ソール・バス、ミルトン・グレイザーとポール・ランドは、20世紀ロゴデザイン史における聖なる三位一体のようなものです。この3人が携わった世界の名だたる企業のブランディングは、AT&TからIBMまで驚異的な数に上ります。
3人の中で最年長のランドが最大の影響力を持っていたのは、ほぼ間違いないでしょう。彼の作品は今日まで人々の感性に刺激を与え続けています。きっとあなたも、驚くような作品に出会えることでしょう。
バスとグレイザーと同様、ランドも世界大戦の最中にニューヨークでユダヤ系移民の子供として生まれました。芸術に傾倒し、3つの機関でデザインを学びましたが、そこから何かを得たとは思えず、彼自身、ずっと独学のデザイナーであると考えていました。
ほどなくして、無償でデザインした雑誌カバーが評価され、彼はロゴデザインの道へ進むことになりました。
崇拝していたバウハウスのハンガリー人アーティスト、モホイ=ナジ・ラースローに出会ってから、ランドの成長期が始まります。モホイ=ナジはランドに芸術批評を読んでいるかと尋ねました。ランドが「いいえ」と答えると、モホイ=ナジは「残念だ」と答えたといいます。その時からランドは、できる限り芸術批評や体系論を読むようになりました。
モホイ=ナジの創作理論に追いついた後、ランドは自らの作品について深く考え始めました。ロゴとは何か、ロゴでないものは何か、何がロゴをロゴたらしめるのか。この記事では、彼の偉大なアイデアの数々を4つの主な原則にまとめました。
1. 「ロゴは、それが象徴するもののクオリティから意味を引き出す。それ以上でもそれ以下でもない」
—
デザイナーはロゴについて語る時に、ロゴ自体にその意味を伝える役割があり、ロゴの成功、失敗はそのデザインに要因があると言うことがあります。
ランドは、ロゴにそのような重要性や責任を持たせることは一切ありませんでした。
「製品、サービス、ビジネスあるいは企業と関連づけた時に初めて、ロゴが本当の意味を帯びるのだ。企業が二級なら、ロゴも二級品に見られる。それを見る人々が適切に状況を整える前に、ロゴがただちに仕事をすることを期待するのは無謀である」
ロゴが重要ではないということではなく、ロゴは自由だ、と言っているのです。ロゴの仕事は標識であって、意味を発揮することではありません。これは2番目の原則にもつながります。
2. 「ロゴデザインの必須条件は、区別しやすいこと、記憶に残ること、明確なことだけだ」
—
言い換えれば、ロゴはどのような見た目でも構わないということです。代表する企業に関するものを直接的に描写する必要はありません。実際、そうしないほうが良いこともあります。
ランドはこう言っています。
「信じられないかもしれないが、ロゴの主題はほとんど重要ではない。内容の妥当性すら、大した役割を持たないこともある」
「妥当性の希求が望ましくないのではない。シンボルとシンボル化されたものの間に1対1の関係性を持たせることが多くの場合非常に難しく、ある条件においては反感を持たれる、と言っているのである。つまるところ、ロゴデザインの必須条件は、区別しやすいこと、記憶に残ること、明確なことだけだ」
3. プレゼンテーションがカギ
—
ランドはクライアントにデザインをプレゼンテーションすることに非常に重きを置いていました。デザインそれぞれについて、デザイナーはクライアントのためにあつらえた唯一の物語を語らねばなりません。
「新しいアイデアをどのように提示するかというのは、多分、デザイナーにとって最も難しいタスクのひとつだ。デザイナーの仕事のすべてにある種のプレゼンテーションが含まれる。あるデザインを、それに関心を持つ聞き手(クライアント、読者、傍聴者)にどのように説明するか(プレゼンテーションするか)だけでなく、マーケットにおいてそのデザインがいかに自身を説明し得るか…」
4. 「シンプルさはゴールではない。それは良いアイデアと適切な目算の副産物である」
—
ロゴとは何か、ロゴにできないことは何かを本当に理解しているなら、あなたのデザインは誰もが賞讃するシンプルさを備えることになるでしょう。
次のロゴは、ランドがこの点において成功している良い例です。