■オチには一切触れないよ
『貞子vs伽椰子』の試写会に潜入することに成功しました。司会のお姉さんが「本日は伽椰子……いやっ貞子vs伽椰子の試写会に」って言い直していたので何か揺るぎない力関係があるんだと思います。三井住友とか三菱UFJみたいな。いや単に言い間違っただけでしょうけど。
以前の『ヴィジット』の時以上の、オチをネットとかで言ったら許さんという箝口令が敷かれていました。なので一言半句オチには触れないことにします。というか確かにこの映画、あらすじとかオチとかバレたら見る価値激減してしまうので仕方ないかも知れない。
いやこんなの言うの失礼かも知れませんけど、正直『貞子vs伽椰子』と聞いて「貞子vs伽椰子?」ってまんま聞き返しちゃうじゃないですか、そんなの。クエスチョンマークだけ付けてオウム返しっていう小馬鹿にしたリアクション。何でしたら読点も付けますけど。「さ、貞子、vs……伽、椰、子? どうしたの? バットマンとかのアレの真似?」ぐらいに。多分その小馬鹿にした姿勢で見に行くのが正解。そう思われるのわかっててやってる。きっと。そんな心算じゃなかったら申し訳ありません。
■ビビらせて詰めの一手をぶち込むファイトスタイル
いやだって実際、貞子と伽椰子戦わせるったって、どっちも対人類用の脅威しか持ち得ないのでどうすんだよって。いきなり携帯鳴ったり骨カタカタ言わせながら這ってきたりしても人類はビビり死にますが、相手はお互いビビらなさそうじゃないですか。
貞子も伽椰子も、基本はビビらせまくって詰めの一手をぶち込んでくるファイトスタイルじゃないですか。たとえて言うなら「俺は○○組の何々さん知ってんだぞ」ってハッタリかましてんのに相手も「○○組の何々さんなら俺も知ってる」みたいに対抗してきて、互いにハッタリ効かなくなってる喧嘩じゃないですかそんなの。どうするんでしょうね。
この「どうするんでしょうね」という気持ちを満たす過程がこの映画の価値だと思うので、こうなるんだよって教えてもらうと、見る気がグングン落ちてくる。もう鑑賞しながらクッて含み笑いし続けるのが正しい楽しみ方。 途中でいきなりガンガン前に出て来る安藤政信が変なキャラの立ち方してて最高でした。『ラプラスの魔』に出てきた草壁健一郎かな? って感じでした。角川だし……。というか古き良き角川映画のキャラでした。安藤政信がバケモンにはバケモンをぶつけるとか言い出してタイトル通りの展開になる所とかホント、クッ、ってなります。皆さんもクッてなってきてください。
■突然だけど『リング』の話するよ
あんま本筋にもオチにも触れたくないというか勘ぐることすらさせたくないので『リング』の話をしますが、『リング』、すごい好きでして。流行ったんですよ、『リング』の映画版。映画版が良すぎてそれから原作読んだくらいですから。 みんなで鑑賞会とかしてた。とにかく怖いって本気で思って見てましたからね、当時。
貞子の井戸に真田広之が「よし、俺がまず入る」って言うシーンで「コイツ、マジで言ってんの、無理だよ、無理、俺入れない、ハンパねえ」って声立てて言ってたくらいですからね、みんなで。Vシネマ版も当然見ましたよ。原作準拠なのはVシネマ版のほうなのに、原作からかけ離れてる映画版がとにかく圧倒的なホラーとしての完成度。
あの気色悪い、呪いのビデオの映像化センスたるやですよ。なので今回も、本当は初代『リング』版の映像を使ってほしかったのですが、それはありませんでしたので悲しいです。『呪怨』は一作目は見たんですが、うかうかしているうちにバンバンいろんなバージョンが出てきて追い切れなくなりました。
まあ、それは『リング』もそうなんですが。『貞子3D』とか見てないんですけどどうでしたか? 飛び出してた? 話逸れますけど、『呪怨』がバカ売れした時に某格闘マンガで唐突に『呪怨」って技が出てきて、相変わらずこの人、さっき見たことすぐマンガに描くなって思ってました。バカにしてませんよ? ヒットしてる証明ですよ? あの世代の漫画家さんは、さっき執筆中にテレビで流れてたみたいな時事ネタをためらいなくぶちこんでくる。最高。
■二大キャラクターを戦わせるって発想に至った安藤政信さん(霊媒師・経蔵役)
まあそんな二大キャラクターを戦わせるって発想に至った安藤政信さん(霊媒師・経蔵役)は相当、ホラー映画がお好きと思われます。『フレディVSジェイソン』じゃないですか。あれちょっとコミカルでしたけど、こっちは真顔でやってる。こういうの、「自分だったらどうやって切り抜けるかな」って考えるの一つの楽しみ方だと思うんですが。フレディとかジェイソンとか基本パワープレイで来るから何ともしようがない。
ボクシングで対抗しようとした奴がジェイソンに一蹴されたことからもわかる通り、もう圧倒的暴力で来る洋モノと違って、和モノはまずハッタリのターンとルールがあるから何とかできそうな気分になってくる。途中に出て来る大学教授が「自分なりに貞子の呪いに対抗してみせる。アイデアがある」って言い出すんですけど、あのキャラ、たぶん、そういう思いを代弁してくれてるというか。結局アイデアが何だったのかはわからなかったんですが。
安藤政信は「このままではガンバスターに勝てないからイデオン連れてこよう」ぐらいぶっ飛んだ提案をするわけですよ。作品ちゃうやんけって。それ子供が言うスタローンとヴァンダムどっちが強いみたいな発想やんけってなりますが、やっちゃったもんは仕方ない。意外と貞子も伽椰子も洋モノスプラッターばりのパワープレイで来たのが最高でした。もうハッタリカマしても仕方ないなってお互い悟った的な。
■「貞子vs伽椰子……?」ぐらいのテンションでおもしろ半分に見るべし
あと「お前が特に理由もなくうろちょろするせいで他人がたくさん死んだやんけ」ってキャラもきっちり出てきて、お約束をきちんと守っててよかったです。本当にイラつく行動しかしない人、こういう作品には絶対必要。理由は見てる人が「俺ならそんなことしないね」って優越感に浸れるから!
思い入れある人もない人もニヤニヤしたり本気でビビったりイラついたりしながら楽しめる作品でした。あと途中にシャワーシーンが入るんですけど、あそこサービスカットじゃなくて貞子の母ちゃんが髪梳かしている仕草のオマージュだったと思います。たぶん。
そういう細かい気配りと、唐突な安藤政信(霊媒師・経蔵役)による衝撃の展開。とにかく「貞子vs伽椰子?」ぐらいのテンションでおもしろ半分に見るとより度肝を抜かれます。どうせお前ら小馬鹿にして見に来るんだろ、その油断が命取りだ! という制作陣の意気込みを感じる。
あれだけするなと言われているにも関わらずネットなどでネタバレする無法者が必ず現れて、その気もないのに目にしてしまうという悲劇に巻き込まれないためにも、早めに見ておいたほうがいい作品ですので時間を作ってでも情報ゼロのまま見て来て欲しいと、心から願っております。
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「我々は世界の終末に備えています」そう主張する団体により建造されたアルカディアマンション。そこでは働かずとも生活が保障され、ただ娯楽を消費すればいいと言うが……創作のために体の一部を削ぎ落とした男の旅路「クロージング・タイム」、大気汚染下でバイクに乗りたい男と彼に片思いをする不器用な少女の物語「ラヴィン・ユー」など、鬼才が繊細な筆致で問いかける、,閉塞した天国と開放的な煉獄での終末のかたち。