1. 改憲が争点とも言われる参院選。自民党は憲法のどこを変えたいのか。これを見たら、一目でわかる。
2. 自民党が2012年につくった「憲法改正草案」と現行憲法の違いを、Wordの編集履歴機能を使ってまとめた。青字は削られた、赤字は加えられたところ。
3. たとえば、9条はこんな感じに変わる。
「戦争の放棄」という言葉が削られ、「安全保障」になる。「戦力は保持しない」「交戦権は認めない」という言葉も削られるけれど、一方で、「国防軍」を持つことが明記されている。
4. 新しく加えられるのは第9章。
「緊急事態条項」と呼ばれているこの部分では、大きな災害や他国からの武力攻撃があったとき、首相が「緊急事態」を宣言できるとされている。
その宣言がされると、政府は自由に政令(法律)がつくれるようになる。国民は誰でも、政府の指示に従わなければいけなくなる。
5. 家族と婚姻についての24条もガラッと変わる。
いまの憲法では個人がメインだが、草案では家族が尊重されている。
「互いに助け合わなければならない」とする文章が加えられるほか、婚姻の成立については「両性の合意のみ」の「のみ」が削られる。
6. 自由と権利に関する12条は?
「自由と権利には、責任と義務が伴う」「公益及び公の秩序には反してはいけない」という文言が、新たに加わる。
ただ、「公益及び公の秩序」が何なのか、定義はされていない。
7. これを作ったのは、WEBデザインやUIの専門家の川添歩さんだ。
雑誌・書籍の編集者を経て、現在はアプリケーションやサービスのUXデザイン、コンサルタントをしている。
8. BuzzFeed Newsの取材に「どこが変わるのか、まず知って、考えてもらいたかった」と語った。
もともとは、2013年。自民党が政権を取り戻した直後につくったという。
「政治家から提示されたロードマップやビジョンは、どのような人に国の運営を預けるのかという重要な指針です。その内容を国民はよく読み、知る必要があると思っていました」
「日本で多勢をしめる自民党の支持者が、果たしてどこまでこのビジョンを理解して、支持しているのかが疑問でした。まずは読んでもらいたいという思いで、このコンテンツをつくったんです」
9. なんで、Wordの編集履歴を使ったのか?
「自民党が提供している対照表では、どこが違うのかを自分で見つけなければいけず、変更の内容がわかりづらい。より見やすい方法を提供したいと考えて、この表現方法をとりました」
もともとの表では「削除した部分が目立たない」が、この表現だと「削除が明確になる」とも語る。
「9条の『戦争の放棄』という言葉が線で消されていたら、どのような主張を持っていてもやはりその重みを感じると思います。条文ごと削除されている97条の記述もそうでしょう」
11. スマホで見やすいバージョンもある。
公開から3年。参院選も間近になってシェアされていることに「多くの人が改憲が重要なイシューであると考えているのでは」という川添さん。
「たぶん、シェアされている方のほとんどは、憲法改正に反対の方だと思います。そういう方も、変更の細かい点はご存じない場合が多いので、たくさんシェアしていただけることはうれしい」
「さらに、ぼくが作成したことによって、少しでも自民党支持者の方にも読まれ、考えてくれることを願います。読んだ上で、支持されるのならまたそこから議論をすすめられると思いますので」