「認知行動療法」プラスで8割以上改善
人前で話をしたり、人と関わったりすることに過度の不安や怖さを感じる対人恐怖症(社交不安症)について、抗うつ剤が効かない患者でも、医師と話をしながら自身の行動を考えていく「認知行動療法」を加えると8割以上が改善したとの研究結果を、宮崎大や千葉大の研究チームがまとめた。欧州の医学専門誌に論文が掲載された。
対人恐怖症の標準治療は抗うつ剤の服用だが、これで症状のよくならない患者が7割以上いる。宮崎大の吉永尚紀講師(精神神経科学)らは、投薬治療が効かない患者42人を4カ月間、投薬のみと、投薬と週1回の認知行動療法に取り組むグループに分けて、症状の変化を調べた。
その結果、症状が出た時の自らの動画を見ながら、患者が医師と一緒に原因や対処法を考える認知行動療法を受けたグループは、86%が改善し、半数近くは症状がほぼなくなった。投薬のみのグループの改善は10%にとどまった。
同療法は4月に保険適用され、治療が受けやすくなった。ただし、適切な対応ができる専門家は全国に100人程度しかいない。吉永講師は「より多くの人が受けられるように専門家を育てることが課題」と指摘する。【野田武】