2016年3月期決算の会社の有報提出期限(2016年6月30日)も過ぎたため、基本的には有報が出そろいました。有報には役員報酬を記載する欄があるので、毎回気になるところです。
私は投資先の有価証券報告書を読んでいますが、役員報酬ランキングと有価証券報告書の見方についておさらいしたいと思います。
1.役員報酬ランキング
2.ソフトバンクの有価証券報告書
3.投資先の有価証券報告書
1.役員報酬ランキング
2016年3月期決算企業の有価証券報告書がほぼ出揃った。6月30日17時時点で2,442社の有価証券報告書が確認され、2,442社のうち役員報酬1億円以上を受け取った役員の個別開示を行ったのは211社、人数は414人だった。
個別開示人数は2015年3月期(413人)を1人上回り、過去最多の414人となった。
役員報酬額の最高はソフトバンクグループのニケシュ・アローラ元副社長が64億7,800万円で、開示制度が開始された2010年3月期決算以降の歴代最高額を更新した。(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160630_01.html)
ソフトバンクのニケシュ・アローラ氏の報酬について話題になっていましたが、実はランキング2位のロナルド・フィッシャー氏も20億円超え。
なんとソフトバンクの1・2フィニッシュです。ただしソフトバンクは、純利益が約5,000億円あり、Sprintの苦戦が騒がれているものの利益をしっかり稼ぐ会社です。後ほどソフトバンクグループについては、まとめます。
ランキングに戻りますと10人中6人が外国人ですが、ソニーやユニバーサルエンターテイメントは、昔から役員報酬が高いので有名です。
ユニバーサルエンターテイメントは、パチンコ・パチスロ機器メーカーで、今は東南アジアでカジノ事業に注力しており、私も注目しています。実は、2016年3月末に投資していたんですが、無配となってしまいました。9億円も役員報酬受け取るなら配当してくださいと言いたいところです。
役員報酬が数十億単位となるソフトバンクは破格ですが、この役員がいるおかげで長期的に利益が増えるなら数億円レベルの役員報酬は仕方ないと思っています。
何故かというと、海外の企業では役員報酬が高いのは当たり前で、良い外国人役員を雇うにはある程度報酬を払わないと日本企業に勤めるメリットはありません。ただし、長期的に会社を成長させるというところがポイントで、短期的なリストラやコストカットで業績が回復しても、それは本来の企業の成長ではありません。
うまく会社の力を引き出し実力を超える成長ができる経営者もしくは取締役なら高額な役員報酬はありだと思います。
カルロスゴーン氏もずっと高額報酬を得ていますが、どう評価するかは難しいところです。下のグラフをみてください。自動車産業は、景気の動向に物凄く左右されるため、同業で比較してみました。
1999年にルノーが日産の株式を36.8%取得し、ゴーン氏が最高執行責任者として日産で経営に携わりました。リーマンショックもあったものの、株主として一番評価しやすい株価は日産が一番高い状態です。インドで成功しているスズキより高いのは意外な感じですが、こう見てみると高額な報酬も対価としては正当な気がします。
ゴーン氏がいなければ、ここまで日産が回復することはなかったのではないでしょうか。
※1999年~2016年6月末までの株価比較
2.ソフトバンクの有価証券報告書
ソフトバンクが1・2フィニッシュなのですが、孫氏はいくらもらっているか気になりませんか?ちょっと調べてみました。
(※1 ソフトバンクグループ 有価証券報告書より)
ソフトバンクの親会社の報酬は、6人で、3億3000万円と大企業にしては普通かなというレベルですが、ニケシュ・アローラ氏、ロナルド・フィッシャー氏は、子会社の取締役として巨額報酬をもらっています。
別掲でそれがわかるのですが、以下の表を確認してください。
(※2 ソフトバンクグループ 有価証券報告書より)
孫正義氏は、1億3,000万円しかもらってません。ニケシュ・アローラの50分の1です。でも、1億3,000万円もそこそこ巨額なんですが、たった1代で時価総額5兆円を超える企業を作っており、役員報酬には恐らく興味ありません。
もっと会社を大きくする野望があり、その為の人材にはお金をとことん使っていくスタイルなのでしょう。
ちなみに、孫正義氏は、ソフトバンクグループの株を23,120万株(約19.2%)保有しています。資産を計算してみると、23,120万株×5,727円(2016年7月1日終値)は、約1兆3,000億円です。
さらにちなみにですが、ソフトバンクグループの配当は2016年3月期は41円だったので、孫氏は、配当だけで年間94億円もらってます。役員報酬は1億円でも2億円でも関係ないんでしょうね。
役員報酬や配当を含め、ソフトバンクから一番お金をもらっているのはニケシュ・アローラ氏(64億円)ではなく、配当を貰っている孫正義氏(94億円)です。
3.投資先の有価証券報告書
ソフトバンクの役員報酬も興味深いですが、この際投資している有価証券報告書を見てみましょう。
会社のホームページかEDINETで検索できます。
EDINETはこちら。
http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
①書類検索をクリックします。
②この赤枠に企業名をいれれば、提出されている有価証券報告書がダウンロードできます。
例えば、キーエンスという会社の役員報酬を見てみましょう。
キーエンスは、FAセンサーで有名なんですが、圧倒的な営業力で顧客が必要とするセンサーを提案・受注し、営業利益率50%超!!という超優良企業。営業利益率は10%でも優秀なので、超優良企業だと思います。
さぞたくさん役員報酬があるかと思ったのですが、意外と少なかったです。
(※3 引用元: キーエンス 有価証券報告書より)
171百万円÷8人なので、一人当たり2,100万円ですね。上場している会社としては、中堅企業と同水準です。キーエンスは時価総額4兆円の大企業なので非常に少ない印象で、逆の意味でびっくりしました。
キーエンスの有価証券報告書にはもう一つみるべきところがあります。それは平均給与です。日本一給与が高い会社として有名なのですが、有価証券報告書にはその記載もあります。
(※4 引用元: キーエンス 有価証券報告書より)
なんと、1,700万円オーバーです!年々増加していますが、ついに1,700万円を超えてきました。平均給与ですからね。2,000人いる従業員の平均給与でこの額とは、ほんとびっくりです。
合コンで相手方に、キーエンスの社員がいたら、絶対仲良くしておきましょう!キーエンスの平社員でも普通の会社の役員クラスですね。
キーエンスは株主にも良い会社で、1992年の底値から右肩上がりの上昇で、2016年には株価は30倍!!になっています。
なぜキーエンスの話をしたかというと、実はこういう会社が理想だからです。付加価値をつけた提案営業で、お客さまにまず喜んでもらう。
右肩上がりで成長しているので取引先の仕事も増える一方。
役員は、あまり役員報酬をとらず、従業員の給与を増やしてやる気をださせる。
そして株主は、株価の上昇と増配に次ぐ増配を味わえる。
理想ですよね。
本当に大事な会社のお金が役員報酬でどれくらい使われているのか、それは本当に妥当なのか、従業員には優しい会社なのか、一度有価証券報告書を確認してみてください。役員が貰いすぎているなという印象を受けたらそれは危険な株式投資かもしれません。それでは良い週末を!