日本人人質か 当局突入、武装集団と銃撃戦
【ニューデリー金子淳】バングラデシュの首都ダッカで1日午後9時20分(日本時間2日午前0時20分)ごろ、武装集団が大使館の集まる地域のレストランを襲撃し、外国人客やスタッフらを人質に立てこもった。治安部隊が2日午前7時40分(日本時間同午前10時40分)ごろ突入し、激しい銃撃音がしたが間もなくやんだ。現場から5人の遺体が見つかった。地元メディアなどによると、突入までに少なくとも警察官2人が死亡、26人が負傷した。人質は外国人約20人を含む少なくとも35人に上る模様だ。英BBCはイタリア人のほか日本人5人が含まれていると報じ、日本政府が確認を急いでいる。
イタリアメディアは治安部隊の突入前、在ダッカ・イタリア大使の話として、約20人の外国人人質にはイタリア人7人、日本人1人、韓国人2人が含まれていると伝えた。
地元メディアによると、日本人とみられる外国人を含む10〜12人程度の人質が救出されたとの情報がある。負傷の具合などは不明。ロイター通信は、バングラデシュ警察の話として、日本人とみられる人質1人が店から逃げ出したと伝えた。
過激派組織「イスラム国」(IS)の影響下にあるニュースサイト「アーマク通信」は「外国人を含む24人を殺害、40人を負傷させた」と、ISの関与を報じている。
ただ、米CNNによると、米国務省のカービー報道官は、ISの関与については「確認していない」と指摘。米国の情報筋は国際テロ組織アルカイダ系の「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」が関与した可能性を指摘したという。
武装集団は銃や手投げ弾などを所持した8、9人ぐらいで、スタッフや客を人質に取り、治安部隊と銃撃戦になった。逃げ出した店のスタッフは、武装集団が「アラーアクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたと話した。治安部隊は1日夜に突入を試みたが爆発物を投げつけられ、断念したという。
現場のレストランから半径1キロ圏内には、日本や米国などの大使館が集中。店は日ごろから外国人の利用客が多いことで知られていた。この日はラマダン(イスラム教の断食月)最後の金曜日で、夜には多くの人でにぎわっていたとみられる。
現場付近に住む弁護士のカウサルさんは、毎日新聞の電話取材に「近くでこんなテロが起きるのは初めてで不安だ」と話した。
バングラデシュはイスラム教徒が約9割を占めるイスラム教国。ダッカでは2015年10月、イスラム教シーア派の宗教施設で複数の爆発があり、少なくとも1人が死亡、約90人が負傷した。
また、人権活動家やイスラム教から改宗したキリスト教徒、日本人1人を含む外国人の殺害事件も相次いでおり、ISやAQISが犯行声明を出している。ただ、政府は国際テロ組織の関与について一貫して否定的な見方を示している。
【ことば】ダッカ
バングラデシュの首都で政治・経済の中心。人口約1760万人。水運が盛んなことでも知られる。高温多湿で年間の平均気温は約25度。大型サイクロンの襲来などでたびたび洪水に見舞われる。1977年に日本赤軍が日航機をハイジャックした「ダッカ事件」の舞台となった。外務省によると、バングラデシュの在留邦人数は985人(昨年10月現在)。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、バングラデシュに進出する日本企業は約220社(昨年1月現在)。