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ホーサクっ

ホッと一息、サクッと読める400字

『ヒゲ』リーマンの憂鬱

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ヒゲが濃い。電気剃刀では半日しかもたない。昼過ぎには顔の下半分が青々としてしまう。なので毎日T字剃刀でしっかりと剃る。

ヒゲが薄い、人が羨ましい。5分は僕より多く寝ていられるから。今までの人生でヒゲが濃くて良かったと思ったのは一度だけ。

ヒゲを伸ばしていると、ちゃんと剃った時の3倍は職務質問を受けやすくなり、8倍はモテにくくなるという統計があるらしいのだ。

ヒゲが濃いことで圧倒的に憂鬱な人生を送ってきた僕だけれど、先に書いたようにたった一度だけ良かったと思ったことがある。

高校の文化祭でクラスで演劇をやることになった。演目は『美女と野獣』。当時からヒゲが濃かった僕は野獣役をやらされた。

ヒロイン『ベル』役はクラスのマドンナ的存在だった子がやった。緊張しすぎて手が震えっぱなしだったけどなんとかやった。

ラストのダンスシーンが終わり、幕が閉じるとクラス中の男子から蹴りを浴びせられた。それ以来他の女子と触れたことはない。

自分でも信じられないけど『ベル』役の子と付き合うことになったから。

(420字)