2017年のレギュレーション改定に合わせてモデルチェンジした2016年式ZX-10R。先代もSBKチャンピオンとして高い走行性能を誇っていましたが、今回更に磨きをかけています。
エンジン、足回り、電子制御、全て市販車最速レベルへ
航空力学も得意なカワサキはエアロダイナミクスに関しても修正を入れてきており、前モデルのZX-10Rよりもカウル形状は細かな変化を加えられています。チンスポイラーを思わせるノーズや切り込みの激しいサイドカウル、スクリーン脇のエアダクト等がそれですね。今回のZX-10Rは更に最高速を上げる為にCd値は下げられ、また適度な空気の抜け道を作ることでライダー周辺の乱流を抑えています。
998cc直列4気筒エンジンは200馬力/13000回転と非常に高出力で、ラムエア過給時には更に10馬力アップの210馬力まで上昇する様になっています。エアーボックスを25%拡大、ピストン、クランクシャフト、エキゾーストバルブ等も見直され、最大トルクも前モデルより上昇し、目一杯パワーを振り絞っている状態です。一方、ギア比はよりクロス気味に修正され、最高速度だけでなくコーナーからの脱出加速の良さを高めています。
アクセルはライド・バイ・ワイヤー方式で、ライダーが入力するアクセル開度はECUに一つのデータとして入力されます。これは電子制御のスロットルバルブや、後述のS-KTRC等のエレクトロニクスを含めた車体全体の総合的な判断に使用されます。ZX-10Rはハイテク装備の塊で、前後左右上下の加速度、ロール、ピッチ、ヨーの6つのセンサーで走行中のデータを計測しています。これらのデータは制御システムのS-KTRCへ知らされ、スライド時のパワー制御や、急加速時のウィリーの抑制を行います。またハードレーキング時のABSに介入するKIBSにも利用されており、エンジンの回転数やクラッチの繋がり具合等からリアタイヤの暴れやリフトを防ぎ、ABSが起動している際のキックバックも最小限に抑え、ブレーキフィールを向上しています。
2016年モデルのZX-10Rの足回りの特徴はSBKで使用されているSHOWAのBalanceFreeFrontForkが市販車として購入できることでしょう。Brembo最高級のアルミモノブロックキャリパーM50に負けない重厚感の有るフォークが付いています。
従来ダンパー内で受け渡しされていたオイルを、外側にオイルの通り道の有る2層構造とすることでスムーズな潤滑を行う仕組みです。フォークは当然走行中に常に伸び縮みしているパーツなわけですが、この伸びると縮むの切り替わりでもバランスフリーフォークは非常に高い応答性を見せてくれ、ライダーにクイックな旋回性能を感じさせます。
足元の赤く派手なサブタンクはダンパー内のオイルに圧力をかけていて、これがオイルのキャビテーション(泡立ち)を防いでくれます。サーキット走行で高い負荷が継続してかかっても一定の減衰力を保つ役割をして最後までへたれない足回りを演出します。タンクの真下にも減衰力の調整機構が設けられており、フォーク側とは別にライダーの好みに有ったセッティングを出すことが出来ます。ZX-10Rではフロント・リア共にこのバランスフリー構造のサスペンションを採用しています。更にリアではカワサキ特有のホリゾンタル・バックリンク方式で水平方向にショックが取り付けられており、SSに求められるマスの集中化に寄与しています。
ちなみにこの新しいZX-10Rの戦闘力はどうかというと、2016年シーズンは既にドゥカティ、ヤマハ、アプリリア等のライバルに対し無双状態です。