新進気鋭の若手にはいつも感心します。
しかしなかなか古い体質を抜けるのは難しいものです。
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本日は作戦会議
ボスの前で実行すべき作戦を発表します。
まずは役職のない私から。
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…のように、公園で人払いの後、ヒーローを待ちます。そしていつものように怪人で倒す作戦です。
今回の怪人は、博士によって作られた新型になります。
酔っぱらいとライオンを合成した酔っぱライオンです。
「うむ。だが目新しさがないな。却下だ。次。」
次は、若手出世頭のエビス将軍。
「はい!私が考案した作戦は、Webからウイルスを送り、公的機関を混乱に陥れ、その間に各主要都市で同時多発テロ。正義の味方が分散して防衛に当たっている隙をついて国会を占拠するものです!」
どうですか?と言わんばかりに息を巻いています。
確かに、サイバーテロと物理的なテロは効果的だろう。
正義の味方も分散させて時間稼ぎだけなら損失も少ない。
その間に本丸を取る。。。
準備を入念に行えばいいところまでいくかもしれない。
しかし、これは通らないな。
「ふむ。Webとかウイルスがよく分からんから却下だ。」
「し、しかし今、世間ではわりと有名な手段かと。。。」
「知らん。却下だ。」
「ウイルス無しでの実行でも十分に効果があります!検討を!」
あーあ、食い下がるなぁ。
「しつこいぞ!ボスの御前だぞ!下がれ!俺の番だ!」
ほら怒られた。。。
「ふむ。スーパードライよ。提案を始めよ。」
「ハッ!」
「私は昨今ではあまり見なくなった幼稚園バスジャックを提案します!」
ちっ!このおっさん面倒くさいものを提案しやがって!
「ふむ。懐かしいな。」
「ええ。昔はよくバスジャックしましたな。」
「しかし、時代遅れではないか?」
「ボス!今は少子化ですぞ!」
「おお!ニュースでやってたな!」
「そうです!私もニュースを見てピンときたのです!子どもの価値が昔に比べ上がっていると!」
「なるほど。一理あるな。」
ねーよ!
「ま、待ってください!今さら幼稚園バスジャックなんて非効率です!」
「なんだと!」
「だいたい世界征服するのにどうしても一地方都市の幼稚園バスを襲わなきゃいけないんですか!」
あ、ダメだ。
その論法では相手は頑なになるだけだ。
「幼稚園バスジャックをして正義の味方をおびき寄せる!そしてソイツを倒すのだ!倒せば世界征服に近づくんだぞ!我々は昔からそうしてきたんだ!」
「それで何が…」
私は反論しようとする若い幹部を手で制しました。
「先輩…」
お前は引っ込んでろ。
スーパードライ大佐、確かに昔からよく使われていた作戦です。
子供の価値が相対的に上がったとされる今、その時節を掴んだ作戦。
よいアイデアだと思います。
「フハハハ。そうだろう!」
はい。いくつかの課題をクリアできれば実行を検討できるよい作戦です。
「課題?」
はい。まずは、幼稚園バスが動く時間ですが朝は通勤渋滞後で正義の味方も近年、兼業が多いため、勤務中と考えられます。
夕方は逆に正義の味方が駆けつける時間が通勤渋滞中になることが予想されます。
通勤渋滞のない休日はそもそもバスが動きません。
「そ、そんなものいつものように事前に予告状を送っておけばよいだろう!」
はい。事前に予告状は有効な手です。
しかし、予告状もリスクがあり、事前にどのバスを襲いますと伝えてしまえば完全に護衛がついてしまいます。
「護衛ごと叩き潰してくれるわ!」
さすがです。予告状を出すことで正義の味方が来ない点は防げそうですね。
「ふふふ。この程度のこと課題とはいえんわ。」
次に。
「つ、次?」
はい。次の課題です。バスは動きます。
「当たり前だ。」
動いている中で正義の味方へ位置を伝えるのが困難です。
バスジャックをする。そこまで伝えますがいざ実行した後、子どもを乗せてそのまま移動されると思います。その移動しているバスの位置をどうやって正義の味方に伝えましょう?
「その場から動かなければよいだろう!」
その場合、駆けつけるのは正義の味方ではなく、先月の銀行強盗同様、SATです。
恐らくSATに狙撃されるでしょう。
また、襲う幼稚園バスの選定も難航しそうです。
共働きが多い中、幼稚園に通える家庭は比較的裕福だと思います。
当然、この地域なら本家、黒の組織のご子息や各組織の代表の親族がいないか調査する必要も出てきます。
恐らく、その辺りもあって幼稚園バスジャックが減った要因かと思われますが、ご提案の通り、子ども価値が上がって居る点から課題を乗り越え実行する価値はあるでしょう。
ある程度、コスト。
コストもかけて実行してもよいのではないでしょうか?
「いや、この案は却下とし、最初の公園での作戦とする。よいな。」
ハハッ!ご英断かと。
あ、その案に補足ですが
最近、新聞を取る世帯が減っています。
ヒーローへの予告はチラシをやめてWeb…じゃなくてインターネットでウイルスを送ることによって行いたく。
ウイルスを送られた正義の味方は怒りで必ず駆けつけるでしょう。
決まった後から私は提案を上乗せします。
「おお。インターネットでウイルスが送れるのか。我々の組織もそこまできたか。よい。許可する。では取りかかるように。」
ハハッ!
やった!
あの反響率の悪いチラシ作らなくて済む!
がんばってデザインしてもボスの最終チェックでダサくなるからな。
意義を見出せない仕事でした。
フフフ。
見たか。これがデキる男のやり方よ。
若僧は見て学べ!
誰が言ったかも大事だがなんて言うのかも大事なのだ。
何を言ったかなんてクソ重要ではないのが現実よ。
「先輩…なんで公園なんですか!そんなことして世界征服できるんですか!だいたいおかしいですよ!世界征服するのにわざわざ正義の味方と戦うなんて!そんなことしなくても政府を乗っ取ったり、大勢で一度に攻めればいいじゃないですか!」
いいか!
これが組織風土だ!組織文化だ!
時代は変化するけど組織は簡単には変わらないんだよ!少しずつ、しかし潰れる前に変えるにはちょっとずつやってくしかないんだよ!
お前のやり方は高度すぎるんだよ!
ボスも含めてみんなアホなんだよ!
難しいこと言ってもわかんないんだよ!
組織の格を超えてるんだよ!
できる、できないじゃないんだ。
良い悪いでもない!
良さそうか分かりやすいかなんだよ!
それにな!
アホみたいなやり方で世界征服するからロマンなんだ!
こんなアホが真っ直ぐぶつかっていくところがロマンなんだ!
国会占拠とか怖いことゆーなや!
ガクッと肩を落とし
涙する後輩。
きっと彼は大きくなる。
いつか私を超えるだろう。
その時には老害と言われないようにしたいもんだ。
大人が真剣にふざけてるんだ!
少しくらい笑ってくれてもいいだろーが!