今や英語は世界のリンガフランカです。しかし最近発表された文科省の「平成26年度英語力調査結果(高校3年生) の速報」を見ると、日本人の英語の出来なさが際立っています。6月16日発売の私の新著「国連でも通じる世界の非ネイティブ英語術」では、その理由を分析してみました。
「平成26年度英語力調査結果(高校3年生)の速報」は、全国の高校3年生約7万人(国公立約480校)を対象に、英語の4技能(聞く、話す、読む、書く)と学習状況を分析したものです。
この調査では、生徒の能力を世界標準となっているCEFR(Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1からB2までのレベルで測定し、結果を日本の英検と比較しています。
この結果の驚くべきことは、現役の学生である高校3年生ですら、あまりにも英語ができない人が多いということです。「読む」「聞く」で英検2級程度の力があるのは2%ちょっと、「書く」では0.7%、「話す」では1.7%です。
英検2級は少々勉強熱心な生徒であれば、中学2年生でも合格可能なレベルです。小学生から英語をやっているのであれば小学5〜6年生かそれ以下でも合格可能です。英語ネイティブの国からすると、6歳児が理解する程度の英語です。
高校生の英語力の低さにも驚かされますが、国際的な英語試験の結果も芳しくありません。アメリカのETSが実施する試験のTOEFLでは、日本はスピーキングではアジア31カ国中の最下位、リーディングとライティングは下から4番目で、日本よりもスコアが低いのはタジキスタンやラオスです。
TOEFLは留学生の英語力を測る試験として採用している教育機関が多く、英語圏に留学して学位を取得する場合は受験がほぼ必須です。そもそも受験する人は日本の中でもかなり英語ができる人々のはずですが、そういう母集団であってもここまで英語力が低いというのはちょっと驚きです。
文科省は10年後の目指すべき社会像を見据えて「革新的イノベーション創出プログラム(COISTREAM)」なる産学連携プロジェクトを2013年から実施しています。
その一環として大阪大学を中心に「脳マネジメントで人間の潜在能力を活性化させ、一人一人が最高に輝くハピネス社会の実現に向けて世界をリードするスーパー日本人」を育成するという取り組みが行われています。
「革新的イノベーション創出プログラム(COISTREAM)」
この英語版サイトの英語名からしてメタクソです。「スーパー日本人」が“SUPER NIPPON-JIN”と訳されている件を見る限り、文科省が目指すように、日本人の英語レベルを高校卒業時に英検準 2 級~ 2 級程度以上にするには、まず 「スーパー日本人」を育成したほうが早いかもしれません。
英語を学ぶメリットをイメージできない人が多い
どうして日本人はこんなに英語ができないのでしょうか? その理由のひとつに、そもそも英語を学ぶ人の多くが、英語を学ぶ具体的なメリットをイメージできない、というのがあります(日本人がまだ「スーパー日本人」になっていないのと関係があるかどうかは文科省に聞いてみたほうがよさそうです)。
前述の「平成26年度英語力調査結果(高校3年生)の速報」を見ると、「英語をどの程度身につけたいと思っていますか」という問いに対し、試験の結果が高い生徒ほど「英語を使って国際社会で活躍できるようになりたい」「大学で自分が専攻する学問を学べるようになりたい」と述べています。しかしこのように答えているのは、10%ほどです。
25%の人は「特に学校の授業以外での利用を考えていない」、19.6%は「大学入試に対応できる力をつけたい」と答えています。
つまり、日本の高校3年生の半分近くが、英語ができるようになることで得られるメリットを意識していない、もしくは、学業以外では英語は必要ではないと考えていることになります。
英語で選択の幅が広がる
英語を直接使うような仕事につかないとしても、例えば、将来に備えて投資をする場合に、英語でも情報を得ることができれば、投資の選択肢が増えます。
自営業になった場合、英語ができれば海外に販路を確保することや、海外からやってくるお客さんを対象に商売をすることだって可能になるでしょう。
さらに、どこかに勤めるとしても、英語ができることは付加価値になります。国内市場対象の仕事でも、例えば通信やIT、医療の世界だと英語ができれば先行事例や最新技術の情報を得ることだって可能になります。
英語の成績が上位の生徒は、国際社会で活躍したいとか、大学の研究に生かしたいと考えていることから、おそらくこういうメリットを理解しているのでしょうが、その他の生徒にはイメージがしづらいようです。
これは、英語を教える側や、家庭で、英語ができるとどういったメリットがあるか、ということを伝えきれていないからでしょう。
つまり、大人自体が英語ができればもっと銭を稼げるということを理解していないオタンチンだらけということになります。
6月16日発売「国連でも通じる世界の非ネイティブ英語術」
目次:
1章日本人よ、恐れることなかれ! 世界の英語はいい加減だ
・海外では間違いだらけの英語が当たり前
・ケース 1 英語が訛りすぎていて宿題の締切日がわからない
・ケース 2 英語がひどすぎてボスを激怒させた東アジア人研究者
・ケース 3 メールの返事は「DONE」だけ
・ケース 4 俺の英語が通じないのはあいつがバカだから
・ネイティブはめちゃくちゃな英語を気にしない
・英語圏は移民国が多いので、外国人英語が当たり前
・大航海時代から訛った英語に慣れているイギリス人
・EU 拡大で訛った英語への許容性がさらに高まるイギリス
2章なぜ日本人ばかりが「英語弱者」なのか?
・なぜか日本人だけ英語がひどい
・英語を学ぶメリットをイメージできない人が多い
・内需が大きいので英語が必要なかった
・生活がかかっていれば英語が身につく
・国がひっくり返る可能性が低い
・日本は植民地になったことがない
・翻訳が充実している
・英語教育がおかしかった
・海外の語学授業は超実用的で現実主義
3章英語よりも怖い、非ネイティブのツワモノたち
・海外で仕事するのに最も大事なのは英語力ではなかった
・ヨイショができれば仕事は 99% 終了
・海外のほうがヨイショは激しい
・非ネイティブのレジェンド:その 1 ヨイショが生きがいのイタリア人エンリコたん
・非ネイティブのレジェンド:その 2 気に入らない奴はボコるブラジル人ジョアンたん
・汚職国家出身者は手段を選ばない
・非ネイティブのレジェンド:その 3 コピペは当たり前のインド系アミータたん
・非ネイティブのレジェンド:その 4 ビジネスメールが叙情詩なギリシャ人シーザーたん
・非ネイティブのレジェンド:その 5 常に「俺が一番」なドイツ人ヨハンたん
・非ネイティブのレジェンド:その 6 すべて南米基準で考えるボリビア人エボたん 103
4章9割の人に必要な英語はハイレベルなものじゃない
・英語で仕事=エリートは大間違い
・世界の 90%は英語ネイティブではない
・英語がヘタクソでも世界で活躍する人々
・海外駐在員も英語がヘタ
・国連職員の英語もジャパニーズイングリッシュ ・「フツーのサラリーマン」に必要な英語とは?
5章伝わる英語をマスターする13のコツ
1.結論から述べよ
2.曖昧さを回避せよ
3.繰り返し確認する、質問する
4.ゆっくり話す
5.空耳アワー式で覚えよ
6.キーになる単語だけ覚えておけばよい
7.英文学は時間の無駄
8.発音よりもリズムが大事
9.参考にすべき日本人有名人の英語
10. 大事なのは相手への思いやり
11. 相手のプライバシーを尊重しよう
12. 英語圏はローコンテクスト文化に属する
13.「意見」を伝えよう
6章@May_Roma流 場面別「とりあえずこれだけは押さえたい」英会話集
・ポイントさえ押さえればワンランク上の英語使いになる
・挨拶
・自己紹介
・依頼する
・断る
・お礼
・謝罪
・英語のメール
・会議の英語
・プレゼンテーション
・頭が良さそうに見えるしゃべり方
・英語でのヨイショの仕方
こんなに違うアメリカとイギリスの英語