漫画「ヴィンランド・サガ」でのこのシーン。
ヴァイキングであるデンマークのクヌート王子に仕えるアシェラッドが
一大決心をし発した言葉です。
ルキウス・アルトリウス・カストゥス
余こそが、このブリタニアを統るべき
正統の王である
ヴィンランドサガではアシェラッドはウェールズ人とヴァイキングのハーフ
で彼のアイデンティティーは母方のウェールズにありました。
ウェールズ人である余こそがブリタニア(イギリス)を治める正当な王である!
との発言は、歴史的な背景を考えると深い理由がありました。
その理由について古代まで遡ってお話しいたします。
ブリトン人のブリタニアという国
ブリタニアは紀元前から存在しており、ブリトン人とよばれるケルト系民族の国でした。紀元前後はブリトン人の幾つかの部族の国が形成され始めた時代でした。
※紀元10年頃のブリタニア
それが紀元43年にローマ帝国によって侵略され、数世紀に及んでローマ帝国の支配下にありました。ローマ帝国になったわけではなく、ブリタニアはローマ帝国の属国という位置づけで、司令官や軍隊はローマ帝国から送られていました。
※4世紀中頃のブリタニア。ローマ帝国支配下で幾つかの区域に分かれてる
ところが、410年にローマ帝国がブリタニアから去り、再びブリトン人がブリタニアを支配する時代がやってきました。しかし、このブリタニアも長くは続かず新たな侵略者に狙われることになりました。
※450年ごろのブリタニア。ブリトン人の小国に分かれている。このころウェールズ小国群の原形である幾つかの国も形成される。
ウェールズに追われたブリトン人
5世紀ごろからゲルマン系のアングル人、ジュート人、サクソン人(纏めてアングロサクソン人)がブリテン島の西岸(ケント付近)から侵略して、わずか数世紀でブリタニアを乗っ取ってしまいました。ブリタニアという名前も、7世紀中頃にもなくなってしまい、ブリトン人はウェールズとスコットランドの一部、コーンウォールの一部に残るのみとなってしまいました。
※紀元500年頃のブリタニア。緑色のアングロサクソンの領土が形成され始める。
※紀元700年頃のブリテン島。ウェールズを残し、ほぼアングロサクソンに乗っ取られる。
ブリタニアの戦士、アーサー王(アルトリウス)
このアングロサクソンの侵略を食い止め、ブリトン人の国ブリタニアを守ろうと勇敢に戦い一時的にアングロサクソンを壊滅させた・・と言われた戦士がいました。
その戦士がアルトリウスで、ウェールズだけでなくイギリスの英雄として誉れ高いアーサー王のモデルになったと言われています。
さらに攻めてくるヴァイキング
そして、9世紀頃からデンマークのヴァイキングがイングランドに攻めてくるようになり、10世紀や11世紀にはイングランドを乗っ取りました。
ヴィンランドサガに出てくる、スヴェン王やクヌート王などがイングランド王にもなっています。
※黄色い部分:ヴァイキングのデーンロー。緑:アングロサクソンのイングランド。西部の青い部分:ブリトン人のウェールズ
アーサー王の復活か?
そんな時代背景の中、ウェールズ人たちには誇り高きブリトン人の国を守り抜き、
伝説のアーサー王が復活して再びブリタニアを取り戻すことを夢見ていました。
ヴィンランドサガでは、ウェールズ人の心を持つアシェラッドが、
アルトリウスの血を引き、我はルキウス・アルトリウス・カストゥスだ!
とヴァイキングのスヴェン王に牙をむきます。
※ルキウス・アルトリウス・カストゥスは歴史上の実在人物で、アーサー王のモデルになったとの説もあり、映画キングアーサーのモデルにもなっています。
架空のストーリーでアシェラッドの目的は別にあるとは思いますが、
アシェラッドの行動には、ウェールズ人達の思いが深く刻まれているような気がしました。
最後に
ヴィンランドサガにはウェールズに関する描写もいくつかあり、それぞれウェールズの状況や心を上手く表現していると思います。歴史を知ると漫画もとても楽しく読むことが出来ます。僕のブログを読みながら、ヴィンランドサガをより楽しいんでいただけると嬉しいです。
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