トルコ共和国のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、トルコ政府はトルコ国内のシリア難民に対してトルコ国籍を与えると発表した。
シリア難民にとって、この約束は予期せぬ衝撃であった。たしかに、トルコの庇護下で暮らす彼らの状況は不確かなものであり、日々の生活には多くの問題や障害が降りかかっている。トルコの国籍を得るということは、それらの困難からの出口を意味するのかもしれない。しかしこの知らせはまた、シリア問題の政治的解決は近く、たとえ何年かかかったとしても、自らの家に当然帰ることができるという望みが彼らのもとへ戻ってくる可能性に対して、諦めの感情を刺激してしまうとも言えるだろう。
エルドアンの発言が、トルコ政府のロシアとイスラエル双方との関係の正常化という出来事のわずか数日後に突如なされたとき、シリア問題の政治的解決についてのロシア―トルコ間の相互合意に対する、より大きな懸念を呼び起こした。これにはトルコ国内のシリア人の完全な市民権の付与が含まれており、アサド政権が大規模な人口調整計画の枠組みの中で化学兵器を用い、シリアの人口構造を決定的に変化させた、住民一掃事業を補完するものであるからだ。
他方で、シリア人への国籍付与に関するエルドアンの声明は、トルコの一般世論の中に、過去数年間に既に巻き起こっていた様々な敵意の波を凌駕するほどのネガティブな反応の波を引き起こした。そのような波は、トルコの様々な街や地域で、シリア難民への暴力行為という形で現れた。さらに、「#シリア人は私たちの国にいらない」というハッシュタグは大変な人気を博し、藁についた火のようにSNS上に広まり、シェアされた数において一位を占めるまでに至った。このことは、外国人に対する敵意と他者に対する憎悪が極度に高まっている危険性を示している。去年は一年を通じて暴力行為が影をひそめていたことで我々は忘れていたが、このような動きはシリア難民に対する新たな暴力の形として、仮想世界から現実世界に移行するかもしれない。
al-Quds al-Arabi紙(2016年07月08日付,バクル・スィドキー)/ 翻訳:阿部光太郎
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