どこまでやりますか?
余興。
何するんですか?
練習したりするんですか?
嫌じゃないですか?
・・・
我が組織には毎年、創立記念式典という名の
なんか畏まってるのか宴会なのかよく分からない式典があります。
毎年、開会挨拶から始まり、
各幹部決意表明や
ボスのありがた迷惑な長くしょうもない話もあり、すっかり泡がなくなったビールで乾杯して、若手が瓶ビール片手に各テーブルを回るという、平成の世では信じられない式典です。
この時代錯誤の式典は
1ヶ月も前から準備が始まります。
最初の障害は組織内のメンバーの席次を決めるところです。
隙を見せたら、ボスと同じテーブルになってしまいますからみんな必死です。
いつも若手を生贄に捧げます。
若手も必死に抵抗します。
結局ボスの席がイヤなのでそこに決まったらベテランだろうが新人だろうが瓶ビール片手に自発的にテーブルを回ることになりますけどね。
若手が席を立って瓶ビール片手にテーブルを離れるのが1番自然に見えるのでなんとかボスのテーブルは若手で固めたいところです。
「…では、例年通り、若手には余興を任せる」
幸い、中途な私は免れましたが
この組織入って最初のカルチャーショックはこの若手による余興です。
いまだに若手にそんなことを強要しているところがあるとは。。。
しかも毎年、だだスベりです。
スベるなって方が無理ですよ。
昨年の新卒達のAKB48は
出てきた瞬間からおっさん達が
セーラー服を脱がさないでーとか訳の分からないことを言い出したかと思えば、始まった瞬間にテンションがクールダウンしましたからね。
「昨年は今一つだったからな。今年は余が直々に指導する。」
は?
何言ってんだこのジジイ?
私を含め、若手リーダー、ベテラン幹部もそんな顔をしました。
しかしこのジジイ。
非常に残念なことではありますがココで1番偉いジジイです。
このクソでアホで全く役に立たない死にぞこないのどうしようもない 老いぼれではありますが
1番偉いクソジジイです。
言い出したらききません。
うんざりしますが今年の新卒は運が悪かったようです。
・・・
で、おまえら何やらされることになったんだ?
「ボスからは口止めされてるんですが。。。」
なに?サプライズってやつ?
「はぁ。ボスの言葉で言えばサプレーズだそうです。」
聞きかじりすぎだろ。
そんなに難しい単語かよ!
ふーん。じゃあ教えてくれないの?
「安来節です。」
ふ、ふーん。練習させられてるの?
「はい。毎日業後に。。。これ残業代出ないですかね?」
毎日か。。。出ないな。
「先輩から何とか言ってくれないですか?遠征帰りにも電話かかってきて集合させられるんですよ!仕事に支障出てますって!」
「そうだぞ。若手が定時に練習に向かうから俺たちが後片付けや事務仕事してるんだ。ベテランの残業増えてるんだぞ!なのにボスから残業するなって言われてるんだ。やってらんないよ!」
残業代なんてもらってました?
「慣れない事務仕事で遅くなると光熱費が上がってるって文句言われてるんだよ!」
ムムム。誰がこの宴会を望んでるんだ。。。
仕事に影響あるなら一言、釘刺しとくか。。。
・・・
私は定時すぎ
練習用に借りているという公民館に顔を出しました。
借りる費用は経費なんだろうな。
光熱費うんぬんの前にこういうとこ削れよ。
余興の練習で場所借りたなんて今までなかったけどな。
そこには目から光を奪われた若手と熱心に指導するボスの姿。
「バカモノ!心だ!心を入れろ!」
精神的な指導すぎる。。。
若手は私の姿を確認すると一斉に目で訴えてきます。
…ボス。あまり根を詰めると仕事に影響が。
「余は大丈夫だ。心配するな。」
いや、アンタたいして仕事ないでしょ。
若手も仕事がありますし…
「フム。貴様ら自らの不出来を仕事のせいにするのか。」
やべ。怒るなコレは。
「そんなことを口に出すような輩はな!家庭がうまくいかなければ仕事に逃げ!仕事がうまくいかなければ社会のせいだと逃げ!どこにいっても何をやっても逃げ続けることになるのだ!」
始まっちゃったよ。。。
その正論を違うところで出して欲しいんだけど。
「いいか貴様ら!世の共働きのお母さん達はな!仕事!家事!育児!逃げる場所などどこにもないのだぞ!逃げるどころかママさんバレーにも参加する!その立ち向かう貪欲な闘志が貴様らにはなぜ湧いてこないのだ!!」
ママさんバレー…共働きだと最近は少ないと思うけどな。
この世代は現在の情報と古い情報が混在してるからな。
「仕事にも全力をもって当たり!余暇も全力で過ごす!なぜこれができん!」
その余暇を完全に奪ってんだよ。
おっしゃる通りではあるのですが
その余暇が彼らには必要なのでは?
「ウム。お前の言うとおりかもしれぬ。」
お、珍しく聞き分けがいいな。
では。練習は。。。
「確かにこの程度の習熟では人前に出せん!明日からは余の権限でこやつらは15時上がりとする!15時からの時間を練習に当てよう!」
あかーん!なんで仕事削る方に向かうの?
余興の練習を彼らの余暇にカウントしないで!
ちょ、ちょっと待ってください!
そんなことしたら本当に仕事に穴があきますよ!
「構わん!ベテランにやらせろ!穴が空いたらソイツらに責任だ!若手に甘えるな!先輩としての矜持を持て!ベテランが楽をするために若手がおるわけではない!若手は組織の財産だ!与えられている役割が違うだけで本質的には同じ人間だ!貴様らの便利屋ではない!横柄に接する奴は余が許さん!その辺りを勘違いするな!」
もう無茶苦茶だよ!
そういうことを違う時と場所で言え!
しかしこうなったら
誰にもとめられません。
うなだれた私と
最後の望みが絶たれた若手。
明日からのベテランの反応を考えると胃が痛い。。。
動きが目に見えて悪くなった若手の踊りを背にとぼとぼと退散します。
すまん。。。
私もいつも100点を取れるワケではないのだ…
公民館にボスの叱責が響きます。
「仕事でやってるんじゃないんだぞ!真面目にやれ!」
あのジジイ。ポックリ逝かねーかな。