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存在増すゲーム「受託開発」企業、トーセ、エクストリーム、マイネットらに吹く追い風

ビジネス+IT 6月6日(月)8時30分配信

 ソフトメーカーに代わってゲームソフトを企画・開発する受託開発の企業には、「影武者」に徹する企業もあれば、開発元として名前がオープンになっている企業、格闘技のような特定分野に特化した企業、自社ブランドのゲームを出している企業など、その個性はさまざまある。共通しているのは、ソフトメーカーの「パートナー」として、その存在の重要性がますます増していること。国内のゲーム市場規模の拡大にブレーキがかかり、一時は揃って好調だった業界大手各社の業績が強弱まちまちになる中で、受託開発企業の業績は比較的安定している。

【その他の詳細な図や写真】ゲーム受託開発主要企業の売上高の推移

ゲーム受託開発企業は「下請け」ではなく「パートナー」

 産業界では今年になって、「受託生産」先が表舞台に躍り出る事例が目立っている。

 4月にシャープを正式に買収した再建スポンサー、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は、アップルの「iPhone」やソニー、任天堂のゲーム機、液晶テレビなどを受託生産し、EMS(Electronics Manufacturing Service)の世界最大手企業である。

 自動車産業には昔から旧・関東自動車工業(トヨタ系)、八千代工業(ホンダ系)など完成車の組立を受託する大手系列の「車体メーカー」があるが、4月に燃費データねつ造問題が発覚した三菱自動車が、再建スポンサーになった日産に軽自動車をOEM(Original Equipment Manufacturer/相手先ブランド製造)供給していたことは、だれもが知るところとなっている。

 どんな業界でも、それこそラーメンから航空機まで、開発・生産の受託は、時にはおおっぴらに、時には秘密裡に、日常茶飯事で行われている。

 ゲーム業界も例外ではない。ハードのゲーム機本体も、スマホも、その多くはOEMでつくられているが、ソフトも1983年7月に発売された任天堂の初代「ファミコン」の時代から、受託開発する企業は存在した。

 最初はソフトメーカーが企画し、シナリオを書いたその仕様に沿って制作する「下請け」だったが、だんだんキャラクターデザインやシナリオ立てにも関与するようになり、今では新しいゲームの企画に白紙の段階から関わるケースや、ソフトメーカーが「数字が出せるものをよろしく」と受託先に「丸投げ」するようなケースもあるという。

 開発受託企業は表には出ないので「黒子」にたとえられることが多いが、そこまでいけば家電のOEM生産と変わらず、「影武者」と言ったほうが正確だろう。黒澤明監督の映画『影武者』では、正体がばれた影武者の男は甲府の武田信玄の居館から追い出されてしまうが、ゲームソフトの世界では「影武者」ともなると相当な実力派。もし、むげに追い出したりしたらソフトメーカーは存続が危ぶまれるほどだ。相見積もりを出させてより安いほうに取り替え可能な「下請け」ではないからだ。

 それは、実績があり、優れた才能が集まった放送制作会社を抱えたテレビ局が、番組で高い視聴率を取れるのに似ている。この関係は「パートナー」と呼ぶのが適当だろう。

 ゲームの受託開発も、業界の発展とともに成長した大手企業がいくつかあり、技術力、企画力を蓄え、コンセプトの発想力、ゲーム制作のセンス、プロデュース能力、プログラミング技術それぞれで優れた才能の持ち主を抱え、栄枯盛衰が激しいこの業界をしたたかに生き抜いてきた。

 しかも、最近では続々と株式上場を果たし、その名を高めている。もはや「名もなき手だれのアルチザン(職人)」ではない。ゲーム業界の名だたる大手も、そのゲームづくりの総合的な実力に一目置き、リスペクトする存在になっている。

 そんな企業があるから、ゲーム開発を受託企業に「丸投げ」して、管理やマーケティングに専念するようなソフトメーカーも新規参入できる。その分、この業界に外部の資本も進出しやすくなる。

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最終更新:6月6日(月)8時30分

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