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ニホンウナギ 食文化守る資源管理を

 絶滅が懸念されているニホンウナギの国際的な商取引の規制が、当面は見送られることになった。

     野生生物の国際取引を議論するワシントン条約締約国会議が今秋、南アフリカで3年ぶりに開かれる。開催に先立ち各国が提出した議案に、ニホンウナギの取引規制は含まれていなかったからだ。

     しかし、ニホンウナギが危機的状況にあることに変わりはない。

     欧州連合(EU)は、今秋の締約国会議でまずは、ニホンウナギを含むすべてのウナギがどれだけいるかや流通に関する調査をすることを提案している。調査の結果、3年後の次回会議で、ニホンウナギが規制対象となる可能性は大いにある。

     世界最大の消費国である日本は、伝統的な食文化を守るためにも、ニホンウナギの厳格な資源管理で世界の先頭に立つ責務がある。

     ニホンウナギは2014年6月、個体数の減少が激しいとして、国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定された。乱獲や生息域の環境悪化などが原因だ。

     市場に流通するニホンウナギの大半は、天然の稚魚を捕獲して育てたものだ。ワシントン条約の規制対象となれば、稚魚も製品も輸出入は難しくなり、価格も上がる。

     このため日本政府は、主な養殖地である中国、台湾、韓国と共同で、同年9月に資源管理の国際枠組みを作った。養殖池に入れる稚魚の量を制限することが柱だった。日本国内では、その量を管理するため、養殖業者を許可制にした。

     だが、枠組みは紳士協定で、各国・地域に対する法的拘束力はない。日本は拘束力を持つ条約化を働きかけているが、中国や台湾は消極的なようだ。枠組みに参加していない香港を経由し、稚魚が日本に大量輸入されている実態もある。

     日本政府は中台韓3カ国・地域との連携を強め、稚魚の捕獲量の削減や輸出入の透明性確保に努めるべきだ。枠組みを、東アジアの他の国・地域に広げる必要もある。

     ニホンウナギの危機回避には、生息環境の回復も重要だ。環境省は今年度中にも、ウナギの生息地保全に関する指針をまとめる予定だ。

     環境省の調査では、せきなど河川の構築物がニホンウナギの遡上(そじょう)を阻んでいることや、日中は水際の植生や大きな石の隙間(すきま)などに潜んでいることが分かった。指針には、こうした点を反映する。水域の生物多様性の回復にもつなげたい。

     ウナギを巡る問題は、自然の恵みをどうやって持続的に利用していくかという課題の典型例である。ウナギとの長い付き合いを続ける上で、避けては通れない道だ。

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