつお
- うちの会社でもVR買うってヤツ、何人かいるもんなぁ。今年はVR元年って事なのかな。こりゃいっぺんプレイしとかないと、これからのゲームは語れんかもね!
という事で、早速ぼくもVRを体験させてもらいました。体験するのはこれが初!
体験させてもらったのはリズム・バイオレンスゲームの「Thumper」。リズム要素を持ったゲーム。360度広がる亜空間のような世界とヘッドホンによる音の洪水が流れこんでくる〜!
- 山口むつお
- ああ〜〜〜!!!すごい!!!読者には全く伝わってないだろうけどすごい〜〜〜〜!!!
- 山口むつお
- やっべぇわ……!でもこれ、文字ではすごさ伝わらんと思うわ……。
他にも、ブラウン管に接続された、モロに旧ファミコンの空気感&難易度を継承したPYGMY SYUDIOさんの「BOKOSUKA WARS 2」が展示されていたり……。
ニンテンドー3DSとWii Uで発売された「ショベルナイト」が2人協力プレイできたり……。
なんと、PS4だ何だというこの時代に、ファミコンにぶっ刺してプレイする「KIRA KIRA STAR NIGHT DX」があったり。
そしてこちらは、海外生まれのRPG「YIIK: A Postmodern RPG」。製作者は日本のRPGに影響を受け、Mother2のような世界観を持ったゲームに仕上がったそう。テキストを日本語に訳して、ダウンロードコンテンツとしてもうすぐ発売になるらしい。
動画を見てもらえればわかるんですけど、タイミング合わせてボタンを押してコンボをつなぐような、かなり特徴的な戦闘システムを取り入れてたりする、攻めたRPGです。
- 山口むつお
- お姉さん……このゲームめちゃめちゃ完成度高いですけど、本当にインディーゲームなんですか……?
- お姉さん
- そうですね、まだ大きな会社ではないですし、形としてはインディーゲームになると思います。
- 山口むつお
- むむむ……なんだかインディーゲームの定義がわからんくなってきたぞ……!
ゲームクリエイターが考える「インディーゲーム」の定義とは
- 山口むつお
- 神田くん。
- 神田
- はい。
- 山口むつお
- インディーゲームの定義って、よくわからんくない?
- 神田
- ちょうど僕もわからなくなっていたところです。
- 山口むつお
- ぼかぁ、てっきりアマチュアとプロの間くらいのゲーム……くらいに漠然と思ってたんだけども。大手のゲーム会社と遜色のない出来のものもあるし、どうやら違うっぽいよね。ここにはゲームクリエイターの人がいっぱいいるし、せっかくだから聞いてみよう。
そういうわけで、インディーゲームをどのように定義しているのか……今回イベントに参加しているゲームクリエイターの方たちに聞き込みを開始!
まず、最初に伺ったのはOnion Gamesさん。
人気スマホゲーム「勇者ヤマダくん」を制作されている会社です。
なんと、その場にいたOnion Games代表の木村祥朗さんが答えてくれました!木村さんってぇアレだろ…?あのプレステの名作「Moon」を手がけた……!
- 山口むつお
- 突然なのにお話を聞いていただいてありがとうございます。木村さんにとってインディーゲームってどういう定義ですか?
- 木村さん
- うーん、そうだなあ……「自分が作りたいと思ったゲーム」を作れているかどうかかな!ゲームって大きい市場で出そうと思うと、どうしてもいろんな制限がかかってくるんですよね。開発資金を出してくれてる人だったり、発売するプラットフォーム自体だったりね。そういった色んな制限が加わって、メジャーなゲームは発売されるんですよ。
- 山口むつお
- 話が大きいほど関わる人が多くなって好きな事ができなくなる……という話は、ゲーム業界に限らずありそうなお話ですね。
- 木村さん
- そうなると「自分が作りたいと思ったゲーム」を100%作れる環境って、自然と会社の規模が小さかったり、自分たちの少ない資金で作っている状態という事になりますね。あ、でもたま〜に「何でもやっていいよ!」っていう優しい協力者がいて、自由に作れる場合もありますよ。
「勇者ヤマダくん」はDMMゲームスさんと一緒に作ったものですが、ほとんど制約なく作れた幸せなプロジェクトだそう。
- 木村さん
- あと余談なのですが、今日出展している「BLACK BIRD」なんですけど……作ったはいいものの、まだ何のプラットフォームで出すか決めてないんですよね。
- 山口むつお
- えー!ウソでしょ?!
- 木村さん
- PCで出す、という事だけしか!なので、次回このゲームが再度みなさんの前にお目見えするのは、もうしばらく先になると思います。
- 山口むつお
- 普通、先にどこで出すか決めません?!そんな感じで大丈夫なんですか?!
- 木村さん
- 先に作りたいものを作って、後から出せるところで出す……まさにインディーズって感じですよね!どこか出資してくれる人が現れるか、Steam(ゲーム配信プラットフォーム)で出しちゃうか……。そのへんは音楽のインディーズのレーベルと同じような感覚かなと思います。
- 山口むつお
- いや〜……そんなロックな感じだとは思いませんでした……お話ありがとうございます!
そんな新作「BLACK BIRD」を実際にプレイ!木村さんによると「プレイヤーは自然災害的な存在で、敵はそれに巻き込まれる人類、みたいな」とのこと。倒れた女の子が卵になり、その中から黒い鳥が殻を破って現れるというオープニングからゲームがスタートします。
- 山口むつお
- 街がちょっと壊れてたり、ゴシック調の音楽だったりするんだけど、さっき聞いた木村さんの「敵はそれに巻き込まれる人類」って事を合わせると……なんか鳥肌経ってきたわ。世界観やら演出やらの絡み合い方がヤバすぎ。
- 神田
- このゲーム、出るのまだ先なのか〜。
- 山口むつお
- いや〜!マジで今日これプレイできてよかったわ!WEBサイトも……
- 山口むつお
- まだ何の情報も載せてないしね!こりゃBitSummitに来れた人、得してるわ……。
次にお話を伺ったのは、BIT-BAD COMPANYさん。
代表の高橋優さんは、大学時代からゲームのプログラミングを勉強して、BIT-BAD COMPANYを起ち上げたのだそう。
- 高橋さん
- 大学3回生の時に就職活動をしていたんですけど、なかなかうまくいかなくて。そういう時って自分のやりたい事をじっくり考えたりするじゃないですか。そんな時、あ、オレそういえばゲームが好きだったって事を思い出したんですよ。
- 山口むつお
- なるほど、それでBIT-BAD COMPANYを起ち上げたと。
- 高橋さん
- いえ、違います!
- 山口むつお
- !!
- 高橋さん
- それがきっかけで「ゲーム業界の面接を受けよう」と思ったんです。とあるゲーム会社を受けようと思ったら、ゲームの企画書が必要だという事になりまして。大学の先輩にアドバイスをもらったりしながら企画書を作ったんですよ。
- 山口むつお
- 面接のところから企画書が必要なのか……。
- 高橋さん
- 残念ながら面接では落ちちゃったんですが、その時の企画書作りがめちゃくちゃ楽しくて忘れられなかったんです。自分でイチからゲームを作りたいって気持ちが出てきたんです。それで独学でプログラミングを勉強して、BIT-BAD COMPANYを起ちあげました。企画書作りを手伝ってくれた先輩もメンバーなんですよ。
- 山口むつお
- 話、転がったな〜!そこからプログラマーになったっていうのもすごい。あとこのゲームを見てて気になったんですけど
- 山口むつお
- このゲームの背景、PVではカラーじゃなかったでしたっけ?
高橋さんが手掛ける「MAN WITH NO NAME」は、昔のPCゲームのようなグラフィックやアニメーションが特徴のアクションゲーム。PVでは、森のシーンなどの背景はカラーなのですが……。
- 高橋さん
- それなんですけど、1週間くらい前に線画のほうがかっこいいなと思って、全部変えちゃいました。
- 山口むつお
- ゲーム全体のトーンに関わる部分なのに、さらっと変えちゃう勇気すごいですね……!
- 高橋さん
- おっしゃる通りなんですが、僕たちが作っているようなインディーゲームの良いところって、自分たちで全部意思決定できる事だと思うんですよね。」
- 山口むつお
- 高橋さんも木村さんと同じく、好きなようにゲームを作れる事なんですね。なるほどな〜!
続いてお話を伺ったのは、「BACK IN 1995」の製作者である一條貴彰さん。なんと、ほとんど1人で制作されたそうだ。
「BACK IN 1995」は、初代プレイステーションのような初期の3Dゲームを再現しています。
- 山口むつお
- ぼく、このローポリゴンな感じ大好物ですね……レトロゲームの雰囲気ってよくファミコンのような8bitものが取り沙汰される事が多いですけど、個人的にはスーファミのちょっと進化したドット絵とか、こういうローポリゴンなものがリアルで好きなんです!
- 一條さん
- ありがとうございます。「Steam」というオンラインのゲーム配信プラットフォームで販売しています。
- 山口むつお
- そういったプラットフォームがインディーゲームシーンに与えてる影響って大きそうですね。
- 一條さん
- 実際そうだと思います。海外ではPC向けのインディーゲーム市場ってすごく進んでいて、日本はあまり流行っていなかったんですよ。だけど、今年から任天堂やソニー、マイクロソフトといったゲーム機の会社が積極的に日本のインディーゲームの配信を手伝うようになって、かなり雰囲気が変わってきました。
- 山口むつお
- へぇ〜!ということは、個人のクリエイターがスマホアプリとかではなく、3DSとかのゲーム機用のゲームを作れるようになってくると。
- 一條さん
- はい。なので、これから日本のインディーゲームシーンはかなり熱くなってくると思いますよ!
- 山口むつお
- ちなみに、一條さんが考えるインディーゲームの定義ってどんなものですか?
- 一條さん
- クリエイターが自発的に、作りたいように作ったゲーム……という事ですかね。僕はこのBACK IN 1995をほぼ1人で作りましたけど、それが実現できているのであれば何人で作っていようと規模は関係ないと思っています。
- 山口むつお
- なるほど。みんな「作りたいものを作っているかどうか」という点で共通してるな〜!
最後にお話を伺ったのは、今回のBitSummit 4thのオフィシャルスポンサーであるUnityで日本担当ディレクター務める大前広樹さん。
- 山口むつお
- すみません、ぼく実はUnityという会社をよく知らずにこの場にやってきちゃいました……!
- 大前さん
- ははは!そうなんですね!Unityっていうのは簡単に言うとゲームの開発ソフトです。何でも作れるんですよ、2Dでも3DでもスマホアプリでもPS4でもXBOX ONEでもWii Uでも今話題のVRでも何でも……。
- 山口むつお
- おお……。
- 大前さん
- 世界で550万人以上が使ってて、実は一番使われてる開発環境なんですよ。国内のアプリは4割くらいUnityで作られてますし。個人だけじゃなくて、大手のゲーム会社さんも使われてます。最近話題の「Pokémon Go」もUnityでできてますよ。
- 山口むつお
- なるほど……御社がこのイベントのオフィシャルスポンサーを務めてるのにも納得しました。Unityがインディーゲーム市場に与えているインパクトって、めちゃくちゃデカそう……!
- 大前さん
- 自分で言うのも何ですが、かなり大きいと思います。他にも、スマホアプリ用にゲームを作ったけど、今度はPS4用に公開したいなぁ〜という時でも、楽に移植できるという特徴もあります。それぞれのゲーム配信プラットフォームに合わせて、イチからゲームを作り直すのってかなり大変なので。こんなふうに開発環境が進化して、ゲームが作りやすくなったという事もインディーゲームが盛り上がってきていると理由の1つだと思います。
- 山口むつお
- いや〜〜〜完全になるほどですわ!お話ありがとうございました!
まとめ
……というわけで、京都のPRキャラクター「まゆまろ」ちゃんと一緒に、今回のまとめです。
インディーゲームの定義として、クリエイターのみなさんが口を揃えて言っていた事がこれ!制約を受けず、自由に作れるゲームこそが「インディーゲーム」だと思っているとのことでした。
インディーゲーム発展の背景には、配信プラットフォームの発展も大きく関係していました。PC用ゲームで有名なSteamはもちろん、マイクロソフト、ソニー、そして任天堂というゲーム機メーカーの参戦もこれから市場を熱くする要因になっていきそうです。
そして、開発環境が整ってゲーム開発のハードルが下がったこと!技術的なハードルはもちろん、色々なプラットフォームを横断して配信しやすい環境ができた事で、製作コストが少なく済むようになり、個人のクリエイターでも参加がしやすくなりました。
インディーゲームの加熱ぶりを語る上で、この3つが重要な要素になっていると強く感じました。間のしがらみをぶっ飛ばして、個人のクリエイターでも一発ホームランを狙える時代がやってきています。特にゲームをダウンロードして買えるようなプラットフォームが発展してきた背景は大きいなと感じました。
一方、ゲームを遊ぶぼくたちユーザー視点で言えば、「今まで見たことのないような尖ったゲーム」を遊べるようになったという事です。正確には「出会いやすくなった」というのが正しいかも。今までは、こういったゲームを遊ぶのにPCが必要だったりしたわけですが……それが普通のゲーム機でも遊べるようになるという事は、ユーザー層が広がる大きな理由になりそうです。
なんだかものすごく楽しい時代がやってきているような気がします。これからもインディーゲームから目が離せねぇ〜〜〜!!