どうも。
私のように日常的に小説を読んでいると、それはもう迷作と出会う機会が自然と増える。
小説というやつは困ったことに最後まで付き合わないと、その価値が分からない。途中まではクソみたいな作品でも終盤になった途端に面白くなる、なんてのはよくあることだ。そして逆もまた然りである。
長い時間をかけ読んだ小説がクソほども面白くなかったときの気持ちが分かるだろうか。金をムダにしたことよりも人生をムダにしたことが腹立つのだ。こんなやつに俺は付き合っていたのかと思う。
ということで、今回の記事では私が今まで読んできた本の中でも特に「これは買って後悔した!」と胸を張って言えるものを紹介したいと思う。
あくまでもこれは私の感想なので、もしかしたらあなたにとっては人生最高の良書になる可能性はなくもない。実際に買って確認してみてはどうだろうか?
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① ビブリア古書堂の事件手帖
| ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫) | ||||
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鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。
勘違いしないでもらいたい。面白かった本ではなく、買って後悔した本である。
この売れに売れドラマ化まで果たしたこの作品を私は認めていない。
黒髪長髪若く美人で人見知りで名前は栞。作品のそこかしこに散りばめられた過去の名作たち。
小説好きなやつが寄ってきそうな匂いがプンプンする。小説好きホイホイである。そして私もまんまと捕まってしまったわけだ。
この作品はそこまでの駄作ではない。ごくごく普通の作品だと思う。ベストセラーだったことと、設定のせいで私が勝手にハードルを上げてしまって感は拭えない。
でも買うに値するほどの作品でもないのは間違いない。高まった期待感が読み進める内にみるみる萎んでいくのをハッキリと自覚したもんだ。あの悲しみはもう経験したくない。
②地図男
| 地図男 (MF文庫ダ・ヴィンチ) | ||||
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仕事中の〈俺〉は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。千葉県北部を旅する天才幼児の物語。東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女――物語に没入した〈俺〉は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。
あまりにも乱暴な作品である。まとまりがないというか、書き散らかしたというか。最後は強引に感動しそうな感じにまとめているが全然感動しない。こじつけ感が半端ではない。呆れてしまって読みながら「はあ?」と声に出ていたかもしれない。
真藤順丈はアイデアマンである。溢れ出るアイデアをこの作品にぶつけたようだ。出てきたアイデアを取り敢えず全部乗っけたのだろう。まるで自慰である。
そして出版社がコンビニの店頭に並べまくってベストセラーにするという快挙。素晴らしいチームワークである。
この作品に出会ったことで、私はベストセラー作品への不信感を一層募らせることになった。ハードカバーで買ったことが本当に悔やまれる。
③藁の楯
| 藁の楯 (講談社文庫) | ||||
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2人の少女を惨殺した殺人鬼の命に10億の値がついた。いつ、どこで、誰が襲ってくるか予測のつかない中、福岡から東京までの移送を命じられた5人の警察官。命を懸けて「人間の屑」の楯となることにどんな意味があるのか? 警察官としての任務、人としての正義。その狭間で男たちは別々の道を歩き出す。
この作品の見どころは紙であることだ。
小説なのだから紙なのは当たり前と思われるかもしれない。Kindleの場合は違うがな。いや、そんな話をしたいのではない。この作品に出てくる登場人物たちの薄っぺらさの話である。紙だと見紛うほどペラッペラの連中ばかりが出てくる。こんな作品なのに映画化されてしまうのは世の中の恐ろしいところである。またこんは原作でも「名演」とまで言わせた藤原竜也は本当に本物なんだなぁと思った次第だ。
映画は面白いらしいが、もう私は原作者にお金を渡したくないので観ることは一生ないだろう。
④ピース
| ピース (中公文庫) | ||||
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連続バラバラ殺人事件に翻弄される警察。犯行現場の田舎町に「平和」な日々は戻るのか。いくつかの「断片」から浮かび上がる犯人とは。「ピース」が解明されたとき、すべてが繋がった……。
「驚愕のどんでん返し!!!!!」という触れ込みで全国の書店で平積みされていたこちらの作品。きっと印刷会社が発行部数を一桁間違えてしまったために、無理矢理売っていたのだと想像している。そうでないと辻褄が合わない。こんななんの驚愕もどんでんも返しもない作品が書店に平積みされている理由がない。
本当に読者を舐めていると思う。作者もきっと「こんなんじゃダメだよなぁ、でも締め切り来ちゃってるし…。仕方ないこのまま出すか」的な感じだったと思う。そうであってほしい。本気でこれを書いているのであれば、もうダメだ。
一応、表紙の絵さえも伏線になっているという話だが、そんなのはどうでもいい。とにかく犯人の動機が凄まじく下らないものなのだ。それを知った読者は、この作品を床に叩きつけずにはいられないだろう。
⑤絶望ノート
| 絶望ノート (幻冬舎文庫) | ||||
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中学2年の照音は、いじめられる苦しみを「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねた。彼はある日、頭部大の石を見つけ、それを「神」とし、自らの血を捧げ、いじめグループの中心人物・是永の死を祈る。結果、是永は死んだ。しかし、収まらないいじめに対し、次々と神に級友の殺人を依頼する。生徒の死について、警察は取り調べを始めるが……。
信頼買いというものがある。その作者を信じて買うことを言う。
私の中で歌野晶午は信頼するに足る作家であった。才能が尽き果て次々と筆を折る推理小説家が多くいる中、いつまでも進化を続け才能をほとばしらせるその姿は脅威と言ってもいいぐらいだ。常に大玉を打ち上げ、読者の度肝を抜く。そんな歌野晶午が私は大好きだ。
だがこの作品は許せない。やり過ぎだ。大玉を打ち上げたかったのかもしれないが、空振りにもほどがある。しかもなぜこんな駄作のためにここまでの長編にしたのかも分からない。プロットを思いついた段階でそこまでの作品にならないことは分かっていたはずだ。
歌野晶午作品というハードルの高さもあるが、あまりにも大したことない作品なので紹介させてもらった。
⑥殺人鬼フジコの衝動
| 殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫) | ||||
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一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!
はい出ました伝家の宝刀、「驚愕の展開」。
しません驚愕なんか。ただのこじつけです。
これが驚愕の展開なのであれば、ジャンケンで後出しされたことで驚かなければならない。そんなやつはいないだろう。だがこの作品ではそれを堂々とやっているのだ。ハッキリ言ってペテンである。しかもそのペテンで50万部を売り上げるとは大したものだ。まあその中の一部は私なんだがな。書店でこの本を持ってレジに並んでいる私を殴りに行きたい。頭部が陥没するぐらい思いっきりいきたい。それぐらい猟奇的にやれば作者の真梨幸子も満足することだろう。きっと彼女は残酷な描写がしたいだけなのだ。
全然認められない稀有な作品である。
⑦もう誘拐なんてしない
| もう誘拐なんてしない (文春文庫) | ||||
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大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!?いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。
『謎解きはディナーのあとで』で大ブレイクした東川篤哉の作品である。
あれだな、ブレイクしたから彼の作品が本屋に平積みされまくっていたのがいけなかったんだな。こんなに滑り倒していて、しかもミステリーの部分もパッサパサになっている作品もなかなか珍しい。評価するべきところが本当にない。食べ終わった後のサンマを見せられているような気分だ。「もう食べる所無いんですけど?」
ああ、そういえばひとつだけ評価できるところがあったな。表紙の女子高生がいい。期待させられる。騙される。騙されたよ、私も。女子高生の太ももに。
⑧その女、アレックス
| その女アレックス (文春文庫) | ||||
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おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。
なぜここまで評価されてしまったのだろう?それは評価する人がいたからだろう。
確かに他にはない試みをしている良作である。だがおおっぴらに評価されたことがこの作品の価値を著しく下げていると思う。妙な期待がなければもっと素直に楽しめたし、素直に楽しんだ人しかこの作品の肝は効かないだろう。そういう意味で私は本当に損をした。
ミステリーには王道と反則がある。どちらだろうが読者を欺ければ問題は全くない。この作品に関しては完全に反則側なのだ。変化球である。変化球を「これは変化球だよ」と言ってしまったら、絶対に楽しめない。
作品自体というよりも、周りの人に殺されたことが残念な作品である。
⑨鉄道員(ぽっぽや)
| 鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫) | ||||
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娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた―。心を揺さぶる“やさしい奇蹟"の物語…表題作はじめ、「ラブ・レター」「角筈にて」など8編収録。第117回直木賞受賞作。
天下の直木賞受賞作である。面白くないはずがない。だが面白くない。正確には滑っている、だ。
表題作の『鉄道員』だけでなく『ラブ・レター』など非常に評価の高い作品であるが、私にはまったく響かなかった。作者の「ねえ、これって泣けるでしょ?」的な感じが伝わってきてしまったからだ。
ネットでやけに評価が高かったのだが、それゆえにひどい肩透かしを食らってしまった。やはり人の評価というものは当てにならないものである。
ちなみに直木賞受賞作という理由だけで本を買うと、こういった現象が多く見られる。一応作品に送られる賞だが、作者の功績を評価する賞だということは小説好きの中では周知の事実である。
⑩新宿鮫
| 新宿鮫 新装版: 新宿鮫1 (光文社文庫) | ||||
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ただ独りで音もなく犯罪者に食らいつく―。「新宿鮫」と怖れられる新宿署刑事・鮫島。歌舞伎町を中心に、警官が連続して射殺された。犯人逮捕に躍起になる署員たちをよそに、鮫島は銃密造の天才・木津を執拗に追う。突き止めた工房には、巧妙な罠が鮫島を待ち受けていた!絶体絶命の危機を救うのは…。
作者の大沢在昌は賞の審査員とかやっている割には、己の書いている小説があまりにも薄っぺらい気がする。この作品の鮫島もそうで、カッコ良さそうな雰囲気は出ているし、設定もそれっぽくしているが、全然決まっていない。特に木津の工房でペニスが縮こまるシーンなんかはひどいもんだ。あとやたら巨乳好きな所とか。
孤独な一匹狼な所といい、やたらとおっぱいを強調してくる所といい、やけにおっさん臭がする作品である。
おっさん臭がする作品は面白いと思えない。こればっかりは仕方ないだろう。黒いものを見て「黒い」と思うように、ケーキを食べて「甘い」と思うように、おっさん臭がする小説は「面白くない」と思えるのだ。
続編がたくさん出ているので、きっと評価していたり、熱狂的なファンがいるのは間違いないのだろうけど、「きっとおっさんがファンなんだろうなぁ」と勝手に思っている。
小説よ、永遠なれ
中にはボロクソに書いているものもあるが、基本的に私は作者をリスペクトしている。ダメな作品を生み出そうとも彼らは挑戦をしてくれている。数多の死屍累々があってこその名作、という側面も否めんこともない。
なので、正直金は返してもらいたいぐらいだがこの10作品を憎むことはできないのである。歌野晶午がそうであったように、駄作を生み出したあと急に作家として成長することはある。私はいち小説ファンとしてそれを期待するとしよう。そしてこれからも懲りずに新しい作品にトライしたいと思うのである。
ちなみに今回紹介した10作品は、特に語るべきことがあったから選んだだけであって、実際に「こりゃあ駄作じゃあ!」と思った作品は腐るほどある。いつか機会があれば他にも後悔、いや公開したいと思う。
では。
小説よ、永遠なれ。