プラスワン・マーケティングの展開するFREETELが、新たなキャンペーンとして、299円の通信料を最大3年間0円にする施策を発表しました。ここには条件として「Music.jp」の契約が含まれており、同社が新たなビジネスモデルを模索している様子もうかがえます。

MVNOの「抱き合わせ」的商法に感じた懸念

すべての写真を見る

10 枚


最大3年間、データ通信の基本料が0円になるキャンペーンを発表

FREETELには、利用したデータ容量に応じて料金が変動する、「使った分だけ安心プラン」というものがあります。佐々木希さんのCMで連呼されている「ニクキュー」は、このプランの下限にかけたもの。データ通信専用プランの場合は、299円から2470円の間で料金が自動的に変わり、10GBで上限に達します。音声通話を利用する場合、基本使用料としてプラス700円かかります。

「ニクキュー」のCMでもおなじみの料金プラン

データ通信専用の場合、299円から2470円で変動する
この最低料金の299円が3年間0円になるというのが、FREETELの発表したキャンペーンになります。36カ月間での割引額は、合計で1万764円。これに加え、Music.jpが2カ月間無料になり、さらに同サービスで利用できるポイントが1944円分もらえます。さらに、映画を毎月5本まで無料で見ることができるなど、特典のオンパレードとなっています。

Music.jpのポイントが1944円分もらえる

2カ月間の利用料も無料に

映画を5本まで見ることができる

一方で、3カ月目からは、music.jpの月額料金が400円発生します。3年間0円のキャンペーンは、新規契約者が「自動的に適用される」(代表取締役社長 増田薫氏)もの。単純に299円割り引くだけでなく、あくまでmusic.jpありきであることが分かります。そのままMusic.jpを継続していると、差し引きで101円料金がかかる計算。「マイページからボタンを押すだけで簡単に解約できるようにする」(同)と、ユーザーが不要だと思ったら解約することはできるようです。ただし、解約した場合は、299円の割引が2年になることが注でうたわれているため、注意が必要です。

キャンペーンの注にはMusic.jpを解約した場合は299円無料が2年になると記載


キャンペーンの狙いを語る増田社長

特典が充実しており、「Music.jpは魅力的なコンテンツが多い」(同)というだけにお得感があります。ユーザーがコンテンツやサービスの魅力を分かった上で使い続けるのであれば、割引も受けられる上に、Music.jp側の特典も充実しているため、通常よりお得になることはメリットと言えるでしょう。

充実したコンテンツが魅力だという

解約の手間が増えるだけの場合も?

一方で、少々気になることもあります。見方を変えれば、これはMusic.jpへの加入とバーターで、299円の割引をしていることにもなります。こうしたコンテンツを使いたいと思う人にはお得かもしれませんが、スマートフォンは、エンタメコンテンツを楽しむだけのものではありませんし、エンタメコンテンツはMusic.jpだけでもありません。結果として、サービスに魅力を感じていない人にとっては、解約の手間が増えるだけになってしまいます。

このようなコンテンツやサービスへの加入を前提にした割引は、大手キャリアでは一般的。大手キャリアの場合、端末購入時に数百円程度割引いたり、サービス加入の有無で毎月の割引額が変わってきたりと、端末価格に紐づいているケースが多くなりますが、FREETELのキャンペーンも大枠はこれと同じです。400円のサービスに加入することで、3年間299円割り引く仕組みになっているからです。

端末購入時などに各種サービスをセットで契約させる手法は、「レ点商法」とも呼ばれ、批判も集めています。レ点商法とは、契約書のチェックボックスに、半ば自動的にチェックをつけていく様子から名づけられており、ある意味、抱き合わせに近い販売方式。厳しい言い方をすれば、割引で釣ったユーザーの解約忘れを狙ったものでもあります。

厳密に言えばこれとは形は違うとはいえ、MVNOが大手キャリアと同じ手法を使ってきたことには違和感を覚えました。特にFREETELのキャンペーンには、Music.jpを最初から利用しないという選択肢が用意されていません。つまり、Music.jpが不要なユーザーは、どうしても解約というひと手間が増えてしまうのです。コンテンツやサービスが"てんこ盛り"な大手キャリアが嫌で、シンプルに通信サービスだけを提供するMVNOを選んだ人からは、ネガティブに捉えられてしまう可能性もあるでしょう。

MVNOが通信とサービスをセットで提供することを、全否定しているわけではありません。サービス開始予定のLINE MOBILEのように、コンテンツやサービスを持つ会社がMVNOになる場合もあり、むしろそういった会社がある多様性こそが、MVNOの魅力でもあります。ただし、FREETELは、どちらかと言えば、ネットワークはネットワークとして提供してきたMVNO。そんなFREETELだからこそ、やはり選択肢は残してほしかったというのが、筆者の本音です。

たとえば、Music.jpの契約ありなら3年間、なしなら2年間というように、条件を分ければいいのではないでしょうか。大手キャリアで端末を買う場合も、割引が不要ならコンテンツやサービスを契約しない選択肢はあります(が、店舗によっては強制されることもあり、問題視されています)。

もっとも、プラスワン・マーケティングの増田氏は、「ユーザーの反応を見ながら、ダメなところはすぐに直していく」と語っており、このままの形で続くのかは、今後の反響次第といったところ。ユーザーからの反発が大きければ、キャンペーンの内容が変わるでしょうし、逆に好評なら、そのまま続く可能性もあります。この施策がユーザーからどのように受け止められるのかは、今後も注視していきたいと思います。
大手キャリア化するMVNO、FREETELの「抱き合わせ」的商法に感じた懸念:週刊モバイル通信 石野純也
広告

0 コメント

広告