まさかと思うほどの薄いの存在
週末、目黒不動尊(天台宗・瀧泉寺)に行った。ちょっと見たいものがあったからだ。
東急目黒線の駅から徒歩15分。初夏の陽射しを浴びて、なだらかな坂を上り下りしながら私が考えたのは、明治生まれの二人の男のことだった。
北一輝(1883~1937年)と岸信介(1896~1987年)。北は2・26事件の首謀者として処刑された革命家だ。岸は言うまでもなく元首相で、安倍晋三首相の祖父でもある。
岸は北より13歳若い。北とは生い立ちも性格もちがう。別世界の人間だ。似ている点を強いて挙げるとすれば、その尋常ならざる能力のために北が「魔王」と呼ばれ、岸が「昭和の妖怪」と呼ばれて、周囲から恐れられたことぐらいだろう。
目黒不動は徳川三代将軍・家光ゆかりの寺である。入口の案内板によると、サツマイモで有名な青木昆陽の墓もあるらしい。
でも、私が見たいと思っているのはそれではない。北一輝の碑と墓だ。なのに案内板には記載がない。寺務員に尋ねると「お墓ならありますが」と言って、境内から百数十m離れた道路沿の墓地を教えてくれた。
墓地の奥の方に北の墓はあった。正面に「北一輝先生之墓」とあり、側面に夫人と長男の名も刻まれていた。それにしても拍子抜けするほど普通の墓である。「魔王」を連想させる部分はない。逆徒の縁者の暮らしは苦しく、贅沢な墓を作る余裕がなかったのか。それとも世間への遠慮がそうさせたのか。
数m先には、北のかつての盟友で「大アジア主義」を唱えた大川周明(東京裁判で東条英機の頭を叩いた人だ)の墓もあった。こちらも戦前・戦中の彼の華々しさに比べると、忘れられたように地味な墓だった。
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