デジタルサイネージ業界の啓蒙、そしてデジタルサイネージ業界の認知度向上を目的として行われるデジタルサイネージアワード。毎年、その年の優秀なデジタルサイネージを決定する、サイネージ通には見逃せないイベントです。
昨年は、本メディアでも度々取材させていただいているアクアリングさんのプロジェクションマッピングがロケーション部門で見事入賞を果たしていましたが、今年はどんな素敵な作品が選ばれるのでしょうか。
という訳で今回は、2016年6月8日に幕張メッセで行われた、デジタルサイネージアワード2016授賞式のレポートをお送りします。
デジタルサイネージコンソーシアムが主催しているこちらのイベント。今年の審査員は以下の通りです。
審査委員長
中村 伊知哉(一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム)審査員
井上 真吾(ヤフー株式会社)
江口 靖二(デジタルメディアコンサルタント)
加藤 隆(パナソニックシステムネットワークス株式会社)
川田 宏之(フリージャーナリスト)
中井 達郎(三菱電機株式会社)
中野 雅之(株式会社電通)
西村 真里子(株式会社HEART CATCH)
濱 隆雄(株式会社博報堂DYメディアパートナーズ)
山本 孝(株式会社ジェイアール東日本企画)(敬称略 50音順)
今年は応募数43作品の中から、「技術・ハード部門」「クリエイティブ部門」「広告部門」「ロケーション部門」「インタラクティブ部門」という5部門に対する入賞作品、さらに「グランプリ」が選ばれました。
まず発表されたのは技術・ハード部門です。
今年は3作品が入賞したというこちらの部門。1作品目は
NTTアイティ株式会社、ソニーマーケティング株式会社によるディスプレイ搭載ブラウザを利用したHTML5対応Web-Basedサイネージでした。
名前の通り、HTML5に対応したWebと連携したサイネージであり、これを使えばリアルタイムで遠隔から、複数のサイネージの配信内容を同時に変えることができます。具体的には公共交通機関などでの利用に適しており、予期せぬ事故や天候の変化でダイヤに乱れが生じても、すぐにサイネージを通じて最新情報をユーザーに届けることができます。
すでにWebベースでコンテンツを配信しているデジタルサイネージは街中にいくつか登場していますが、2020年に向け、今後さらに活躍の場を広げていくのではないでしょうか。
2作品目は、株式会社安川電機と株式会社乃村工藝社によるロボティクス・サイネージ。8台のロボットのアームそれぞれにデジタルサイネージが付属されており、アームの動きでサイネージも動きます。
それだけでも斬新ですが、このサイネージのすごいところは、アームの動きにサイネージ内のコンテンツが連動しているということ。
また、8つのサイネージ内の各コンテンツの連携も可能なので、8面繋げて1つの映像とすることもできます。
ちなみに、こちらの作品は第49回日本サインデザイン大賞も受賞しているそうです。
3作品目は、またもや株式会社安川電機と株式会社乃村工藝社によるメカトロニクス・ウォール。128個のキューブを幅4m×高さ4.5mに並べたこちらの壁。
安川電機のモーターを用いて、各キューブが前後移動をしたり回転したりします。これに3D映像を投影すると、被写体自体が動く新たなプロジェクションマッピングに。
「構造自体はシンプルだけど、実際に128個ものキューブを並べ、形にしたその努力がすごい。」と審査員も認める、小さな努力がたくさんつまった作品です。
お次はインタラクティブ部門。こちらは2作品が入賞しました。
1つ目は楽天株式会社によるDYNAMITE BOAT RACE Inning。
宮城県にある楽天koboスタジアムに導入されたこちらのコンテンツは、4回裏終了後の40秒間だけスタジアム内の大型サイネージと自分のスマホを使って、ボートレーシングゲームができるというもの。
球団の各選手たちがボートレーシングをしているアニメーションがスタジオ内の大型画面に出てくるので、自分の好きな選手を選びスマホの応援ボタンを連打すると、その選手のボートのスピードがアップするのだとか。
スポンサーがボートレースであるため生まれたというこちらのコンテンツ。球場なのにボートレースという意外性と、待ち時間に観客が楽しめるサイネージとして、多くの反響を呼びました。
2つ目は日本テレビ放送網株式会社と株式会社電通、株式会社電通テック、株式会社イメージソース、株式会社ピーファイルによるデスノート パーソナライズサイネージ。
昨年の夏、ドラマ版デスノート放映にあたりPRのため渋谷駅に多数設置されました。本メディアでも昨年の7月にとりあげており、サイネージの前に立つと顔認識カメラで年齢や顔を分析され、ドラマのキャラクターがノートに何やら書き始めます。「自分の名前をデスノートに書かれているのでは…」と不安になっていると、最後にそのノートを見せてくれ、そこには自分の似顔絵が…。
憧れのキャラクターが自分の似顔絵を描いてくれる、ファンにはたまらないこのサイネージ。一方的に情報を流すのではなく、ファンとコミュニケーションをとれるサイネージとして多くの人に利用されました。
インタラクティブ部門に引き続き、2作品が入賞したクリエイティブブ部門。
1つ目は、技術・ハード部門でも入賞した株式会社安川電機と株式会社乃村工藝社によるメカトロニクス・ウォール。
そして2つ目は、イメージソース上海と北京電通広告有限公司、上海江崎格力高食品有限公司(グリコ)による”Happy Pocky Faces”。
なんと1300箱のポッキーの空き箱1つ1つにモーターをつけ、それらを並べてスクリーンにしてしまったこちらのサイネージ。
リアルタイムで連動するカメラ機能もついており、この空き箱スクリーンの前に立つと、ポッキーの箱が自分の顔に。スクリーンに向かって手をふると、空き箱でできた自分も手をふります。
イベント自体には1,5000人が参加し、ムービーは1200万PV、Weiboという中国のSNSでは5,000万回つぶやかれるという大反響。
ポッキーの空き箱というアナログなモノにデジタルな仕掛けを施すことで、多くの人の心をつかみました。
続く広告部門は、インタラクティブ部門を受賞した日本テレビ放送網株式会社と株式会社電通、株式会社電通テック、株式会社イメージソース、株式会社ピーファイルによるデスノート パーソナライズサイネージと先ほどクリエイティブ部門を受賞したイメージソース上海と北京電通広告有限公司、上海江崎格力高食品有限公司(グリコ)による”Happy Pocky Faces”のダブル受賞となりました。
ロケーション部門の1つ目は、インタラクティブ部門を受賞した楽天株式会社によるDYNAMITE BOAT RACE Inningがダブル受賞。
そして2つ目は、東日本旅客鉄道株式会社のE235系車内デジタルサイネージです。
「お客さま、社会とコミュニケーションする車両」をコンセプトに作られたこちらの車両。車内には路線図や各駅までの所要時間、天気予報などを配信するサイネージにプラスして連動型の3面サイネージなどが設置されており、キャンペーンにおける高いバズ効果が期待されています。
現在は山手線の1路線のみでしか運行していませんが、2017年春ごろから他の量産を開始し、2020年にはほぼ全ての車両にこのシステムを導入するのだとか。また、2020年に向け車内のサイネージの多言語化、2カ国語(日本語・英語)の音声放送による異常時情報の配信など、新たなシステムも加わる予定です。
これにより、電車の中吊り広告がデジタルサイネージへと移行するケースも増え、交通広告機関に大きな変化を及ぼすことが期待されています。
最後はみなさんお待ちかねのグランプリ。
デジタルサイネージアワード2016のグランプリは…………………
既にダブル受賞している………………
イメージソース上海と北京電通広告有限公司、 上海江崎格力高食品有限公司 (グリコ)による”Happy Pocky Faces”
となりました。
イベント当日の集客だけでなく、SNSでの拡散など、現代の様々なツールによって多くの人の目に触れることとなったこの作品。
制作は日本で行ったそうで、1300箱もの空き箱を船便で輸出するため、物理的な問題はもちろん、海上や中国での湿度によるモーターのサビの心配など、様々な課題があったのだとか。
しかしそれらを全て乗り越え、約1ヶ月に渡るイベントの中で1度も大きなトラブルがなく全ての箱が正常に機能したことから、日本のものづくり、日本の技術を改めて世界に知らしめる大きな一歩となりました。
今回受賞した作品の多くが見せるサイネージではなく魅せるサイネージとなっていました。
デジタルサイネージの市場拡大に伴い、もはやディスプレイを使って情報を流す広告は珍しくない世の中になっています。ただ情報を流すだけのデジタルサイネージがありふれた今、注目されるのは今まで見たことがないようなクリエイティブなカタチのデジタルサイネージ、または広告を自分事化するインタラクティブなデジタルサイネージ。
日本が誇る確かな技術に新たな時代の新たな発想力をプラスした価値あるデジタルサイネージが、2020年に向け今後ますます増えていくことでしょう。
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