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 江戸末期、庄内藩の役人が「竜のすむ島」の物語を書き残した。そこには大きな洞窟があり、岩肌は「珠(たま)のごとく金のごとくうろこの形をしており、あたかも金竜を踏んだかと疑うほどだ」と。その島は山形県酒田市の沖、飛島の近くにある離れ小島だという。5月下旬、船に乗って島を目指した。

 「金竜……」のくだりは飛島へ島役人として赴任した佐藤梅宇が幕末にまとめた「飛島図画」の「尾神参詣(おがみさんけい)の図」の場面で出てくる。「尾神」に参詣するのは閑居和尚という禅僧で、3度試みてやっと上陸したという。

 その「尾神」が竜の島であり、飛島の西約1キロにある御積島(おしゃくじま)のことだ、と教えてくれたのは酒田市在住の民俗学研究者、岸本誠司さん(44)だ。飛島で漁村文化を研究し、竜の島の洞窟に入ったことがある岸本さんのつてで、飛島から漁船を出してもらった。